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    somakusanao

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    春コミ原稿進捗です。コメディです。なんでも許せる方のみお読みください。

    春コミ原稿(凪玲)②「俺はてっきり、おまえたちはとっくにセックスしてるのかと思っていたぜ」
     そう言ってカフェのボックス席で闊達に笑うのは、千切豹馬である。その隣には「昼間なので、もうちょっとオブラートに包んでくれませんかね」とこめかみを抑える國神錬介の姿がある。彼らはいづれも青い監獄プロジェクト登録選手だ。荒唐無稽なサッカープロジェクトで切磋琢磨するうちに親しくなり、オフの日に待ち合わせて、遊びに行くほどになった。案内されたのは四人掛けのテーブル席で、そのうちひとつはまだ空いている。凪のパートナーである玲王の到着が遅れているのだ。なんでも事故渋滞に巻き込まれているという話だった。玲王が予約した席は扉こそないものの区切られた半個室だったので、千切はかなりリラックスした様子である。あけすけともいう。
     最近、玲王とはどうなんだよ、というのが話のきっかけであった。凪と玲王がつきあっていることは、周囲の者は知っている。こちらから教えなくても、だいたいのものは承知している。曰く「あんなにべたべたして、つきあってない方が恐い」らしいが、残念でした。これからもっとべたべたしてやるからね。なにせ凪誠士郎は御影玲王に褒められ甘やかされることを至上としている。サッカーを始めた理由だって、玲王に誘われたからだ。
     凪と玲王のおつきあいは一見して順風満帆のようであるが、困ったこともある。本人がいないからこそ、できる話もあった。千切はすっかりエンターテインメントとして楽しんでいる風であったが、彼らになら相談してもいいかと判断を下したのは凪だ。千切と國神はブルーロックで玲王と同じチームを組んでいた。玲王の血がにじむような努力を知っている彼らは、はっきりと玲王贔屓である。凪と玲王であれば、躊躇いなく玲王を選ぶだろう。だからこそ信頼があった。凪は玲王を害する者は己であっても許さない。
    「玲王ってあの見た目でしょ。男にホテルに連れ込まれることがあるらしいんだけど」
    「おい、ちょっと待て」
    「玲王の裸を見ると『きみを穢すことはできない』って玲王を置いて逃げるらしいよ」
    「うん、思ってた話が違って来たぞ」
    「気持ちはわからなくはないよ。玲王は天使だからね」
    「なるほどわからん」
     そんなことが続くものだから、すっかりと玲王は魔性の仕草を身に着けた。目配せひとつで男を堕とす。仕草ひとつで男を靡かせる。くちびるのうごきだけで虜にする。面白いように人々が玲王の前に膝まづく。計算づくではこうはできない。見た目の美しさと華やかさだけではない。玲王はどこか危うさを秘めている。なにせホテルに連れ込まれてしまうのだ。健全であれば、そんなことにはなりえないのに、玲王には妙に従順なところがあった。そのくせ玲王は箱入りだった。なまじ本人が優秀で聡明がゆえに、性教育がされていなかったのだ。見た目は魔性で中身は幼女。それが御影玲王である。
    「とりあえず、少女漫画を貸してみたんだけど。少女漫画ってさ、えっちな雰囲気にはなるけど、ちんこは描かないじゃん」
     なぜなら少女漫画だからである。

