(メモ)国千柴(柴だけ女)の3P的な話です。神奈備からやってきた柴は、ある夜国重と一線を超えてしまう。
元々国重に想いを寄せていた柴は本懐を遂げたわけだが、このまま肉体だけの関係に終わるつもりはなかった。
「俺、処女やってん。責任取ってや」
そう言って薊に協力してもらい六平の籍に無理やり入れさせた。
六平の家で国重と関係を続けていた柴は幸せの絶頂だった。
それもチヒロが十八になるまでのことだった。
「チヒロももう一人前の男だな」
誕生日を祝った夜のこと、国重は上機嫌だった。
「だから、チヒロの初めての相手になってやってくれ」
「えっ?何の冗談や……」
するとチヒロが柴に迫る。
「冗談でこんなこと言いません。俺は前から柴さんのこと……」
「待って、チヒロくん」
柴は驚いて国重に助けを求める。
「どういうことや?俺は、お前の……」
「柴は俺の大事な女だよ。でも俺はチヒロに幸せを優先する」
「そんな……」
柴が愕然としていると、チヒロに抱き着かれた。
「俺じゃダメですか?なら突き放してください」
チヒロに乞われて、柴は拒むことができなかった。
そのうちに父子二人と関係を持つようになった。
「えっ妊娠?」
六平の家に仕事でやってきた薊に柴は打ち明ける。
「たぶん……、こんなことお前にしか相談できひんし」
「おめでとう、柴。こんな環境でちゃんとお祝いできないのが残念だ」
「いや、そういうの、ホンマにええから」
柴は適当に言葉を濁した。
本当のところ国重の種なのか、チヒロの種なのかわからなかった。
それから半年がたって、柴は極秘に出産する。
取り上げたのは薊だった。
「柴が危なくなったら、僕は君の方を選ぶから」
薊にはそう宣言されていたが、夜明け前に双子が産まれた。柴も意識ははっきりしていた。
柴はほっとした、生まれたばかりの薄い頭髪はどちらも柴譲りの金髪だった。
顔つきもいずれ自分に似てくるだろうと思ったからだ。
しかし、月日が経つにつれ双子は顔立ちがはっきりするようになる。
女の子はチヒロに、男の子は国重そっくりだった。
国重とチヒロはそれに喜んだ。
柴も嬉しくないわけではない。好いた男と、その息子と契ってできた子だ。
この双子に流れているのは、柴が欲してやまなかった六平の血だった。
双子の顔を見て察しのいい薊は気づいていたに違いない。
この家で行われてきたこと全て。
「俺のこと、責める?」
薊が来た時に、柴は聞いてみた。
父とその息子と交わるなど、獣にも劣る行為だとなじって欲しかった。
「……君は、この家から出たいのか?」
逆に尋ねられて、柴は答えられなかった。
いや、その答えがわかっているからこそ、言いたくなかった。
黙っている柴を見て薊は首を振る。
「君が望むなら、僕の全権を使って出してあげる。それを望めばの話だけど」
柴は弱弱しく笑った。
「せやな、わかってんねん」
でも、と柴は続ける。
「自分がどうなろうとあの二人から離れられへん。もう俺はすっかりケダモノになってしもたけど」
「柴」
薊は細い指で柴の頬を撫でた。
「……ケダモノになっても君は綺麗だよ」
庭で遊んでいた双子が柴に駆け寄ってきた。
縁側に座っていた柴は立ち上がって告げる。
「でも俺は後悔してへんねん、それが一番恐ろしいわ」
(完)