【調味料のそのあとで】「俺はもう出勤する時間だ。それ以上は帰ってから聞く」
目の前でドアが閉まり、カーヴェは続けられなかった言葉をのどに詰まらせ停止する。
シーンと静まり返る豪奢な入口のドア。無情に取り残され放置された彼はどこかで見た水色のスライムのようにぷるぷるし、膨れ、そこらにあった紙を巻き上げる。
信じられない。こんな状態で置いておくなんて。
ことの始まりはアルハイゼンが教令院に長期で籠もった日の最後の日。
カーヴェもちょっといい感じに仕事が終わり、家の内装を入れ替えるために掃除をし、今日は洒落たテーブルクロスでも買いに行こうと思っていた矢先だった。
カーヴェは自分の才能を思うがままに発揮し、設計図に惚れ惚れし、そしてちょっと多めに入った賃金でちょっと良い酒と美味しい飯とセンスの良い環境でアルハイゼンを迎えようと思ったのだ。
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