プラチナリング(いつもとは違うキス) 左腕を失ってから、指輪をつけようと思うことはなくなった。狡噛は密かに準備をしていたらしい。だがそれはともに監視官時代だった頃の話で、彼も変わったし、俺も変わってしまった。今さら指輪ひとつでどうにかなる関係じゃないのも分かっている。けれどとある潜入捜査で、証券会社勤めのカップルを演じるときに、ホロでともに指輪をつけた時はくすぐったかった。仕事が終わってホロを消しても、狡噛の左手には、薬指にはまだプラチナリングがあって、それは俺が彼を独り占めしているようで気分が良かった。狡噛に支給されたプラチナリングは明日には返却しなくてはならないから、それまでのものなのだけれども。
「なぁ、ホロがあるとグラスの持つのは不自由か?」
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