【やぁムーミン、知っているかい】~ムーミン屋敷・リビングにて~
ムミン「ねぇ、パパ」
パパ「んどうしたんだい、ムーミン」(新聞を読みながらコーヒーを啜る)
ムミン「赤ちゃんって、どうやってつくるの」
パパ「ブフォッ···」
ママ「あらあら、どうしたんですかパパ新聞がコーヒーで濡れてしまっているけど···」(洗い物が終わり、リビングへ登場)
ムミン「聞いてよ、ママぼくが”赤ちゃんってどうやってつくるの”って聞いたら、パパが突然コーヒーを吹き出したんだ」
ママ「あらまぁ···」
パパ「『あらまぁ』じゃないよ、ママ···。ところでムーミン、どうして急にそういった質問をしてきたのかな···」
ムミン「さっき、スナフキンと話をしてたんだけどね。”ぼく達って、どうやってパパとママの子どもになったんだろう”って」
ママ「それで、スナフキンは何て言っていたの」
ムミン「『コウノトリが、愛し合っている夫婦の所に赤ちゃんを大切に運んできてくれるんだよ』って言ってた」
パパ「(素晴らしい模範解答だな、スナフキン···)」
ムミン「でも、近くでそれを聞いていたミイがこう言ったんだ。『合っているようで、違うわね。ムーミン、あんたにもいずれ、わかる日が来るわ』って。それから、スナフキンは目をそらして話題を変えちゃったんだ」
パパ&ママ「「······」」
ムミン「パパ、ママ。スナフキンは、ぼくに嘘をついたのそれとも、ミイが嘘をついているの」
ママ「(パパ、どうしましょう···)」(ヒソヒソ)
パパ「(うーむ···。教えるには、ムーミンにはまだ少し早い気もするし···)」(ヒソヒソ)
ヨク「はっはっはっ話はうちの息子から聞いたよ、そこの迷える少年」(バァンッと勢いよく玄関のドアを開けてリビングに登場)
ムミン「あ、ヨクサルさんだこんにちは」
ヨク「こんにちは、ムーミン」
ママ「あらあら、ヨクサルさん。コーヒーと紅茶、どちらがいいですか」
ヨク「ありがとう、ムーミンママ。紅茶を頂いてもいいかな」
ママ「ええ。今お出ししますね」(台所へ向かう)
パパ「あぁ···、厄介なのが来てしまった···」
ヨク「人を厄介者扱いするとは、失礼だな君は」(窓際のソファーに座る)
スナ「──ムーミンパパ」(ススス···と静かに近づく)
パパ「やぁ、スナフキン。ちょうどムーミンから、コウノトリの件についてママと一緒に聞いてたところさ···」
スナ「···たまたまヨクサルもムーミン谷に来ていたので、ああいう話題を友達に聞かれたらどうすればいいか、アドバイスしてもらおうと思って話したんです。そうしたら、『面白そうじゃないか。僕が直接、話をしに行こう』って言い出したので、心配になってぼくもついてきたんです···」
パパ「そうか···。スナフキンは何も悪くないが、あいつが来るのは想定外だった···。ヨクサルがムーミンに何か変なことを吹き込みそうで、私は既に冷や汗が止まらないよ···」
スナ「上手いこと言ってムーミンを納得させてくれるかもしれませんし、最初だけ様子を見ましょうか」
ヨク「──さて、ムーミン。君は、赤ちゃんがどうやってつくられるのかを知りたいんだって」
ムミン「はい、そうです」
ヨク「うーん。実演して見せるのが、一番手っ取り早いんだけど···」
スナ「そんなのダメに決まっているでしょう」
ムミン「実演···」
パパ「ムーミン。気にするんじゃないぞ」
ムミン「う、うん···」
スナ「次、怪しいこと言ったらここからぼくが強制退去させますから」
ヨク「おー怖い怖い···」
ママ「お紅茶、淹れてきましたからどうぞ」
ヨク「あぁ、どうもありがとう。···ムーミン。君は、ムーミンパパとムーミンママが愛し合って産まれた子だ。それはわかるね」
ムミン「はい。でも、”愛し合う”ってハグや頬っぺにキスをするだけじゃ、赤ちゃんは出来ませんよねぼく、フローレンのことが大好きだから時々そういう愛情表現はするんですけど···」
パパ&スナ「「(ハラハラドキドキ···)」」
ヨク「そうだねぇ。確かに、愛情表現にもいろいろある。だけどね、ムーミン。男女の間に赤ちゃんをつくるには、まずお互いに心と体の成長が必要なのさ」
ムミン「心と体の成長···」
ヨク「そう。君やガールフレンドのフローレンはまだ子どもで、心も体もお互いに成長過程にあるんだ」
ムミン「じゃあ、ぼくがこの先パパのような立派な大人の男になれたら···。フローレンと一緒に、赤ちゃんをつくれるようになりますか」
スナ「(ムーミン、大胆だな···)」
ヨク「あぁ。君達が僕らのように大人になった時、それに必要な知識もついているだろうし、自ずとつくれるようになるさ。だから、今はゆっくり大人への道を歩んで行けばいいんだよ」
ムミン「はい···ヨクサルさん、教えてくれてありがとうございます」
ヨク「ははっ、いいんだよ。うちの息子といつも仲良くしてくれているお礼みたいなものだからね」
パパ「(あのヨクサルが、本当に上手いこと言ってムーミンを納得させてくれたぞ···)」(ヒソヒソ)
スナ「(正直、下品なことを言い出したらどうしようかと思いましたけど、真面目に話をしていましたね···)」(ヒソヒソ)
ヨク「(普通に聞こえているんだよなぁ、あそこの二人。僕の風評って、一体どうなっているんだ···)」(地獄耳)
ムミン「ヨクサルさんまたわからないことがあったら、相談しに言ってもいいですか」
ヨク「んあぁ、いいよ。僕に答えられることであればね」
ママ「(ふふっ···。ムーミン、ヨクサルさんとも仲良くなれたようで良かったわ···)」
【完】