ふたりの秘密と世界の損失「皆さん、『たおる』と飲み物です!」
れっすん合間の小休憩にて、篭手切がてきぱきと江の者たちの汗を拭ったり水分補給を促していく。松井は豊前の隣に座って、篭手切のその動きに感心しながらその光景を眺めていた。
そのうちに二振の元にも篭手切が来て、タオルと飲み物を渡していく。
「こちら、りいだあと松井さんの分です」
豊前と松井は篭手切に礼を言いつつ、タオルと麦茶の入った紙コップを受け取った。ふと、篭手切の目が松井の白い首筋に止まる。
「松井さん……その首の、どうなさったんですか?」
心配そうに松井の顔を覗き込んでくる篭手切。篭手切が指差した箇所には、絆創膏が貼られていた。松井は豊前と軽く目配せをして、それから篭手切の顔を見た。
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