風が吹くとき 風が吹く。その風は木々を揺らす。踊る木の枝には高く跳ね上がったボールが触れそうになる。背の低い芝生は小さく震え、所々に広がるブランケットや新聞がめくれ上がる。
「ね、外に出て良かったでしょ?」
仰向けで寝転んだ恋人は本を開いたまま、文字を追いながら返事をする。
「公園でゆっくりしようって提案したのは僕だよ」
それからふっ、と息を漏らして笑う。
よく晴れた休日。太陽の光に誘われた人々が、芝生の上で俺たちと同じように自由気ままに過ごしている。
「じゃあ、マーヴの名案ってことにしといてあげる」
隣を見下ろすと、整髪料のついていないブルネットの髪が風に吹かれてふわりと揺れる。柔らかいその髪に触れると、彼は開いた本を胸に置いた。それから空いた手を俺の方へ伸ばし、俺の口元にそっと触れた。俺は彼の手を取りその指先にキスをした。
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