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    minatonosakana

    @minatonosakana

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    minatonosakana

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    にっさんの嘔吐呟きを、ヤマト隊で書かせてもろたやつ。

    隊長の為なら汚れても問題ありません その日、ヤマト隊はザフトの本部に全員でやって来ていた。しかし、皆はそれぞれ異なる演習や会議に参加するように通達されており、全員がミレニアムへと戻れたのは夜になってからだった。
     キラ以外の四人は、食堂に集まって遅い夕食を食べていたが、全員が今日の仕事内容の愚痴が止まらない。
    「俺はMSの演習相手にって呼ばれたけど、俺は慣れない機体だったのに、全然相手にならないっつーか、これで戦場に出たらただの的じゃん? って奴らばっかりでさぁ。わざわざ俺が相手をする意味、あったのかよく分からなかったんだよな」
     シンが唐揚げを頬張りながら言えば、隣のルナマリアも大きな溜め息を吐きながら、思い切りフォークをざくっとブロッコリーに刺す。
    「私も、この前ブルーコスモスがプラントの軍事演習場を襲撃した時の介入についての説明をしろって言われて会議に出たけど、何で私たちが責められなきゃいけないのよって、何度もキレそうだったわよ。会議が終わるまで一緒に総裁がいてくれたから良かったものの、いつも総裁が一人であんな感じで責められてるのだとしたら、あいつら最低よ! 最低!」
     もっと早く来られなかったのか。もっと早く介入していたら、被害はかなり抑えられた筈だ。その後の救援活動は適切だったのか。等、助けたと言うのに苦情を並べられて、ルナマリアの胃は一日中、キリキリとしていたと言う。
    「ルナマリアが腹を立てるって、結構よね。まぁ、私もコンパスの活動についてのインタビューに答えて欲しいって広報に言われて行ったんだけど、質問が隊長の事に偏ってる感じがあったのよ。途中から不信感が凄くて、『これって、尋問みたいじゃない?』って聞いてやったらやけに狼狽してて、何かがおかしかったわ」
     アグネスは美容の為と言い、特別に作らせたスムージーを飲みながら僅かに眉を寄せる。最初は、コンパスでも活躍中の月光のワルキューレに話を聞きたいと言われて高揚していたと言うのに、徐々に質問内容がキラに関する物ばかりになっていった。他の質問の合間に織り交ぜていたが、それを隠し通せる程、アグネスは鈍くない。
    「おかしい、と言えば、俺もわざわざ隊長から引き離されたように思ったな」
     レイが言えば、唐揚げを飲み込んだシンが眉を寄せた。
    「今日はレイがずっと隊長に付くって話だったもんな」
    「あぁ、隊長と共に会議と、その後の会食にも参加する予定だった。だが、会議に出られるのは一定の階級以上ではないと許可出来ないと言われ、隊長は『それはそちらの話であり、コンパスである僕らには適用されないのでは?』と言ってくれたんだが、向こうが全く聞く耳を持たず、言う事を聞かなければ今後ザフトは一切コンパスに協力しないとまで言われてな」
    「はぁ? なんなのよ、それ」
    「横暴過ぎない?」
     ルナマリアとアグネスが、あからさまに腹立たしいと言う様子で言うと、レイは頷く。
    「俺は仕方なく、会議室の前で待ちますと言ったんだが、隊長が会議室に入った途端に『貴様には銃撃訓練に参加してもらう』と無理矢理連れて行かれた。今思えば、あれは俺を隊長から離す為だった可能性が高い」
     腕を組んでレイが険しい表情を見せれば、他の三人は顔を見合わせる。
    「……隊長が心配だ」
     シンが呟くと、レイが頷く。
    「あぁ。お前たちの話を聞いて、これは隊長を狙った陰謀の可能性が高いと、俺も思った」
    「すぐにザフト本部に戻りましょう」
    「艦長にも報告した方がいいわよね」
     四人で立ち上がり、早足で食堂を後にする。コノエの元にはアグネスが走り、シン、ルナマリア、レイは先にザフト本部へと向かう為に、格納庫へと向かった。昼間の移動は車を使用したが、嫌な予感がする為にMSで乗り込む事に決めていた。
    「先に行って、シン、レイ。私はMSで向かわせてもらいますって連絡をジュール隊長に入れて、許可も貰うから」
    「「了解」」
     キラの名を出せば、イザークならば話を聞いてくれるし、先刻四人で話した不審な出来事を伝えれば、未だに戻って来ないキラを探す手伝いもしてくれるだろう。ザフトで何かあった時にイザークを頼ると言うのは、キラからも言われている事だったし、イザーク自身も何かあれば直通で連絡を入れて構わないと言ってくれていた。それはイザーク自身も、ザフト内の時折不審な動きをする輩がいると分かっているからだろう。
     ルナマリアを残して、シンとレイは隊服のまま愛機に乗り込んで発進シークエンスを待った。アグネスがコノエにキラの捜索の為との報告を済ませていた為、すぐに二人はMSでザフト本部へと向かっていた。




