もういいかい かくれんぼは得意だった。
たとえそれが大人相手であっても。
昔から一人で高いところに登っていると、誰も自分のことを見つけることが出来なかったのである。
まあこっちは姿を隠している訳だし、見つからないことは好都合。
探されたいわけでもないのだ。
だから悟はいつも気が済めば自分から出てきて平然と屋敷の廊下を歩き、それを見た使用人に「探しましたよ坊ちゃん!」と白々しく言われるのが常だったのだ。
どんなに人がいる実家でも一人になりたい時は簡単に姿をくらますことができた。
それはどこに行ったとしても同じなんだと悟は、ぼんやりと高専の一番高い場所に座り込んでいたのである。
都会にしては空気が澄んでいるのか、結界を隔てているとはいえちかちかと瞬く星がよく見える。
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