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    まる@雑多

    @sakkurinn1
    好きなものを好きなときに好きなように描く

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    まる@雑多

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    以下のくなさんの絵に触発されて描き始めた初日の出を一緒に見るシエウノです。
    https://twitter.com/kuna_BB/status/1477951396528164871?s=20&t=Azo5tRT2I3r2yrlEEqj9Qg
    衣装についてはこう、文章的に意味のある理由をつけられなかったので触れてません。各自脳内でどうにかして下さい(雑かよ)

    ##グラブル

    初日の出を一緒に見るシエウノ 十天衆本部にある建物の一室で、俺は酒の入ったグラスを片手に、机に突っ伏した。
     「やっぱり、俺って人望がないのかなぁ」と長いため息を吐く。唯一招集に応じてくれたウーノは、やけ酒をする俺に何も言わずに窓の外を見る。
     先約がある旨を伝えてくれたソーンはさておき、他のメンバーは連絡さえ返してくれない。流石にお兄さん悲しくなっちゃうなー。そんなことをぶつぶつと言っていたら、ウーノが視線を戻して声を掛けてきた。
    「シエテ、そろそろ日が昇る時間ではないかな」
     その言葉に、俺は顔を上げて、気を取り直すべく両手で頬を叩いた。皆で初日の出でも見よう、なんて理由で、一人でも集まったのだから上々ではないか。
    「じゃあ、外で待とうか」
     椅子から立ち上がり、無意識にウーノへ手を差し伸べる。彼はひとつ瞬きをするが、何も言わずにその手を取って椅子から降りた。ほんの一瞬触れて離れた温かさに、少し嬉しくなってしまったあたり、きっと俺は酔っている。
     二人で建物の外に出ると、その屋根の上に陣取り朝日を待った。
     濃紺の夜空が、空の底からうっすらと白み始める。次第に、優しい色のグラデーションが生まれ、ゆっくりと時間を掛けて太陽が顔を見せ始める。それを、ウーノはただ静かに眺めていた。
     周囲が僅かに明るくなった頃、ふっと、ウーノが柔らかな息を吐いた。朝の冷たい空気に触れたそれは、白く可視化され、消える。どうかしたのかと声を掛ける前に、彼はちらりと横目で俺を見た。
    「きみの眼差しで、雪のように溶けてしまいそうだ」
     その言葉で、先程からずっとウーノの横顔を見つめていた自身を、本人に認識されていたことに対する気まずさが芽生える。こちらは一度も見ていなかったというのに。
    「ごめんね、嫌だった?」
    「いいや。大切に思ってもらえるのは、素直に嬉しいよ」
    「へ?」
    「なるほど、無意識なんだね」
     思いがけない言葉に間抜けな声を出せば、彼が身体ごとこちらを向く。それから、少し照れるようなはにかみを浮かべた。
    「きみが私を見る目は、温かくて、大切だという思いに溢れているんだよ」
    「えっ。えーー。そんなに顔に出てたんだぁ。…………ごめん。凄く恥ずかしくなってきたから、見ないで」
     はにかむウーノが可愛いやら、自身の思っていることが筒抜けだったことが恥ずかしいやらで、俺は両手で顔を覆って俯いてしまう。だって、まだ告白もしてないし、隠せてるつもりでいたのに、バレバレだったんだから。
    「正直、最初は戸惑ったよ。でも、きみは何も言って来ないし、それを良いことに私は見ないふりをしていたんだ。随分と悪い大人になってしまった」
    「ウーノは悪くないよ。隠しているつもりで全く隠せていなかった俺のほうがどうかと思う……」
     そう返しながらも、ああ、今、耳まで赤くなってるだろうなぁと思う。盛大に赤面していることがばれているなら、もう怖いものなんてないのではないだろうか。そこまで考えて、俺は両手を下ろした。それから、一つ深呼吸をして顔を上げる。
    「ウーノ。聞いて欲しい」
    「ああ」
     冴える朝の光の中で、彼が優しく目を細める。それを、綺麗だなぁと思い、俺は微笑んだ。
    「俺、ウーノのことが好きなんだ」
     伝えるつもりがなかった気持ち。でも、伝えてみたかった気持ち。言葉にした声は緊張もなく、ただ柔らかに響く。それを受け、ウーノは片手を胸元に当てて、小さく会釈する。
    「ありがとう、シエテ。私も、きみのことは好意的に思っている。けれど……」
     その先の言葉は予測できていた。開口一番で振られなかっただけ、ウーノは紳士的で優しい。
    「今の私には、個人的な感情よりも優先するべきことがあるんだ。争いのない、平和な世界。それが本当に成せる時まで、返事は保留してもいいだろうか」
    「うん、そうだよね。…………っんん?」
     やはり振られるとなるとほんの少ししんみりする。などと、振られる想定しかしていなかった俺は、ウーノの言葉に対する理解が遅れた。その言葉を二、三度脳内で反芻する。
     そんな俺の様子を見た彼は、穏やかな声で付け足した。
    「もちろん、この先きみが、他に恋しい人を作るのは自由だよ。こんな中途半端な言葉で、きみを縛り付けようとは思っていないからね」
    「いや、待って! 俺、これでも結構本気で……っていうか、もしかして、振られてはいない?」
     ウーノの言葉を反芻するほど、俺にとって都合のいいように脳内補正をかけてしまったような気がして、つい本人に尋ねてしまう。すると、彼はふうっと溜息をついた。
    「落ち着きなさい、シエテ」
    「ハイ」
    「私は、返事を保留したいと伝えただろう」
    「そうでした」
     面目ない気持ちになりながら、僅かに俯く。すると、頬に小さな手が触れた。一度するりと撫で、顔を上げなさいと促すように僅かな力が加わる。素直に従うと、ウーノが空いた手で登る朝日を指差した。
    「ごらん。美しいね」
     そう言って彼が遠くを見る。生まれたばかりの陽光を受け、真っ直ぐに背筋を伸ばしたその立ち姿を、綺麗だと思う。
     ウーノの姿を目に焼き付けるように見つめた後、俺は一度目を伏せてから、彼の視線の先を見た。
    「うん、そうだね」
     新しい朝が目覚め、深い夜が眠りを迎える。この時間を、ウーノと共に過ごせることが、ただ素直に嬉しい。
     でも、俺はそれなりに欲張りだから。
    「ねえ、ウーノ」
    「なにかな」
     視線を彼に戻して、微笑みながら名を呼ぶと、ウーノがこちらを見る。視線が合わさる前に、彼の頬に手を添えて、その鼻先に軽く口付けた。すぐに唇を離して、間近で深いグリーンの瞳を捉える。
    「忘れないで。俺はあんたが好きだ」
     目の前の瞳が、ほんの僅かに揺れる。しかし、それは一瞬で、ウーノはすぐに柔らかく目尻を下げて微笑む。
    「もちろんだよ、シエテ」
     その言葉にとりあえずの満足をして、俺は顔を離した。それから、満面の笑みを浮かべ、彼の肩をぽんっと叩く。
    「今年もよろしくね、ウーノ」
    「ああ。今年もよろしく頼むよ、シエテ」
     俺の言葉に応え、ウーノも笑みを浮かべたのだった。
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    Replies from the creator

