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    kayou_sousaku

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    kayou_sousaku

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    ちょっとした気持ちのお話

    月碧ちゃんが入ってすぐ。かようちゃんのお気持ち。ーーーー

    「おーす…って、まだ誰もいないか」
    誰もいない部室に入るなり、脱力したように床に座り込んだ。
    気合い入れて早く来すぎちゃったなぁ。
    てか、
    「…月碧ちゃん、まだ来てないんだ」


    …全校ライブしたあの日の後、
    つい勢いで月碧ちゃんを部に入れちゃった。

    だって、あんなライブしといてスクールアイドルやんないなんて意味わかんないし。
    ………まぁダンスはちょっとイマイチだったかもだけど……

    そんなのどうでもいいぐらい、月碧ちゃんの歌はなんかヤバい。正直、私はあの子の歌をこれ以上聴いていたくない。

    月碧ちゃんが隣で歌うたびに、自分の自信がどんどんなくなっていく。努力ではどうにもならないことがあるんだって、直接言われてるようなもんだよあんなの。

    …とは言え、月碧ちゃんをそのまま野放しにするのも嫌だった。あんなライブやった後だし、そのままにしといてもどんどん月碧ちゃんのファンは増えると思う。そしたら私たちスクドルのファンも流れる可能性だってある…。
    それならいっそ、同じスクドルになってもらったらそんな心配もいらない。
    それに、私は月碧ちゃんが敵のまま勝てる気がしなかった。

    …本当にズルい人間だと思う。
    こんな私的で自分勝手な理由で月碧ちゃんを部に入れてしまった。

    あーあ、月碧ちゃんがもし、こんな私の本音を聞いたらどう思うのかな?そもそも本当はスクドルなんて興味もないし、嫌かもしれない。私に言わないだけで、本当はもう私の事なんて嫌いかもしれない。

    …嫌われても当然だとは思う。
    ライブの代理としてあんもちちゃんが連れてきたときだって、私はノリ気じゃなかったし。練習中だってずっと酷い態度を取ってたと思う。…私は別に月碧ちゃんが嫌いなわけじゃない。だけど、気に入らない。

    まるでああ歌えることが当然かのような態度も、なんの努力も知らなそうな態度も、私の事なんて相手にもしてないような態度も、

    …ぜんぶぜんぶ気に入らない。ムカつく。

    「あーーーーーーーー!!!!!」

    気がついたらその場で叫んでいた。どうしようもなく腹が立つから。…月碧ちゃんにではなく、こんな幼稚な自分にだ。
    でも私はこういう人間だし、今更この考え方はどうにかできるもんでもない。
    だから、解決方法はたったひとつ

    「…ぜったい月碧ちゃんより歌うまくなってやる…」

    ようやく床から立ち上がって膝のホコリをパンパンと払っていると、ドアが開いた。

    「おはようございます先輩。」
    「お!!あんもちちゃんおはよ〜」
    「……お、おはようございます…」
    「!……おは…よ…」

    思わず目を逸らしちゃった。
    気まずい空気がジリジリと流れ出す。

    さっきの聞かれてないよね…?
    …え、聞かれてないよね?????
    あーだめだめ!気持ち入れ替えなきゃ!!
    でも…月碧ちゃんを見てると集中できない!
    も〜なんなのよこの子!!!
    …私が入れたんだった………

    「おはよ〜あれ、みんなはやいね!」
    「わーっ!こゆきちゃんーーー!」

    タイミングよく現れたこゆきちゃんに助けを求めるように抱きついた。なんとなく察したのか、こゆきちゃんは私と月碧ちゃんあんもちちゃんの間に立ち、パンパンと手を鳴らす。

    「練習、はじめよう!私、新しいメニュー沢山考えてきたから!…かようちゃんはできるかなぁ…?」
    「できる!!やる!!」

    新しいメニュー!!これだ!!
    これで月碧ちゃんに分からせてやるんだ!!
    スクールアイドルの世界は厳しいってことも、……私がすごいってことも!!!

    私たちは早速こゆきちゃんの新メニューに取り組んだ。

    ーーー

    「ーーーー疲れたぁ!!」
    「お疲れ様。がんばったねかようちゃん。はい、これお水」
    「うへぇ…ありがとうこゆきちゃん…ラブだよ…」

    こゆきちゃんから水を受け取ると、勢いよく一気飲みした。

    新しいメニュー、結果は全然こなせなかった。
    声もあんまり出なくて全然上手く歌えないし、ダンスだって多分ぐらぐらしてた。
    …今日はすっごいやる気あったのになぁ。なのに、なんでこうなんだろ。
    歌では月碧ちゃんに勝てないし、ダンスではあんもちちゃんに勝てない。こゆきちゃんにアドバイスもらっても上手くいかない。

    …結局、私って何ができるの?
    3人にいろいろ教えてもらってばっかりで、本当に嫌になる。

    あれ、スクールアイドルってこんなに辛いものだっけ?
    …いや、そんなものだよね。
    だって、なりたいって思った時から何か辛いことばっかりだもん。
    でも、きっとその分のちのちデッカイハッピーが返ってくるって思ってる。
    思ってるけど…

    「いつ返ってくるんだよハッピー!!!」
    「え、何どうしたの!?ペットでも逃げちゃったの??」
    「あ、ごめんそうじゃなくて…」

    私は帰りの支度を済ませてこゆきちゃんと一緒に部室を出る。すると、あんもちちゃんと月碧ちゃんが待っていた。

    「あれ…帰ってなかったの…?」
    「はい、一緒に帰りましょう先輩」
    「う、うん…」

    月碧ちゃんの方をチラリと見ると、視線があった。
    …今日で分かったことがある。
    月碧ちゃんは私が思ってるよりアホだってこと。

    …うそ、いじわるすぎた。月碧ちゃんは天然だしただフワフワしてる子ってことが分かった。それに、歌への情熱だってちゃんとある。…それは分かってたけど。
    だから決めた。この子でも分かるぐらい偉大な先輩になってやるんだ。
    月碧ちゃんはそのうち気付くことになる。

    『かようせんぱいってお歌上手でダンスも上手ですごいスクールアイドルだなぁ…』
    ってね!!!

    うんうん。しっくりくる。私の頭の中ではもう言ってる。言ってる言ってる。

    「わぁ!?」

    考え事をしながら歩いてたら段差につっかかって勢いよく転んだ。

    「かようちゃん!?もう!気をつけてよぉ…」
    「えへぇ…ごめんごめん…」

    慌てて起き上がって前を見ると、月碧ちゃんが笑ってた。

    「…あんた何笑ってんのよ…」
    「えっ!あ、ご、ごめんなさい…」
    「あーもう許さない〜っ!許さないから!次月碧ちゃんがダンスで転んだら笑ってやる!」
    「ええと…それは…恥ずかしいです…でも頑張ります…!」
    「せいぜい転ばずに踊ることね!」
    「なんでそんな悪役みたいなのかようちゃん…。かようちゃんもこんなところで転ばないでよね?」
    「…うっ…これは油断しただけで…」
    「先輩、この間のお昼休みに」
    「うわーーーー!それこゆきちゃんに内緒って言ったじゃん!!!!」
    「…?あんもちちゃん、話していいよ…」
    「うわーーーー!やだやだやだ!」

    …やっぱり、スクールアイドルって辛いだけじゃないかも。明日も頑張ろう。まだ諦めるわけにはいかないよね。1番のスクールアイドルになるんだ。
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