ぐだカド若モリバレンタイン編仲良しシェアメイトのバレンタインチョコレートプレイ♥
バレンタイン。最近は色々な例があるが、基本的に日本では女性が意中の男性にチョコレートを贈る日だ。
紙袋いっぱいのチョコレートを持ち、苦労してドアを開ける。カドックが一番遅かったようで同居人の立香とジェームズが楽しげに話している声が聞こえてきた。
「ただいま」
「お帰りー」
リビングのテーブルには色とりどりの包装紙に包まれたチョコレートが山と積まれていた。ジェームズの前に置かれているので彼のものだろう。
「相変わらず物凄い量だな……」
「カドックの方が多いと思う」
カドック自身で理由は分からないが、カドックはそこそこモテる。大学のクラスメイトやバイト仲間、バイト先の客など日頃から関わりのある相手から告白されることも多かった。こんな陰気な男のどこが良いのかさっぱりだ。
今は誰とも付き合うつもりがないと断ってもチョコレートだけでももらって欲しいと食い下がられ、それを固辞するのも面倒でそのまま受け取る、ということを繰り返しているとそこそこの量になったのだった。
一方のジェームズといえば、この容姿でモテないはずがない。とはいえ女性側も色々な意味で本当に付き合えるとは思っていないようで、アイドルにチョコを送る感覚で渡されるようだ。
色とりどりの箱が入った袋ごとテーブルに置く。
一つ一つは大きくないものの、これだけ集まれば壮観だ。
だが、一番大きな袋がまだそこに控えている――立香のものだ。立香が机に中身を出そうとするのをカドックは手で制す。毎年なので気をつけろと言いたいが、人を疑わない所が彼の美点ではある。
「立香のチョコは混ぜないで」
「お前のチョコ変なの入ってる事多いから事前に確認するぞ」
藤丸立香。この三人の中で一番交友関係が広い男だ。本命から友チョコ、義理チョコを含めてその数は百をゆうに超える。そして、どういうわけか彼が貰ってくるモノの中にはマズイものが紛れ込んでいる。
二人は手分けして立香のチョコを一つ一つ検分していく。
ジェームズは恐る恐るといった様子で美味しそうなチョコレートパウンドケーキを割った――長い髪の毛。
混入という量ではなく明らかに故意のソレは立香に対する歪んだ執着を明らかに示していた。
綺麗に手作りされたトリュフの臭いを嗅ぐカドック。カカオの香りに混ざって覚えのある鉄の臭いが鼻につく。どんなに少量だとしても本能的な忌避感でこの手の異物を見分けることができる、という特技など発揮したくもないのだが。
「あ、コレヤバい」「これは嫌な予感がする」「これも変」
ジェームズの人並外れた観察力、カドックの勘を総動員して怪しげなものを抜いていく。立香は「二人ともすごいなあ」と呑気なものだ。
「もう手作りは受け取らないことにしておけよ」
「いや、そうすると多分巧妙に市販品に寄せてくると思うな、この手のヒトは」
立香の貰ってきたチョコはそのほとんどが真っ当なものだった。強烈なのはごく一部だ。カドックとジェームズの活躍により呪物はまとめて隅に追いやられている。
髪の毛など可愛いもので、盗聴器、カメラ、血液など出る所に出たら勝てるような物も入っている。それらを厳重に破壊して捨てた。
「渡してきた奴との付き合い、考えとけよ」
「そういう子に好かれる確率高すぎない?」
「うん……なんでだろうね……」
気を取り直してジェームズは自身が貰ってきた箱から一つ選ぶ。綺麗にラッピングされたそれはあまり流行に詳しくないカドックですら名前を聞いたことがあるほどの有名店のものだ。
「あ、それテレビでやってたお店のだ」
立香も知っていたらしい。二人して綺麗な箱が開くのを眺める。果たして中には五つのトリュフチョコレートが入っていた。たったこれだけで数千円もするのだからカドックには理解できない世界だ。
「はい、どーぞ」
「むぐっ……」
「んっ……!」
「「うまっ!」」
摘んだ指先ごと無造作に二人の口へトリュフが突っ込まれる。抗議しようかと思ったがその美味さに免じて黙った。立香も幸せそうにもぐもぐと咀嚼している。芳醇な香りと程よい甘さを味わっていると、一つ自分で食べたジェームズが鞄の中を探っている。
「僕も買ったんだー」
「えぇ?」
こんなにたくさんチョコがあるのにわざわざ買ったのかと顔を見合わせる。そんな二人の反応にも構わずジェームズは笑顔で鞄からソレを取り出した。
「じゃーん!」
「お前はまた……」