    まる@雑多

    DONE2020年5月に書き始めて未完のまま放置していたものを、この前発掘して、2023年のいま完成させたシエウノ小説です。
    2020年の私が途中まで書いているのですが、まあシエテがめちゃくちゃ可愛い。いや、シエテが可愛いのは世界の真実ですが、今の私からこのテンションのお話は出てこないなあと思います。可愛いシエテしかいません。
    頑張って可愛いままに終わらせました。そのつもりです。不穏なことは一切無いです。
    予期せぬ告白の余韻 シエテが、ウーノに最初に好きだと気持ちを伝えたのは、酒の席だった。


     二人で街のバーに入って、隅のテーブル席に座り、情報交換をしながら酒を楽しんだ。
     シエテも酒に強いのだが、ウーノは所謂ザルだ。その小さな体でよくもまあそんなに飲むものだと思う。
     久しぶりに二人で酒を楽しんだせいか、シエテは少し理性が緩んでしまっていた。だから、楽しく酔っ払った結果、楽しく気持ちを告白してしまった。
    「ウーノ。俺ね、ウーノが好きなんだ」
     シエテが頬をゆるゆるにしながら伝えると、ウーノはほんの少し驚いた顔をしたものの、「それは嬉しいね」とまるで子どもに対するかのように微笑んだ。この時点で冷や水を浴びせてくれればよかったのに、と翌朝のシエテは思う訳だが、このときのシエテは単なる酔っ払いであった。ウーノが微笑んでくれたことが嬉しくて、彼の片手を取って、その手の平にちゅっと口付ける。そのまま舌を出して、ペロリと舐めた。僅かに汗の味がする。
    7800

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