風と水が出遇うところあとがきお疲れ様です!
拙作お読みいただきありがとうございました!本の演出上長ったらしいあとがきを書くスペースがなかったのでこの場でつらつら書かせていただきます。
※ご自分の本の解釈のまま心に閉まっておきたいという方は読まないことをおすすめします。作者がどんなことを考えて作ったのか興味がありましたらどうぞ。
そもそもこの本ですが、私の初めての同人誌になる予定でした。2023のジュンブラ用に2022の冬頃から構想を始め、描き始めていたものです。その為絵柄がバラバラですがご容赦を。
それまで短編ギャグ漫画やイラストを主に描き、BLもエロもろくに描いたことがない人間でしたから真面目に色々調べました。
原作を一から読み直し、実弥と義勇のセリフを全てワードに書き起こし、この二人がどんな言葉を発するか…など研究してました(文系研究論文の癖)
実際にこの二人の出身地に赴き、歴史を調べ、漫画の舞台になった高円寺にも度々通い、背景用の資料集めをしたり、移住先の家の間取りを決めるのに神奈川の海辺の物件を探しまくったりなどやたら時間がかかりましたが、それもこの本を作る上で楽しかったことたちの一つです。高円寺の阿波踊りのシーンは最後まで入れるか迷いましたが、コロナ後久々の高円寺阿波踊り祭に赴きこの場にさねぎゆいてくれー!と思ったためねじ込みました。お近くの方は是非今年行ってみてくださいね。
タイトルに関して、普通『であう』という言葉にあてる漢字としては出会う、出逢うなどが一般的ですが、今回は出遇うという漢字を選びました。
ググっていただくと色々出てくると思いますが仏教の言葉で『出あうことがたまたまであり、あい難いものに偶然にあえた』ことという意味らしいです。最終的にこの二人が再会したことは運命であったことが描かれておりますが、あの日あの場所で偶然出遇えなければまた結びつくことがなかったあい難いものです。
この漫画では義勇の心を大きな海とし、その水面を揺らす実弥という風の存在との関係性をテーマとしておりました。義勇の目が度々アップになっていたのも心の窓である目にうつる水面の揺れを描くためです。風が起きなければ水面に水模様ができることはありません。偶発的な風という現象が水を揺れ動かす。真っ暗で真っ平らな水面に風を吹かせ義勇の心を動かし彼に人を愛する幸せを思い知らせた存在 is 不死川実弥っちゅうことですわ。
普段脳筋体育教師、水柱として描かれる冨岡義勇さんを文系男子にした理由は色々あります。単に眼鏡かけて本を読み込むイケメンが描きたかったのもありますが、冨岡さんの言葉足らずと言われるところを少し膨らませたかったのもあります。原作でも幼少期鬼の話をして親戚に病院送りにされそうになって逃げ出したとありましたが、そのショックは彼にとって大きなものだったろうなと。言葉にしても信じてもらえない失望感、言葉が運命を変えてしまうきっかけにもなる。言葉を使うことに恐怖や苦手意識を抱くキッカケになりそうだと。そんな言葉が本の世界で素敵な使われ方をされているのをみたら彼は興味を抱くのではないかなと。
原作での義勇さんの台詞及び脳内の言葉量ですが、最初炭治郎と出会ったシーンのあの1話の中で作品中の三分の一に及びます。そこから最終話までの全ての台詞・脳内の言葉を寄せ集めても三分の二程です。あの1話の中で盛りだくさんの思考をめぐらせている。彼は喋るのは嫌いだと言いますが、恐らく頭の中では色々と考えるタイプなのだと思います。脳内では実弥よりもたくさんの語彙を使って物事を考えてるんじゃないかな。実弥はよりシンプルで直感的なところがありそうなので。そんな義勇さんが現パロで物書きを目指すのもありえそうだなってことで文系男子になりました。
作品の中では大学生から社会人になって暫くの間の二人を描きました。最初はお互いに言葉で気持ちを伝え合うことなく、セックスにおいても欲望をぶつけるような形の関係でした。そこには確かにお互いを好き合う気持ちもあったかと思いますが、やはり言葉無くしてはすれ違いも起こるわけで。実弥も大事な存在こそ自分が思う幸せの形にはめたいと思ってしまいそうなので、自分の気持ちだけで義勇との関係を続けていくという考えは持たなそうだなと。冨岡には家庭を持ち、妻子供と幸せに暮らしてほしいと。
実弥が義勇に想いを伝えに行ったのも玉砕覚悟だったのではないかと思います。宇髄さんの後押しもありますが。そもそも自分の生活自体がいつの間にか義勇で溢れていますから。義勇が本を読んでいたベンチ、二人で大根持ちながら帰った商店街、二人が好きだった居酒屋、そして義勇と住もうと思っていた新居。義勇がイエスと言わなくてもぶつかりに行く柔軟さはこの軸の実弥なら持ってるかもなと。義勇がイエスと言わなかったら一生一人で生きていく覚悟がありそうな実弥だなと。
海辺に移住させたのは、この二人の海辺のスローライフを描きたかったのもあります。ここで気持ちを通わせ、お互いに歩み寄り、二人なりの家族の形になったら素敵だなと。はい、さねぎゆ結婚して!の具現化です。
最後まで義勇は実弥に好きだとは言いませんでしたが、その気持ちが溢れているシーンはいくつかあるかと思います。中でも最後の海辺でのセックス前の『月が綺麗だ』は文学少年の『愛してる』であると私は思ってます(勝手にな。)恐らく実弥もそれを感じ取っています。
この本が出るまでに2冊別の同人誌を作りましたが、単純に今回のこの本を描きあげる画力がなく2回スキップして自分の得意分野であるギャグ、ほのぼのに逃げただけです。真面目な内容のものを描く技量もなく、漫画の描き方もよく分かっていない絵描き初心者にとっては長く辛い原稿期間でした。何度も描くのを辞めようかと思いましたが、以前にさねぎゆのウェブイベで本になるのを楽しみにしてると書き込みをくれた方々や、連載中にもリプ等くださった方々のおかげで投げ出さずに形に出来ました。これを読んでらっしゃるかは分かりませんが、本当に感謝しております。ありがとうございました。
次回本を出す予定は未定ですが、またきっと何らかの理由で滾って作るんじゃないかな。底抜けのギャグ本作りたいっすわ。他2冊はゴロゴロしながら妄想して好き勝手描いたものでしたので、あんな感じのスタンスで描きたいですね。
だいぶ長くなりましたが、ここまで読んだくださった心優しき方、ありがとうございます。
またXでもなんか描き散らかすかと思います。引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。
さねぎゆに幸あることを願ってー
ほぶ