ソレは、ボトルに入ったラブローションだった。チョコレートの味と香りがついているらしい。セックスもする関係なので、確かにこの三人にとってラブローションは必需品だ。少なくなっていたら誰かが買い足すのだが、どうもジェームズはこのような変わり種を買ってくる傾向がある。
「食べても大丈夫なんだって」
「へぇ」
楽しげにビニールを取って蓋を開けると、人工的なチョコレートの香りが部屋に発散する。
「……というわけで、ヤろ♥」
爽やかで無邪気、そんな表現がしっくりと来るウインク。この笑顔に魅せられて彼にチョコレートを渡す女性たちは甚だ気の毒だと思う。綺麗な顔立ちから想像もつかないほどに下品で淫らなことが大好きな男だと、誰が想像つくだろう。
結局は立香もカドックも楽しんでいるので同じ穴の狢なのだが。
「ん、ふぁ、」
「は、ぁっ、ん……」
全員でいつものソファーベッドに雪崩れ込んだ。窓からは西日が三人の身体に降り注ぐ。こんな明るいリビングで性行為なんて、という抵抗感などとうの昔に焼き切れている。
三人に恋愛感情などなく、高校時代からずるずるとこの関係を続けているだけだ。この内の誰か一人に恋人でもいれば霧散してしまう、ごく一時の性欲処理関係だったはずなのに。他人には絶対に言えない関係で、いつかは清算しなければならない。立香もジェームズも、本命チョコレートを山のように貰ってくるのだから誰かと付き合ってしまえばいいのにと、カドックは自分を棚に上げて恨めしく思う。
既に盛り上がっているジェームズと立香は舌を絡め合ったキスをしているのでその間にゴムを用意する。
いつの間にか服を脱いだ二人を見ると膝立ちになった立香の雄をジェームズが四つん這いになってしゃぶっているところだった。ジェームズは持っていたボトルを半勃ちになった立香のペニスにローションをぶちまけ、ぺろりと舐めた。
「んーあんまり美味しくないな」
「本物のチョコじゃないんだから当然だろ」
そう言いながら少し味に興味があったカドックもジェームズの隣に陣取って立香のペニスを舐める。確かに甘いが水っぽくてチョコレートの香りも安っぽい。先ほど美味いチョコを食べたせいもあるのかこれはチョコではないと強く感じてしまう。イマイチだな、と呟きつつも勃起させなければ始まらないのでぺろぺろと舐め続けた。
図らずも二人がかりで彼に奉仕する形になって、まるでアダルト動画の一場面のようだ。
「二人とも、っ、エロすぎ……!」
立香も同じことを考えたのかもしれない。舐められることなど慣れているくせに、顔を真っ赤にして息を呑む。
竿や裏筋を舐めたり、交互に咥えたりしているうちに立香のものも力を増してきた。
「はふ、ん……♥」
「ん、んぐ、♥」
二人がほとんど舐め取ったせいで、ほとんどローションは消失している。代わりに立香の先走りの淫臭が鼻を擽った。
この硬くて太いものに犯され、最奥を突かれてイかされた回数は数えきれないほど。その快楽が染み付いた心身は自然と期待して体温が上がる。それはジェームズも同じで、いつしか二人して腰を揺らしながら夢中で先走りを舐めていた。
「あ、っ、う……♥は、待っ、でる、出るから……」
「ん、出して♥」
射精の気配を感じて顔にかけられるのが苦手なカドックは身を引く。だがジェームズはお構いなしで本気のフェラチオを始めた。じゅるじゅると淫らな音がリビングに響き渡る。
これをされたら一溜まりもないんだよな、と経験者であるカドックはそれを横目に見ながら水を飲んで、テーブルに並べられたチョコレートの一つを口の中に放り込んだ。
「……これもうまいな」
これは確か、バイト先の一歳年上の女性がくれたものだった。客観的に見て綺麗な女性だったが、恋人になるとか付き合うとかそういう気持ちにどうしてもなれなかった。先ほどジェームズからもらったチョコに引けを取らないくらいに美味だ。つまりおそらく値段もその程度はするということで。チョコレートだけでもと言われて受け取ったが、本当に良かったのだろうかと罪悪感がチクリと胸を刺した。
甘くて苦いそれを味わっていると肩を軽く叩かれて振り向く。ジェームズがニコニコしていた。どうしたんだ、と口を開きかけた瞬間――キスされる。しかもただのキスではない。立香の精液を口移しされているのだ。
「あっ、コラ、んっ、はぁっ♥♥」
