ある天使の肖像 天使と悪魔の繁忙期がどうにか過ぎ去り、私と彼は、ようやく週に一度、どちらかの自宅で落ち合えるようになった。よく使う喫茶店は最近、近隣の区画を担当する天使が顔を出すようになったので、あまり落ち着いて話が出来なくなってしまったのだ。
今日は悪魔が私の家に来て、ひとしきり、人界の世界情勢について話をした。結局のところ、人間はまたも同じ過ちを繰り返そうとしており、悪魔はそれを誘導し、天使はそれを牽制している、という訳だった。
「しかし仕事とは言え、気が滅入るぜ。悪意は好物だが、最近は純粋な悪意以外も蔓延していて、腹がいっぱいだ」
私の淹れたコーヒーを飲みながら、黒髪の悪魔は嘆息する。
「それなら、少し手を抜いてくれよ。お前の働きぶりは、他の天使たちから聞いてる。お前がちょっと休んでくれれば、人界も多少はのんびり出来る筈だ」
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