ある審神者の話 仲間たちの空気が変わるのがわかった。
審神者専用コミュニティー・sanitter。そこで交わされる会話は日々の任務から近侍自慢まで幅広い。守秘義務の多い審神者達の情報交換の場もとい憩いの場である。その晩も皆、思い思いに過ごしていた……時の政府所属・こんのすけから火急の知らせが入るまでは。
最速で届けようとしたのだろう、珍しく粗い画像が表示されている。駆ける。この小さな携帯用端末では解読が出来ない。メイン機器が要る。
―――あれは何者だ?
何度か曲がりきれずに廊下の柱に肩をぶつけたが気にしない。そのまま本丸の中枢、執務室に飛び込む。あがった息を整え、近侍と視線を交わす。近侍にも緊張は見えるが混乱はない。頼もしいかぎりだ。通信暗号は解読がされ、メインモニターには、今度は鮮明に狐面の人物が映し出されていた。