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    引きこもりあーくす える

    お腐れ注意、落書きしかしない
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    POIPOI 543

    ヘビたるちゃんの世界線で、先生と旅人
    ぼんやりちまちま進んでいるけど、完成まで行くのかは本当に謎

    さて、この世界の人種の分類について見ていこう。
     まずは種族について。この大陸に住まう人口の六割を有している至って普通のヒトと呼ばれる生き物、それが人間じんかん種、そして各国固有の種族……いうならば、人間以外の種が残りの四割を占める。テイワット大陸において七つ存在する国には人間と共に特徴ある種族が共存しており、例えば、自由の国モンドでは体の一部に翼を持つ有翼ゆうよく種、契約の国璃月では頭部に角を生やす頭角とうかく種などが挙げられる。
     また獣のような身体的特徴を持つ獣牙じゅうが種は国の固有種というよりも、テイワット大陸に幅広く分布している印象だな。人間と非常に身体的な相性が良いとされ、両者の間では子も産まれやすい。大本を辿れば、稲妻の国が出身の種ではないかとも言われているが、その真相は定かではない。
     固有種といえども昨今は国を行き来する商人がそのまま現地に定住するような事例も多く見られるようになったため、数少なくはあるものの、国外の固有種が見られることは珍しくも奇異な光景ではなくなってきている。
     そういえば旅人は公子殿のことを知っているな?あれも固有種に分類される。氷の国、水の国、両国内で特に見られる海洋かいよう種と呼ばれる固有種だ。文字通り海に生きる種族全般を指してそういうのだが、海中で住う種族を指す訳ではなく、生活の中心地を海に据えている種族を指すのであり、彼らの中には他の種族と同じように陸で生きる者も多い。
     ちなみに氷の国は海豚や鯨などに近しい種族が多いのに対し、水の国は魚や鮫に近しい種族が多いのも特徴のひとつと言えるだろう。固有種はその種の中でもまた細かく分類されてくるのが人間と異なる。とはいえこれも人間の都合で勝手に分類されたに過ぎず、固有種の一部の者はこの呼称をあまり快く思っていないものでな、その昔海洋種は魚類ぎょるい種などと呼ばれていて、自分たちは魚ではないという反発の声もあり呼び名が改名されたという歴史がある。
     これらの種族に関して、魔神戦争まで遡ると差別意識というものが各種族間において存在し、その特徴を揶揄する声も多く耳に入り、今なお残る奴隷制度がもう少し顕著だったように思う。現在種族差による特徴は個性として広く大きく許容すべきであるという思想が広まりつつあるな。
     これは余談だが、そうした世の情勢を踏まえても、璃月の民はその当時の海の魔神への嫌悪から、海洋種に対する苦手意識も強い。無論中にはそんな昔のことを、と隔たりなく接する者もいるが、人々の根幹に刻まれた怨嗟はそう簡単に晴れぬらしい。
     次いで、それぞれの種族の生態について取り上げていこうと思うのだが。