    「こっちだ!」
     ザフト本部のジュール隊が所有している格納庫へと向かえば、ディアッカが二人を誘導してくれる。ルナマリアからの連絡を受けたイザークから指示を受けたディアッカは、既に他の部下にもキラの捜索をさせてくれていた。
    「キラの参加した会議はとっくに終わってるし、その後に会食なんて報告は入っていない。誰がそんなことを言い出したのか、それも今調べさせてる」
    「じゃあ、隊長の居場所は……」
    「不明だ。……悪い」
     ディアッカが悔しそうに唇を噛むと、レイが冷静に返す。
    「不信感を抱いた時に、すぐ報告をしなかった俺たちにも非があります。今は協力をしてくれるだけで感謝します。俺らは今、ここでは部外者ですから」
    「そうですよ! 早くキラさんを探す為に、俺らも行きましょう」
     レイとシンの言葉に、ディアッカは苦笑して頷いた。
    「あぁ。お前たちには、本部のどこへも入れるIDカードを渡しておく。キラを絶対に見つけるぞ」
     イザークの手配で準備した特別製のIDカードを二人に手渡したディアッカの言葉に、二人は頷いて駆け出していた。



    「キラさん!!」
    「隊長!」
     キラが最後に監視カメラに映っていたのは研究棟に続く渡り廊下らしいと言う情報をディアッカから知らされた二人は、研究棟の薬品倉庫で両手を拘束されて床に倒れているキラを発見した。キラの髪は乱れており、頬には殴られた痕があった。隊服も乱れており、恐らく服の下にも痣はあるだろうと言う事が分かってしまった二人の怒りは、一瞬で頂点へと達する。
    「許せねぇ……!」
    「許す必要など無い。隊長を安全な場所に連れて行った後で、必ず報いは受けてもらう」
     レイは声だけは冷静に、キラの両手を拘束している縄を解きながらそう言った。キラは気を失っており、その細い身体はシンが抱き上げる。
    「キラさん……」
    「ミレニアムの医務室へ連れて行った方がいいだろう。ザフトでは信用ならない」
    「そうだな。一旦、ミレニアムに戻ろう」
     シンはそう言って倉庫から出ようとしたが、その時ふっとキラが目を開いた。気付いたシンが、声を掛ける。
    「キラさん!」
    「……シ、ン……? レイ、も……」
     キラは掠れた声で、シンとレイを見返した。二人の姿に、僅かに安堵したように息を吐く。
    「身体に何か異常はありますか、隊長」
     レイがそう聞いた直後だった。それに返答しようとしたキラは、目を見開いて両手で自身の口元を押さえて、「うぐっ」と嗚咽を漏らす。
    「キラさん、大丈夫ですか!?」
     シンが叫ぶと、キラはぶんぶんと首を振る。それからキラは、下ろして欲しいと言うように視線を下へと何度も動かす為、シンはそっとキラを床へと下ろした。キラは部屋の隅へと慌てて移動すると、「うっ……ぉえっ……」と、更に嘔吐く。
    「隊長!」
     レイが近付くと、涙目のキラは振り向いて手の平をレイへと向ける。近付かないで欲しいと言うように、二人を視線と手の動きで制止した。
    「っ……ぐ、ぅ……ん、ぐ……けほっ……。……駄目、来ないで……。僕、多分、何か……飲まされ、て……ぐっ」
     吐きたいのを我慢しているらしい事を、レイは察してしまう。室内を見回せば、キラが倒れていた付近に何かしらの空き瓶が転がっていた。シンは状況が分からないらしく、キラの様子におろおろと所在なさげに両手を胸の高さで動かしている。レイは少し考えてから、シンに言った。
    「シン、隊長を背後から押さえつけろ」
    「え?」
    「レイ……」
     レイの言葉に、キラはまた首を振るが、レイはそれを見ないふりをして、シンへの指示を続けた。
    「毒の類ならば、早めに吐かせた方がいい。隊長は耐えているらしいが、そんな必要は無いからな」
    「え……毒……? 吐かせるって……」
    「いいから押さえておいてくれ。暴れられても困る」
    「う、うん」
     シンがレイに言われた通り、背後からキラの脇の下に手を入れて、キラの身体を固定する。弱っている様子のキラが多少暴れたところで、シンの腕を振りほどく事は出来ない。
    「や、め……っ」
    「応急処置です。後で罰なら受けます」
     レイはキラの口の中へと、躊躇いなく指を入れた。無理矢理キラの口を開かせて、指で強く舌の奥を押す。
    「ぅ、ぐぇっ……ッ」
     レイの指は、無理矢理口を開かされているキラの唾液で濡れていく。キラはまだ抗っているのか、吐き出そうとしない。レイはシンへと更に指示を出した。
    「隊長の腹で両手を組み、そこから上に向かって胃を引き上げてくれ」
    「わ、分かった!」
     シンがキラの身体に腕を回して、ぐ。と、レイに言われた通りにキラの腹を押すと、キラは「げぼっ」と胃の中身を吐き出した。レイの手は未だにキラの口の中にあった為、レイの手もキラの吐物で汚れてしまう。長く飲食をしていない為、食物残差はほぼ無い。しかし、色は胃液のそれではなく、青みがかっている上に、食道か胃を傷付けられているのか、若干の血が混じっていた。キラは涙を流しながら、未だにいやいやと僅かに首を振るが、レイの指は舌を押し、シンの拳が内臓を引き上げる。
     二人からの刺激により、キラは出る物が胃液だけになるまで、その場で嘔吐を強要されたのだった。





