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    燈屋さん(飛段×角都のみ)

    @zakuhibiHK

    NRT:飛角の邪ならくがき🔞🔞🔞
    脈絡などない。極現パに限りペイン×角都表現有。
    作業進捗もこちら。
    Xで無口な分、メモがてらちょっと多めにごちゃごちゃ語る。
    ※文の誤字脱字等は気付いたら修正しています。

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    過去SS。

    日常のちょっとしたことで角都の機嫌を計るひったんの話。

    ##文字

    ◆ページ数◆――――――




    倒壊した寺へと続く石段の下で角都は本を見つめていた。
    飛段は遙か上で祈りを捧げている。
    傍らに転がっている賞金首の躯は僧侶には見えない。
    こちら側のビンゴブックに載っている連中は世間一般では悪ではないので、
    逃げ隠れするなどという事は滅多に無く探し出すのは容易い。
    それでも、目立たない方が都合の良い職業も多く、
    こういった俗世から離れた場所で暮らし、必要な時だけ任務に出る者も少なくない。

    飛段がいちいち異教だ改宗だと騒ぐので
    寺だの神社だのという場所に隠れられると鬱陶しい。
    しかし、俗世から離れているというのは好都合。
    一撃で寺は瓦礫の山と化したが誰かがやってくる気配はない。
    飛段が邪魔ばかりして読み終えていない本を今のうちに読んでしまおう。

    「……」

    さわさわと風が木々を揺らしている。
    奇妙な静けさが落ち着かない。

    「ち、」

    飛段の騒がしさが当たり前になってきている事が腹立たしい。
    改めて活字を見る。
    すると間もなくして、乱暴に階段を駆け下りてくる男。
    十段上、いや六段上か。
    背を向けながらも、飛び込んでこようしているのに気づいたが、無視をした。

    「かぁ、くぅ、ずぅ!」

    神経を逆なでする甘ったれた声で名を呼びながら、全力で飛び込んでくる。
    ドンッと背中から全身に響く振動。
    面が鳩尾にでも入ったのか、飛段は耳元で呻き声をあげた。
    (考えなしに飛び込むからだ、馬鹿め)
    心の中で罵り、黙ってページをめくる。
    頬をくっつけるようにして後ろから本を覗き込む飛段。

    「なんだよ、また字ばっかのかよ」
    「邪魔をするな」

    じっと文章を目で追う。

    「なー、ソレ換金しねぇの?」

    当たり前に転がしてある躯を指さす。
    それには答えない。
    黙って読み進め、次のページへ。
    (一回目…)
    飛段は心の中で唱える。
    しばし沈黙したがじきに耐えられなくなり口を開く。

    「そいつ、予定外の賞金首だろォ?換金したら今日は宿に泊まろうぜ」

    なーなーと耳元で喚きながら足をジタバタさせるのに合わせて揺らされる体。
    角都は眉間に皺を寄せる。
    暫くそうしていると、またページは捲られた。
    (二回目…)
    先ほどと同じように数えると、ふぅとため息で角都の肩が下がる。
    しおりをそっと挟み、パタンと片手で閉じられるのと同時に、反対側の手が撫でるように飛段の髪を掴んだ。

    「鬱陶しい」

    低く言い切り、髪を引っ張って天高く放り投げる。

    「んなっ…!てめっ!!何本か毛ぇ抜けたぞ!!」

    飛んでいく体を見上げ、立ち上がった角都は躯を拾った。

    「さて、行くか」




    「先輩、何か飛んできますよ」
    「あ?」

    C2の翼からひょこっと顔を出したのはトビである。
    言われて下を見るがデイダラの位置から、小さく見えるのは賞金首を担いだ角都だけ。
    敵どころか動物も見えない。

    「あ、真下に」

    瞬間、ドンッとC2の胴体に何かがぶつかった。
    振動でひっくり返りそうになるのを即座に立て直す。
    一体何事かとその場から離れると、飛段が頭から地面に向かって落ちていった。

