溺れるより早く担当行員の梅野が話す度、コロコロと角張ったハートが足元に散らばって行く。
「確かにお前の言う事は……正しいみたいだな」
きょろりとした丸い目が瞬く。一見無表情で言い回しもおかしな男だが、曲者の多い行員の中では相当に『いい奴』だ。
いくら馬鹿げた話でも、証拠もある事だし信じないといけない。例え、【他人の感情がみえる様になるペナルティ】だなんて言われたとしても。
這々の体で自宅に帰り着くと笑顔の真経津に迎えられる。昼間賭場に出かけた際には居なかった筈の面々。
「おかえり。獅子神さん、勝ったみたいだね!」
ぱちんと弾けるような衝撃と共に、オレの片手からはみでるようなサイズのキラキラしたハートが目の前の空間に生まれる。クリスタルと云うよりも鏡面加工されたような、周囲を反射しながら光るハートは、受け止めると重さを感じるより先に弾けて消えた。
2019