     キラがふっと目を開くと、そこは見慣れたミレニアムの医務室だった。どうやらシンとレイに嘔吐を強要された後で、また気を失ってしまったらしい。
    「隊長!」
    「先生、隊長が目を開けました!」
     傍らにいたのは、ルナマリアとアグネスだった。涙目のアグネスが医師を呼び、慌ててキラの元へとやって来てバイタル測定などを行った。
    「……シン、と……レイ、は……?」
     キラが問えば、医師から血圧を測っている所だから黙るようにと強めに言われてしまう。しかし、それにはルナマリアが答えてくれる。
    「シンとレイなら、隊長をここに連れて戻って来た後で、隊長に毒を飲ませた輩を探し出す為に、ジュール隊に合流しました。私たちも行こうと思ったのですが、私たちまで行くと、コンパスからの圧が強くなり過ぎるからやめろってジュール隊長に言われて……」
    「本当は私だって、隊長に酷い事をした奴らを、ぶち殺しに行きたかったんですからね!」
     アグネスがぎゃんぎゃんと泣き叫ぶので、血圧計を外されたタイミングで、苦笑したキラはアグネスへと手を伸ばす。
    「……そんなこと、したら駄目だよ、アグネス……。気持ちだけ、もらっておくね。……ありがとう」
    「たいちょぉ……」
     本気で心配してくれていたらしいアグネスの涙を、キラの指先が拭う。アグネスはそんなキラの腕を掴んで、キラの手の平に頬擦りをした。
    「……隊長、綺麗なお顔も、身体の外も中も、いっぱい傷付けられたのに、なんで、怒らないんですか……」
     アグネスが涙目で、むすっとした顔で問う。ルナマリアもそれは思っていたらしく、アグネスの隣で頷いていた。キラはアグネスへ向けていた微笑みを消すと、悲しそうに目を伏せる。
    「……僕は、色んな人から恨まれるのが、当然だから……」
     戦争をしていた。
     自らが望んだ訳では無いとは言え、自分はその戦火の中で、多くの命を奪った。
     その中に、誰かの大切な相手がいたとしたら、それは名も顔も知らないその『誰か』の、恨みを買うのが当然で。
    「……僕が怒るとしたら、僕自身に、だけだよ……」
    「隊長……」
     キラは自分が恨まれることに慣れてしまっている。だから、自分に対して悪意を向けて来る相手に対して、怒りを抱く事は無い。
     でも。
    「……僕が……怒らなくても、君たちが、怒ってくれるから……大丈夫、だよ」
     キラはそう言って、ルナマリアとアグネスに笑いかけた。キラの笑みに、ルナマリアとアグネスは泣きそうな微笑みを返すのだった。