    「…なんだ、飛段じゃねぇか」
    「大丈夫っすかね。下りてみましょうよ」
    「……アレに構うと面倒だぞ。うん」

    言いながらも、脳天を地面にぶつけて動かなくなったので一応下に向かう。
    角都はと言えば分かっているだろうに無視して歩き出した。

    「あの人、相棒がこんなになっても放置なんすね」
    「ていうか、アイツがやったんだろ。うん…」

    倒れている飛段を覗き込んだ。
    隣でトビが落ちていた木の枝でその体を突いている。
    (何やってぶっとばされたんだかな)
    これで死なないのだから、不死身の体も良し悪しだなと思った。
    少し眺めているとピクリと指先が動く。
    トビが大げさに驚いたリアクションをしてソレから離れた。

    「……」

    パカッと開かれる目。
    薄い赤紫の球が空を見、森を見、デイダラを捉える。
    その目をぱちくりさせた後、突然に笑いだした。

    「くひっ…きひひっ…」
    「なっ…う、打ちどころ悪かったんですかねっ?」
    「さぁな」

    デイダラは腕を掴んでくるトビに首を捻る。

    「二ページだ!」

    ピースを天に突き出す飛段。

    「は?」
    「聞いてくれよ、デイダラちゃん!二ページだ!すごくねぇ?」

    マジやべー!と地面に転がったまま脚をバタつかせる飛段は至極嬉しそうだ。

    「いーひひひっ…ふはっ…ははっ」
    「……え、と。角都さん呼んできます?」

    理解不能だとトビが角都が歩いて行った方を指さす。

    「くくくっ…」

    血まみれの大鎌を背負いながら、全身で笑っている男は誰よりも幸せそうに見える。
    死神とはこういうものなのだろうか。
    トビがそんな事を考えていると漸くデイダラが口を開いた。

    「そりゃぁ、随分な進歩だな。うん」
    「だろっ!?今日は儀式にも文句なかったしな!」

    『こりゃぁ、今日の夜はイケんじゃねぇ?』
    両手を握りしめて意気込む。
    この分ならきっと今日は宿をとってくれるはずだ。
    飛段は口に出していないつもりなのだろうが、生憎と全て漏れている。

    「どうでもいいけど、いつまでも転がってると見失うぞ。うん」
    「は?」

    はたと気づいて跳ねるように立ち上がる。

    「あの野郎、置いてくなっつってんのにっ!」

    鎌を引きずりながら猛スピードで駆けて行った。





    「何なんすか、あの人」
    「あー…ただのバカ?」
    「二ページって?」
    「オイラが知るわけないだろ。うん」

    何度か付き合わされている内にあしらい方を覚えただけで、アレの言動は毎度良く分からない。

    「随分、…幸せそうだった」
    「………」

    幸福とやらに何か特別な想いでもあるのだろうか?
    トビの考えている事もわからないな、とデイダラは思った。
    飛段は、飛段のセカイで生きている。
    良くも悪くも真っすぐな男には周りが見えない。


    ジャシンと、角都と。
    それだけあれば、他に必要なものはない。


    「わがままそうっすけど」

    トビは言う。
    デイダラは、飛段にとって我儘とは、叶えば嬉しいが叶わなくても構わない事なのだろうと思っていた。
    実際、角都が許しているのを見たことはない。
    言いたいことを言えれば通らなくてもいい。
    多くを望むようでいて、その実、多くを諦めているような印象を受ける事がある。

    「先輩、よく見てるんすね」
    「別に…何かと絡んでくるのはむこうだ」

    毎度サソリとため息ばかり吐いていた。
    繰り返しているうちに覚えただけ。

    「あ、そろそろ出発しないと」
    「お前が下りるとか言うからだろ。うん」







    「角都!待てよ!」
    「何だ。もう目覚めたのか」
    「そいつ宿代にするだろ?」

    気味が悪いほど嬉しそうに彼は問いかけてくる。
    スタスタと先を急ぎながら、どうしたものか考えた。
    確かにこれは暁の資金集めとは別に追った趣味のようなものだ。

    「なぁ!」
    「次の町まで大人しくしていられたらな」

    ひたりと止まって振り返ると飛段は慌てて口を押えた。
    コクコクと何度も頷いている。
    次の町までは静かにしているという意思表示なのだろう。

    「さっさと行くぞ」





    角都の目がほんの少し柔らかくこちらを見た気がして飛段はまた肩を揺らして笑った。












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