文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day05 摘んだ指先に垂れる細い紙縒の先に火を灯せば、ジリジリと小さな音を立ててぽってりとした火の玉が橙色に輝く。しかし、その火球は美しい松葉型をした火花を散らす事なく地面へと落ちていった。
「くっそ、撚り方が甘かったか」
「あ、俺の上手くいってる!」
悔しそうな汐見の声を追うように、楽しげな空閑の声が飛ぶ。
「ボクのもいい感じじゃない? せんこ花火ってこのパチパチがメインなんでしょ?」
パチパチと火花を散らす光を嬉しそうに見つめながらフェルマーも声を上げ、高師は火花を散らす前に落ちた火球を見遣り鼻を鳴らした。それぞれの一喜一憂を見守りつつも、自身の手にあった火花を少しだけ散らし落ちた線香花火の紙縒を水を入れたバケツに落として篠原は笑う。
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