高さ(フォルネウスより)自分の体が雪より冷えているとき、その現象は起きる。
無数の螺旋が実は単なる輪だったことに気づき、子供のように泣きじゃくりながら目を開ける――そう、目は閉じていたのだ。薄く明るく開いた世界。
こういうとき、浅瀬で暮らす小さい生き物にでもなっていればと願う。しかし現実は海面に引き寄せられ、内臓を引き抜かれて醜く、耐えがたい見た目の深海魚のままなのだ。
なぜいつも、海は高さを間違えてしまうのだろう。
今日僕を釣り上げたのは二人の男だった。
妙な感じだった。これまで海と自分以外に関心が向くことは稀だったからだ。
これまで何千回と突き刺されてきた針も、このときは穏やかに手を引く女の感触に近かった。
それはどうやら祈りに近かった。本来届く場所に届かなかったものが偶然海に落ちたのだろう。
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