ごはんを食べよう11 イソップの言葉に、イライが笑う。
「じゃあ、私のと交換しようよ。……ああでも、少し溶けちゃってるから……」
「交換しましょう」
食い気味に口にした言葉に、自分で驚く。
イライの方も、目をぱちぱちと瞬いている。
「イソップくん、変わったね」
「変わりましたか?」
「うん。イソップくん、人の手のついたもの苦手だと思ってた。忘れてたくらい、馴染んでたけど」
「それは……」
イソップは少し考えて言った。
「それはきっと、相手があなただから、だと思う」
「私?」
「はい」
イソップは頷いた。
箸で海老天をイライの鍋に移動させる。イライは少しのうどんと出汁を小鉢に入れて、その上に海老天を乗せてよこした。
箸の使い方にも、ずいぶん慣れた。それだけの時間、ここで過ごしている。
「僕は……イライのものだから、平気なんだと思う」
人が苦手で、社交が怖くて、そんな自分に手を差し伸べてくれたイライを好きだと思った。
イソップはイライに恋をしていて、だからその全てを許容できるのだと思う。
「そっか……照れちゃうね」
言って、イライが交換した海老天に口をつけたのを見て、イソップももらったうどんを箸でつまむ。
出汁の味がふわりと広がって、少し甘いような気がした。
衣がとろとろになった海老天が出汁と相まって美味しい。