重力「不二くんの優しいところはすてきだけど、わたしにはちょっと重いんだ」
目覚ましのアラームよりも先に目が覚めた。起きた頭の中に残っているのは、2週間前まで付き合っていた彼女の姿だった。人生で、初めて付き合った人だった。
夢に出てくるのはこれが3回目だ。内容もすべて同じ。別れを切り出されたあの瞬間。どうせならもっと楽しかったシーンを映してほしいのに、一番つらかった場面をリフレインさせてしまうのはどうしてなのだろう。
占い師の姉に鑑定してもらおうかと思っても、こればっかりは診断を受けずとも結果がわかる気がする。不二は己の未練がましさに歯噛みした。
気分を振り払おうとカーテンを開け朝日を浴び、「おはよう」と我が子同然のサボテンたちに声をかける。不二の日課であった。
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