Perplex Paraiba Tourmalineパライバトルマリンの困惑
通信部に最近入ったばかりの若者は壁にピンボールの様に何度か衝突しながらも、若さから来る体力と根性が備わっていた。
天候は[[rb:時化 > シケ]]。横殴りに吹き付ける暴雨にどうにか抗おうと甲板に括り付ける荷やら、マスト登りの達人達が指示役の号令に合わせ一斉に引かれるロープ。揺れに揺れる船の通路は、クルー達が駆り出されているせいで走りやすくはあったが、それが逆に肌を粟立たせる様な、静かな不気味さを併せ持っている。
「船長!!電伝虫からの連絡が…!!」
半ば体当たりに近い形で開いた扉の向こう、船長室に転がり込んだ若者は部屋の主の圧倒的な品位に顔を挙げた瞬間に蹲って頭を垂れるのだ。そのズボンの丈が膝下から足りていなかろうと全くの問題はない。自分が憧れ仰ぐ船長の、僅かな憩いの時間を潰してしまったのだ。申し訳なさで自然と身体が赤い絨毯の上で丸まり床を這う。
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