パチパチと枝が爆ぜる音に瞬きを重ねていた。
夜が更けてからどれほど経っただろうか。いつもなら栄養補給の後は早々に焚火を処理して眠りにつくのだが、今夜は目が冴えて眠る気になれなかった。
理由は考えずとも分かる。確認するように、すん、と鼻から息を吸えば、鼻腔にべったりとこびりつくような血の匂いが肺に広がる。不快感に眉を顰めれば、皮膚の動きに合わせ、拭い取ったはずの体液が糊のようにズレるのが分かった。
なぜ人は不快なものをわざわざ確認したがるのだろうか。無くなったかと期待しているのだろうか。そんな意味のないことを考えるほどには、この夜が手持ち無沙汰になっていた。
暇を潰そうと鞄の中を探ってみる。だが残念、焚火の明かりを頼りに探るまでもなく、お気楽な道中用具は殆ど捨ててきてしまっていた。中にあるのは薬箱、万能ナイフ、ロープ、携帯食、水筒、手帳、後は寝泊まり用の布、モラ袋くらいだった。
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