チョコレートの味が青臭い精液の味で上書きされていく。他に例えようもないなんとも言えない味だ。決して美味いものではない。しかし興奮を誘う淫らな味だ。いつしか二人で舌を絡め合いながら精液を取り合うようにキスを続けていた。唇を合わせながらソファーベッドになだれ込む。
気紛れに上下を交代しながら身体を絡め合うようにお互い愛撫しながら唇を貪った。ジェームズとカドックは同じ程度の身長なので身体を密着させれば乳首やペニス同士も擦れて、微睡むような快楽を与え合う。
「んっ♥ぁ、ふぁっ♥こういうのも、たまにはいいかも♥」
「あ…っ♥ん、ちゅ、ふぅ♥は…、そう、かよ…」
会話やキスをしながら緩やかに上り詰めていく。このまま二人で達するのかと思えば立香の指が尻の狭間に伸びてくる。
「んっ♥入れたい、のか……?」
「こんなの見せつけられたら堪らない、でしょ……!」
カドックとしては拒む理由もない。ジェームズと密着して組み敷く形になりながら立香の指を受け入れる。先ほどのローションを使っているため、また人工的なチョコレートの香りが辺りに広がった。
「あ、ふぁっ♥♥」
ぐちゅぐちゅと、居た堪れなくなるほど淫らな水音が己の身体から鳴っている。少し触れられただけで慣れきった隘路は柔らかく指を受け入れ、媚び甘え始めた。
ペニスと乳首は下のジェームズと擦り合い、アナルは立香に責められて身体中が快楽で満たされていく。
「ん♥♥次、僕にもちょうだい♥♥♥」
「うん」
ジェームズと和やかに会話しながらも立香の指は容赦なく増やされて三本がばらばらと動いて肉壁を拡張する。性急な指遣いではあったが、そもそも最初に立香のものを舐めていた時から欲しくて堪らなかったのだ。
いいから早く入れろ、と振り返りかけた瞬間、待ち侘びた太いものが叩きつけられた。
「ーっ♥♥♥」
「はー、カドックの締まりすご……すぐイきそう♥」
みっちりと詰まった欲の塊で気持ちいいところを全て圧迫されている。ぱちぱちと、目の奥が弾けるような快楽に眩暈がした。奥を拓かれて苦しいくせに歓喜してきつく締め付ける肉孔。興奮しきった立香の息遣いが、余計に発情を促してくる。
「んっ、ふふ……カドックのこと好きな女の子たちに見せてあげたいな、その顔……」
「あっ、ふぁっ♥うるさ……っ! っ♥♥♥」
瞳は虚、だらしなく緩んだ口元からは舌を突き出し酷い顔をしている自覚はある。それを指摘され羞恥を覚えるものの、そんなものは少し動かれるだけで呆気なく多幸感に塗りつぶされていくのだ。
「あっ♥乳首コリコリしてる♥♥♥」
「やぁっ♥♥どっち、も…♥やめっ♥♥♥」
いやだやめろと首を振るが、本気で嫌がっていないことなど筒抜けで。高校時代から数えれば相当長い期間身体の関係があるので良くも悪くもお互いを知り尽くしているのだ。
「っ♥♥っ♥♥おおぎぃ♥♥♥めっ♥♥♥いぐっ♥も、ぐッ♥かァ♥♥♥んーっ♥♥♥」
窮状を訴えるために振り返った唇を喰われて口内も貪られる。舌を絡めて唾液を啜られて、まるで頭の中まで犯されているような心地になりながら、カドックはジェームズの腹の上に精液を撒き散らしながら達した。
「はぁ…はぁ、っ……♥♥♥」
「ねぇ、僕も僕も♥」
最後の気力を振り絞って気怠い身体をジェームズの上から退かせれば、今度はジェームズが立香に組み敷かれる。その律動と喘ぎ声を隣で感じながらカドックは目を閉じた。
「チョコレートって、昔は媚薬だったんだって」
騒がしいライブハウスで、彼女の少しハスキーな囁き声はやけに耳に残った。ドリンクと一緒にサービスされたチョコレートをそのままカドックに渡しながらの一言だった。
カドックの好きなバンドには珍しい女性ファンで、それがきっかけで言葉を交わした。会場で演奏されている曲の歌詞についての話から、彼女がそう言うに至ったのだ。
「もう帰らなきゃ。……またね」
終電に間に合わないと残念そうに肩をすくめ、バッグからペンを取り出したと思えばカドックが食べたチョコレートの包み紙にさらさらと何かを書いて差し出す。それは彼女のものと思しきメッセージアプリのIDで、つまりは連絡して欲しいという意図なのだろう。
カドックが何も言えないでいると少し照れたように笑って彼女は人混みの中に消えていった。
見た目はかなり好みだった。音楽の趣味も合う。これまでの印象では恋愛相手としても申し分ないと思った。
それがつい二週間ほど前の話。しかしカドックは未だ彼女にメッセージの一つも送っていない。
気がつけば二人に見下ろされていた。この顔は、何かよからぬことを企んでいる顔だ。起き上がりかけた瞬間口の中に何かが入れられる。