    「鍾離さん、ストップ、ストップ」
     畳みかけるような男の解説に、ついぞ少年は根をあげる。そうしてしまった、と声に出さずに思った。
     思わず会話を中断してしまったところで失礼なことをしたと相手を顔色を伺ってみるも、どうやら男は特段それを気に留めた風でもなく、良く回る口をぴたりと閉じて、すまない、と一言だけ返してきた。
    「この世界の常識と思い、ついぞ語ってしまった」
     先の解説を依頼したのは少年の方だった。この世界に降り立ってから見かける人々について、どうにも見慣れない彼らに対して物珍しい視線を不躾に向けてしまう、それを少年は気にしているのだ。
     まだまだ終わりの見えない旅路を行くことになる少年は、ここ最近知り合った博識な美丈夫へ教えを乞うた。自分の知らないこの世界のことを、人々のことを、是非とも教えて欲しいのだと。
     断る理由のない男はそれを快諾すると、旅人を茶の席に誘い、そのままつらつらと語り始めたまではよかった。この大陸に生きる者たちにとっての常識は、外の世界からやってきた異国の旅人にとって、情報過多であるらしく、男が話すたびにどんどん表情を曇らせていく様子を傍で見守っていた小さい相棒は、あーぁ、と誰にでもなく溜息のようにこぼす。
    「あの、うん、すごくタメになるし、大事なことだと思うんだけどね、俺にはちょっと量が多いかな……」
     ごめん、と小さな声が告げる謝罪に、気にするなと男は再度念押す。
    「俺はどうにも話が長いらしいな、以前に公子殿にも同じことを言われた」
    「長いって?」
    「あぁ、もう少し簡素にまとめてくれと要望を出されたものだ」
     懐かしむように表情を崩して、目の前の男は笑う。公子と呼ばれる人物の紹介で知り合った目の前の美丈夫を初めて目の当たりにした時は、それはもう内心非常に驚いたもので、物静かな印象を受けるものの、その表情は感情の変化を一切感じさせなかった。
     それがどうにも旅人の心の臓に響いたのだ。底知れぬ何かを感じさせる人物である、と。同行者であるパイモンはそう思わないのか、ヘラヘラと目の前の食事に手をつけるだけに終わったが、あの時感じた冷たい何かは無視できるものでもない、そう旅人は定義する。
    「身近なところから説明していこう。そうだな……俺たちの共通の知り合いは、公子殿か」
    「だね」
    「先に述べた通り、公子殿は海洋種という種にあたる。水辺での生活を主とし、水中を自在に行き来することが出来る種族だ」
     言われてその姿を思い浮かべる。はてさてあの若者の顔も背格好もまだ記憶に刻まれたばかりの旅人にとって、公子殿と言う単語のみですぐに記憶の引き出しを開けることは叶わず、しかしその特徴的な下半身については嫌でもすぐに思い浮かんだ。人間と呼称するには些か無理がある長く美しい尾鰭は燻んだ海の色にするりと床を撫でていた。
    「やはり目につくのはあの特徴的な尾鰭であろうが、勿論飾りではない。しかし彼女は混ざりの様だから、海洋種のどこに分類されるのかは不明だ。形状を見るに鯨等の哺乳類ではあろうかと思う」
     なるほど、何となく言われたことがわかるようなわからないような。まだまだこの世界の常識が染み込んでいない少年は、ひとまず男の説明をうんうんと飲み込んで、咀嚼するのは後回しにすることとした。
    「鍾離さんは人間?」
     話題を変えようと試みる。
    「俺はそうだな、特徴らしい特徴もない、至って普通の人間だ」
    「ふーん……でもそれこそが普通、だよね」
    「この大陸の多くは目立った特徴を持たぬ、いわゆる普通の人間であり、固有種というものは常より遠巻きにされてきたのが現状、お前の言い分は正しい」
     自分もこの世界では人間に分類されるのだろうか、そう思いながら旅人は、終わる気配のない男の話へ耳を傾ける。普通、という言葉が果たして、この男に釣り合うのか、と言う疑問を抱きながら。
     璃月の活気あふれる港は岩王帝君殺害事件に湧いて、穏やかに話をするような雰囲気ではない。にもかかわらず目の前の鍾離と言う男は、淡々と旅人からの質問に解を返し、世間のざわめきなど耳にも入っていないような振る舞いを見せる。
     璃月という国は神と共にある国だと、自由の都の詩人は告げた。ならば彼とて、その国に住う住人である以上、多少なりとも此度の事件に動揺を示して然り。見知らぬ他人へここまで親しげに話しをするのも、人柄なのかも知れないが、やはり当初に抱いたあの感覚は拭えなかった。
     少し休憩しよう、鍾離の言葉にふと旅人は遠く追いやっていた意識を引き戻す。どこまで聞いていたっけ、と、すでに半分以上聞き流してしまった男の話をどうにかして脳裏へ手繰り寄せながら、差し出された茶を手に小さく息を吐いた。
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