春節を間近に控えた中華街。並び立つ龍灯は人々の期待のように内側から輝き、観光名所の大橋は今年も新たに塗り直された鮮やかな赤い欄干に花火をうつしながら来訪客を出迎え入れていた。絶え間無く鳴る爆竹は厄だけでなく冬の寒さをも弾き飛ばす勢いだ。
賑わいは街の端、紅い敷物を広げた一角でくじ占いを営んでいるイライの元まで届いていた。龍を象ったフロート車がイライの前を通りすぎてゆく。腹に響くハリのある太鼓の音。華やかな衣を纏って歓声をあげる人々。万事順調、吉祥如意!皆が新しい年もよいものであれと祈り祝っている。ふちに金糸で瑞雲をあしらった真新しい赤いローブ姿のイライも同じ気持ちであった。
イライがこの街で春節を迎えるのは数度目である。だが龍が笑顔の人々と駆ける様は素晴らしく、何度でもイライの目を楽しませ何度でも奪っていった。感嘆の息をつく。
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