「んぐっ」
ただのチョコレートだと安心して噛めばウイスキーボンボンだったらしく口内に甘さと香り高いアルコールが広がった。いくらカドックが酒に弱いといえこの程度ならば問題ない。
寝転んだまま咀嚼していると身体に何か付いているような違和感に気付く。自分の身体を見下ろせば腹や胸を中心に半分溶けたチョコレート達が幾つも置かれていた。気絶している間に並べられていたらしい。
一体どういうつもりなのか、と口を開きかけた瞬間、腹のチョコレートを立香に舐められた。もちろんそれだけではなくじゅるじゅると皮膚を啜られしゃぶられる。ジェームズも同じく乳首とチョコレートを一緒に舐め溶かして肌に舌を這わせた。
「ひぁっ、あ、ばか、やめ……!」
「ん、カドックおいひい」
「女体盛り……じゃなくて男体盛りってやつ?」
くすくすと可愛らしく笑い合うがその内容は下品極まりない。今日は徹底的にカドックで遊ぶつもりらしい。やめろ、と言いかけた瞬間ジェームズに挿入されて息を詰めてしまう。
れろ、と舌を見せつけるようにして鳩尾や臍の上に置かれたチョコレートを舐め取った立香は、ついでとばかりに柔らかい皮膚も吸い上げ鬱血痕を残す。セックスはともかくこんな変態じみたプレイは認めていないと抗議する声は端から甘く蕩けていく。
暴れようにも快楽で四肢を絡め取られたように力は出ず、ただ甲高く喘ぐことしかできない。だから結局、心もずるずると気持ちいい方に流れていくのだ。
「あっ♥♥♥ひぃっ…!♥♥♥イく♥♥イくぅ♥♥♥」
二人がかりでチョコを舐め回しながら前立腺も的確に突かれ続け、もう何度達したのかも分からない。チョコレートは次々と足されては舐められて、身体中を甘ったるい香りでコーティングされていた。
「待っ、イった♥♥イッたから♥♥♥あっ♥待って、くれぇ♥♥ひぁっ♥」
「カドック♥♥♥気持ちいい♥♥腰止まんない♥♥」
何度も前立腺で断続的にイかされて、カドックの喘ぎに懇願が混ざる。ジェームズも相当興奮しているのか、制止も聞かず硬く滾ったもので弱い所をゴリゴリと削るように攻め立てた。その度に腹の中に蟠る何かがじわじわと膨らんでいく。
「あっ!?♥♥♥ふぁっ…っ!♥あ、ぁ、ぁ……!♥♥♥くる、ヤバっ、へんっ……♥♥♥♥ひっ、〜〜〜〜〜っっ!?♥♥♥♥」
「わっ、カドック大丈夫?」
「あっ……!?♥♥ぁ、っ…な、………!?♥♥」
一瞬だけ意識がブラックアウトして、次に目を開けると立香に顔を覗き込まれていたが、それどころではなかった。精液でも尿でもない。透明な液体がペニスから勢い良く噴き出ている。その間は射精中の絶頂感が止まらず、未知の快楽で身体を身悶えることしかできない。
ようやく液体が止まった頃に耳元にジェームズの笑みが落ちた。
「っ……は、初潮吹きおめでとう♥」
「しお、ふき……?」
「気持ちいいでしょ? 僕も最初は驚いたけど、クセになるよ」
確かに彼が潮吹きしている所は何度も見ていたが、まさか自分がそうなるなんて、想像もしていなかった。回らない頭でただ呆然と彼の顔を見返していると、また奥を突かれてびゅっ♥と潮を零す。すかさず立香にそれを舐め取られて「んー変な味」と感想まで言われて耳まで赤くしてしまった。
「バカ、やめろ……!」
「コレ覚えちゃったら、マトモなセックスには戻れないと思うけど……もう今更だよね♥」
「ぁっ♥♥♥」
「あ、また出てる」
恥ずかしい、いやらしい、はしたない。
彼の言う通り、こんな事を繰り返していたらまともなセックスも恋愛もできるはずがない。
だって、こんなに気持ちいい事、手放せるわけがない。
「……っと……」
「ん?」
「もっと……ちんぽ、入れて…くれ……♥」
もう、どうなってもいい。この快楽を貪ることしか考えられなくて、物欲しげにひくつく孔を男達の前に晒す。彼らなら、この微かに残った躊躇いも一緒に犯し尽くしてくれるだろうから。
それからの記憶はすっかりと抜け落ちていた。自ら雄を求めて腰を振り、淫らな言葉で挑発したであろうことは跡だらけの身体と重い腰を顧みれば分かる。
汗、精液、そして糖分でべとべとの身体をシャワーで洗い流しながら浴槽でニコニコしている立香達を睨みつける。
「くそっ…覚えてろ」
「うんうん。また今度ね」
悪態をつきながらも、あの眩暈がするような背徳と快楽を忘れることなどきっとできない。カドックは自分自身が知らない間に深みにはまっていることを自覚したのだった。