Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑩―赤井Side 7月―
まだ梅雨の終わりが見えない、七月七日。七夕の日。
隣の阿笠博士の家で、子どもたちも一緒に、ささやかな七夕パーティーをした。その場でも赤井は、“ただの中学生”を演じた。
暗くならないうちに解散となったので、夜空を一緒に眺めることができるのは、降谷とだけ。ずっと曇り空が続いているが、時折、雲と雲の間からうっすらと星が見えるので、降谷は辛抱強く空を眺めていた。
二階にある、降谷の部屋で二人きり。
一緒に星を見ようと約束をしたわけでもないが、赤井は降谷の隣に並ぶように立った。ふたりで同じものを見ていたいと思った。
しばらく会話はなかったが、降谷が静かな口調で言った。
「……僕、何か大事なことを忘れている気がするんですよね」
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