     先日のことである。凪は玲王といっしょにホテルに泊まっていた。ムードたっぷりの美しい夜景。美味しい食事。豪奢な部屋に躊躇をしていたのは最初だけで、よく言えば大物、わるく言えば図太い凪は、大画面でゲームを楽しむなどすっかりとホテルを満喫していた。そして玲王に「いっしょにお風呂に入ろうぜ。泡風呂にしたんだ」とバスルームに連れこまれた。これも予想通りである。なんならホテルと聞いた時から期待していた。とうぜん玲王は一糸まとわぬ姿となる。「なぁぎ、おまえも入れって」と無邪気に誘ってくる。えっちなちくびは見えているし、魅惑的なくびれもあらわである。凪がいれたくてたまらない、尻のはざまでさえも無防備だ。凪の視線に気づいた玲王がいたずらっけたっぷりに「えっち」と身をよじった。身をよじったせいで、おっぱいが形を変えた。身をよじらせるだけで、形を変えたのだ。凪が手を添えたら、どうなるんだろう。
    「……あっ」
     そのときだった。玲王が凪の変化に気づいた。いや、だって、こんなの見せられたら勃たない男はいないでしょ。楽し気な薔薇色に染まっていた頬が、熟れた果実の赤に染まった。途端に夜の色香が漂う。
    「凪のすげぇな。さわってもいい?」
     玲王が髪をかきあげ、耳にかける。えっちだ。えっちなおねえさんだ。凪はすべてを委ねようとしたそのときだ。「ひゃっ」と玲王が悲鳴を上げた。
    「びくって動いた」
     そりゃ動くでしょ。がちんと固まっていた玲王がおずおずと顔を上げた。え。もしかして大きすぎて怖がらせちゃった? なにせ凪は百九十センチである。性器もその身長に見合う立派なものであった。たしかにグロテスクかもしれないと凪が案じるも、玲王のほっぺたは赤いままだった。 
    「俺がさわったら、びくってした。ふふ、かわいい」
     わ~。ちんこがかわいいって言われる世界線って本当にあったんだ~。
     玲王はえっちだし、ちんこはうれしい。髪も身体も洗ってもらえた。ボディタッチのオプション付きだ。凪は世界で最も幸福な男だった。そのときまでは。
    「じゃあ、そろそろ風呂からあがろうか」
    「え?」
    「え?」
     嫌な予感がしつつ、「つづきは?」と訊ねると、玲王はきょとんと首を傾げた。
    「髪も身体もさっき洗ってやったろ」
    「えっと」
    「ああ、あがったらドライヤーかけてやるよ」
     玲王はバスローブを羽織るとにこやかに去って行った。なんと凪はバスルームに置いて行かれたのである。そんなことってある?
     始終そんな感じだった。
     凪の身体を淫らに触って凪を悦ばせるのに、きわどいところになるとさらりと終わる。逃げるというよりは存在しないことになっている。なんでだよ、と思って、はっと気づいた。そうだ。玲王に貸した漫画がこんな感じだった。ヒロインはかわいくえっちに恋人を誘い、みだらに身体をふれあわせるが、挿入は描かれない。なぜなら少女漫画に男のちんこは存在しないからである。

    「そりゃそうだ! ぎゃはははははは! そりゃ少女漫画にちんこは存在しねぇわ!」
     千切は國神の屈強な背中を叩きながら、たいへんな大喜びだった。叩かれて揺さぶられ「いてぇよ」と言う國神の口元も笑っている。お洒落なカフェがちんこですっかりだいなしだが、半個室である。イケメンスタッフさんも笑顔で聞かなかったふりをしてくれていた。女性スタッフが現れないのはおそらく彼の神配慮であろう。
    「ねぇ、どうしたらいいと思う? 男性向けエロ漫画を渡すべき? あんま知らないんだけど、伊東ライフってどう?」
    「ぶはっ、伊東ライフ!」
     千切は始終大喜びである。大喜びすぎて呼吸困難に陥っているくらいだ。國神も笑ってはいるが、こちらは「男性向けはちょっとハードル高くないか?」と複雑そうである。おそらく玲王と妹を混同している。玲王は百八十五センチの、なんなら自分より半年以上先に生まれた男なのに。
    「女性向けBLは? けっこう露骨だぜ。ちんこもあるし」
    「俺、いちゃらぶセックスがいいんだよね。お勧めってある?」
    「姉ちゃんに聞いてもいいけどさ」
     涙をぬぐいながら千切が口を開く。
    「なにもしらないってことは、なんでも教え込めるってことだろ。おまえの好きなようにぜんぶおしえちゃえばいいんじゃねぇの?」
    「お嬢さんは恐ろしいことを言うね」
     少女と見間違えるような美しい姿をしているが、本性は苛烈である。そこが千切の魅力でもある。
     たぶんそれを凪は出来てしまえる。玲王は水を吸い込むように覚えるだろう。凪の理想の恋人が出来上がる。きれいでかわいくてやさしくてえっちな、ものわかりのいい恋人が出来上がる。
    「でも、それじゃおもしろくないよ」
    「おもしろくないと来たか」
    「玲王はめんどうくさいのがいいんだよ」
     凪にとって、日常とは静穏だった。おだやかに、しずかに、なにものこさず、つめたいまま死んでいく。そのはずだった。
     けれど凪の前に玲王が現れた。文字通り、上から降って来た。白宝高校の階段でのことだった。凪を見て、おまえはすごい、と満面の笑みで抱きついてきた。サッカーをやろうと誘われた。あの時に、凪の世界は変わったのだ。凪の世界をあかるく照らし出したのは玲王だ。
    「ふーん。愛じゃん」
     にやにやと笑いながら千切が言う。揶揄われているのはわかっているが、嫌な気はしない。
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