「お前がゲテモノ食ったっつー虎杖?」
突然目の前に現れたのは、白髪の大きな男。目元は真っ黒な丸いサングラスに遮られ、その奥は何も見えない。
ポケットに両手を突っ込んだまま、上から下と品定めするように見下ろされ、その態度と言い方に、初対面ながらいい気はしなかった。
「だとしても何?」
見えない瞳を一瞥して言った瞬間、突然のゼロ距離に衝撃を受ける。まだ一度だって体験した事ない唇への感触。急激な動きにも関わらず、ぶつかった感触は優しく柔らかい。
「は?」
ただただ意味が分からず呆けて見上げれば、さっきよりほんのり口角を上げて俺を見下ろす男。何も言わず、再び顔を近づけてきたもんだから、俺は慌てて両腕を伸ばし遮った。
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