    「隊長に危害を加えた連中は、全員捕まえました!」
     一晩経ってから戻って来たシンとレイは、キラのいる医務室にやって来ると、開口一番にそう言った。キラの様子はルナマリアから聞いていたので、心配の言葉は一旦置いておいた。
    「ジュール隊長も静かにキレていたようなので、恐らく、結構酷い目に合わせてくれると思います」
     そんなイザークの様子が容易に思い浮かんだベッドの上のキラは、思わず苦笑する。
    「やり過ぎは駄目だよって、後でイザークに言っておくね……」
    「そんな必要無いですよ! 酷い目に合ったのは隊長なんですからね!」
    「シンの言う通りです。ザフト兵で無ければ、俺とシンで四肢を引き千切って、じわじわと嬲り殺しにしてやるものを」
     さらりと怖い事を言うレイに、キラは思わず声を荒げていた。
    「怖い怖い! いつものレイじゃないよ!?」
    「貴方をこんなにも傷付けられて、大人しく戻って来た事を褒めて欲しいくらいですが」
     いつもの冷静な顔で、淡々と言うが、内心はかなり怒っているらしいことが伺えて、キラはふるふると首を左右に振った。
    「ごめんね。怒るのなら、僕に怒って。君の、その……手だって、汚しちゃったし」
     キラが言えば、レイはそう言えばと言うように自分の手を見つめる。シンもあの時の事を思い出したように、レイの手とキラを見比べた。
    「あの程度、気になさらないでください。寧ろ、俺が無理矢理してしまったので、罰があれば受けます」
    「俺もです。隊長のお腹、思い切り押しちゃったので、痛かったんじゃないですか?」
     シンが心配そうにキラを見れば、キラは穏やかに笑んで、またも首を振った。
    「君たちに罰なんて無いよ。応急処置としては良かったって、先生も言ってたし」
     実際、飲まされた毒は致死量には至っていなかった。ただし、キラ限定で、だが。
     他の人だったら死んでいた可能性があるって聞いた時には、血の気が引いたよね。僕に若干の毒耐性があったから良かったものの、あの人たち、自分たちが使っている物の危険さをあまり分かっていないのは良くないよね。
     キラは内心でだけ、そう思っておく。この話をイザークが聞いたら、彼らに同じ毒を使うかもしれないが、それに関しては自分が口を出してはいけない気がする。と、キラは思った。
    「貴方の吐物で汚れるくらい、何ともありませんので、もし何かあればまた手伝います」
    「二度としないように努力するから、そんな真っ直ぐな目で言わないで、レイ」
     何故かキラキラとした何かを背負いながら言うレイに、キラは呆れ気味で返す。
    「あ! それなら、今度は俺が出来るように、レイに教わっておきますね!」
    「良い心構えだ、シン」
    「覚えなくていいよ! シンの手で吐くのも嫌だからね!」
     キラがそう言えば、シンとレイは視線を合わせてから口の端を上げた。
    「言いましたね、隊長」
    「へ?」
    「じゃあ、俺の手で吐かなくてもいいように、もっと色々と警戒してくださいね?」
    「うわぁ、墓穴ぅ……」
     キラが呟けば、シンとレイはキラのベッドの傍らへと、片膝をついて跪く。
    「隊長の為なら、この手を汚すことなんて気にしません」
    「俺もシンと同じです。実際にでも、比喩でも、いくらでも汚して見せましょう」
     二人の騎士のような誓いに、キラは困惑しながらも、嬉しいと思ってしまう事が申し訳なかった。
    「……ありがとう、二人とも。でも、僕はなるべくそうしたくない。君たちにそんなこと、させたくない。だから……」
     キラは二人に向かって頭を下げた。
    「頑張って、気を付けます」


     そのキラの言葉が実行されるのか否かは、その後のヤマト隊だけが知る。
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