桜花爛漫 春。遊歩道を挟んで両脇に整然と咲き誇る桜が満開の盛りで、花吹雪が視界をその鮮やかな桜色でいっぱいに染めている。
日差しに照り返る、白に近い花弁が眩しくて目が眩むようだ。
ふいに、聞き覚えのある声を耳にした気がして足を止めた瞬間、こちらへ勢いよく飛び込んでくる影が視界の端に映り、振り返って咄嗟に抱き止める。思いもよらない重量に重心を調整して耐えると、大きく見開かれた蜂蜜色の瞳が収まった目と視線が交わる。
「ごめん!夏油先輩、怪我してねえ?!」
晴れ空の下吹雪く桜と同じ色で輝く髪色が美しくて、返事も忘れて抱き抱えた少年——虎杖悠仁に、傑は返事も忘れて見惚れてしまった。
「にいちゃん大丈夫?」
ちょうど悠仁が飛び降りてきた木の影から、小学校低学年くらいの子供がそろりと身を現す。
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