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    minatonosakana

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    minatonosakana

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    没にした転生893パロの冒頭みたいな

    これこそ落書き「見つけましたよ」
     闇夜で冷たく通る声を背後からかけられて、男は「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。
     目の前にも三つの影が立ち塞がり、男は逃げ場を失っている。背後にいる青年と思われる冷たい声は続けた。
    「うちのシマでクスリの取引なんて、タマが要らないとしか思えませんね?」
     男は振り向いて、声の主へと恐怖に満ちた視線を向けた。線が細く、息を飲むような美しい顔の青年が、自分を酷く冷たい双眸で見つめている。その紫色の宝石に睨みつけられて、男は地面に尻もちをついた。
    「しっ、知らなかったんだ! まさかここが、あの千年組のシマだったなんて……!」
     男がそう言うと、三つの影の内の一つ、黒髪の少年が男へ近付いて行き、男の口の中へと取り出した銃口を躊躇いなく突っ込んだ。
    「うぐっ」
    「あの? あのって、どういう事だよ。何の界隈で、どんな俺たちの噂が回ってんのか、是非聞いてみたいねぇ?」
     少年の紅い瞳に見下ろされて、男はくぐもった声を上げる。
    「ちょっと、シン。それじゃあ喋りたくても喋れないでしょ。馬鹿なんじゃない?」
     ピンク色の髪をツインテールに結った少女が、小バカにしたように言う。その少女、アグネスの隣で、携帯端末を耳に当てていたもう一人の少女、ルナマリアは頷く。
    「はい。えぇ、分かりました。……貴方の取引相手は、天使組が捕縛し、既に処分したそうです」
    「がっ、ぅ、ぐ……」
     銃口を口腔内へと押し込められたままの男の口の端からは、唾液が溢れて零れていた。美しい青年、キラはルナマリアの報告を聞いて、皮肉そうな微笑を浮かべる。
    「流石はマリューさん、仕事が早いなぁ」
     呟いたキラは、男に告げる。
    「学生相手に薬局するなんてアコギなシノギ、きっちり落とし前をつけてもらわないといけませんよね」
    「うがっ、ぐっ、がっ……!」
    「シン」
    「はい、若頭」
     キラに呼ばれたシンは、握っている銃の撃鉄を起こす。
    「謝罪はあの世でしろよ、なっ!」
     シンの言葉の直後、その場に銃声が響いた。




     シンの言葉に合わせて、ルナマリアの持っていたスマートフォンから流れた銃声が響き渡る。それを聞いた男はびくりと体を跳ねさせた後で、泡を吹きながら気絶していた。
     シンは男の口からモデルガンを引く抜くと、もう要らないなと、無造作に取り出したビニール袋へとそれを放り入れる。気絶して地面に横たわる男を見下ろしながら、キラは深い溜め息を吐いた。
    「……うちのシマでクスリが回ってるの、やだなぁ……」
     巡回会千年組若頭、キラ・ヤマトは心底鬱陶しいと言うように呟く。男を縛り上げたアグネスが、嘲るように言った。
    「しかも、ブルーコスモスですもんねぇ。厄介な事にしかならないんじゃないですかぁ?」
    「やめろよ、アグネス。キラさ……若頭が、こんなに悩んでんのに」
     アグネスをシンが咎める。キラはアグネスの言葉を気にしていないと言うように、再度息を吐き出した。
    「若頭。コノエ組長にも連絡しておきますね」
    「ありがとう、ルナマリア」

     広域指定暴力団、巡回会。会長ラクス・クラインの元、直径団体の千年組と天使組を主とした彼らは、いわゆる極道である。
     現在は『ブルーコスモス』と呼ばれる違法ドラッグの取引が、管理地域内で多発している事に頭を悩ませていた。
     そんなある日、シンは千年組本部の一室で呟く。
    「俺、やっぱり信頼されてないのかな」
    「は?」
     隣にいたルナマリアが、スマートフォンから顔を上げる。
    「キラさん、一緒に連れていってはくれるけど、俺たちに任せるのはカタギばっかりで、ヤクザ相手だと自分が鉄砲玉になろうとするじゃん? じゃあ、俺たちの存在は何なんだよって」
     不服そうに唇を尖らせてシンが言えば、ルナマリアはどこかで聞いたことのある台詞の気がするなと、僅かに首を傾げた。
    「……シンは舎弟頭を任されてるじゃない。信頼されてないなんて事は無いと思うけど」
    「でも……!」
    「信頼なんてされてる訳ないじゃん」
    「アグネス」
     シンとルナマリアの元へ、アグネスがやって来る。
    「あんた、隊長に会った瞬間に、抱き着いたって聞いたわよ。知らない相手に名前を呼ばれて抱き着かれたら、誰だって不審に思うに決まってるじゃない。ばーか」
     アグネスの言葉に、シンはキラに再会をした時の事を思い出し、拳を強く握り締めた。
    「それはっ……キラさんも、覚えてると、思ったからで……」
     シンがそう言えば、ルナマリアも納得と言うように天井に視線を向けた。
    「まぁ、私たちだけじゃなくて、アスランや総裁までC.E.の記憶があるんだもん。隊長だけ無いだなんて、思わないわよね」
     苦笑するルナマリアを一瞥してから、シンは大きく溜め息を吐き出した。

     彼らが話すように、MSに搭乗して戦っていた記憶のある彼らは、所謂『転生者』だ。
     現在は暴力団組員ではあるが、やっている事は基本的にはこの町の治安維持であり、転生前と行っている事には大差が無いとも言えた。
     そして、会長のラクスや、組長のコノエやマリュー、情報屋のアスランたち、C.E.での顔見知りたちは悉く前世の記憶持ちの中で、キラだけに記憶が無い。

    「……どうやったら、キラさんは思い出してくれんのかな……」
    「シンは思い出して欲しいの?」
     ルナマリアの問いかけに、シンは一瞬返答に躊躇った。
    「それは……」
     言いかけて、口を噤む。キラにとって、C.E.の記憶は思い出したく無いものなのではないか。それを考えなかった訳では無い。
    「……辛かったから、覚えてないのかな」
    「それは私に聞かれても……」
    「そうよ。ルナマリアに聞いたってしょうがないじゃない。って事で、譲りなさいよ、舎弟頭」
    「断る!」
    「何でよ!」

     ぎゃあぎゃあと騒ぐシンとアグネス。三人がいつも過ごしている本部の一室の隣で、三人の会話を聞いていたキラは、無気力な瞳のままでころんと横になった。
     三人の会話は筒抜けで、いつもどこか寂しそうに皆が自分へ話しかけてくる事に気付いていたキラは「やっぱり」と思う。
     みんなは、僕の知らない知り合いなんだ。でもやっぱり、僕はみんなのことを覚えてない。
     思い出したい? 分からない。
     ラクスもアスランもシンたちもみんな、僕を知っているのに。
     無意識に溜め息が漏れた。皆が慕ってくれているのは、きっと僕の知らない『僕』であり、今の僕では無いのだろう。






    って言う、受けだけに記憶が無い転生パロが癖っていう落書きをしていたけど没にした。
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