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    NoaNino

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    NoaNino

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    欠損アンケートのやつ

    地下牢へ、石造りの階段を降りてくる足音が響く。硝子のハイヒールの先とも、夜蛾先生の厚みのある靴底とも違う、軽快なステップ音は、自他ともに認める最強の.......ーー親友だった男のものだ。いつもより少しだけゆっくり気味ではあるが、地面に足がついているのか心配なくらい、軽い調子で足音は近づいてくる。

    「や、傑。変わりない?」

    「.......見れば分かるだろう?」

    「傑の口から聞きたいんだよ。」

    「変わりないよ。」

    非呪術師のいない世界を作る、大義は志半ばで敗れた。家族を失い、自分だけ身を拘束された。戦いの中で悟に深く抉られた両の眼球は、どうしようもないと硝子によって摘出され、痛み止めが切れた度、悟の声を聞く度にずきずきと痛む。
    自ら死を選ぶことも許されず、今もまだ冷たい牢の中で拘束されて、自分だけが生かされていることへの嫌悪感は拭えなかった。

    「.......そろそろ刑は確定したか?」

    「聞きたい?」

    死刑以外あるはずがない。
    早く執行して欲しい、こんな醜く繋がれたままの生に意味などない。



    「.....................終身刑だってさ」

    体がかっと熱くなり、次の瞬間、生かされることの絶望に体が蝕まれていく。

    「.......そんなに熱くなるなよ。」

    気づけば、悟の手の気配がすぐ傍にあった。鉄格子越しに私の頬を撫で、顔の輪郭とパーツをひとつひとつ確かめるように指が顔を這っていく。

    「.......ははっ、何に怒ってるの?目はないけど分かるよ、唇の強ばりとか、皮膚の強張り具合とか、歯の噛み締めとかさ.......、生きられるんだからもっと喜べよ」

    そんなこと私が望まないことを分かっているであろうに、悟は軽い調子で言葉を紡ぐのを止めない。

    「お前がどう思うかは知らないけど.......、僕はさ.......、親友を死なせない道を選んだんだよ。.......実は結構大変だったんだよ、硝子まで巻き込んでさ。個人的には結構大奮発して支払ったし、上層部は結構大喜びだったし?.......まあ、お前の命と比べたら安いもんだけどさ。」

    「まだ私を親友と呼ぶかい?.......おめでたいな。.......支払い?も.......別に頼んでもない。」

    悟の言葉をすべて拒絶する私の面など見えていないかのように、眼球があった場所を悟の長い指が撫でる。
    包帯でぐるぐる巻きにされた下、眼球があった場所はぽかりと穴が広がっていて、指で触ると凹みが分かるそこ。自分以外の人間が触れると、むず痒さのような感覚が全身に広がっていく。

    「僕はまだ親友だし、.......恋人のつもりだよ。頼まれてなくても、したかったんだよ」

    捨て去ったはずの青い春。
    真っ黒に塗りつぶして見ないようにしたそれは、なくなった眼球の代わりに、色鮮やかに脳内に記憶を浮かび上がらせる。
    厄介なものだ、眼球の存在なんて関係なしに、記憶は綺麗なままに、そこにあり続けて消せやしない。
    口先で虚勢を張ってみたところで、記憶はどんどん濃さを、繊細さを取り戻す。脳内にあの頃、あの日、あの時間を綿密に描写していく。

    「甘いね.......、そんな考えでまだまだ真っ黒な上層部とやり合っていけるのかい?」
    「さあ?.......でも、傑が手の届くところに帰ってきたから。案外最強すぎて平気かも。」

    何を馬鹿なことを、と思いながら、脳内の記憶を指で辿るようにして、悟の顔に手を伸ばす。ああ、懐かしい感覚だ。指先は記憶と同じ温もりをきちんと覚えている。

    自分がされたのと同じように、悟の頬に触れ、輪郭を確かめ、目を覆う布の高さにたどり着く。後頭部まで1度手を回し、ゆっくりと前へ。頬骨をなぞり、現代最強の呪術師の所以たる目、六眼がある場所に指先を載せる。

    「..............?」

    指の腹で恐る恐るそこを押す、押し返すものなどなにもない空洞が広がり、指は想像よりも深くそこに吸い込まれる。

    「.....................悟?」

    悪戯がバレた子供のような、小さな笑い声がする。

    「.......君、何を.......」

    「安いもんだよ、お前に比べたら」
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