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    オメガバース土銀
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    だって君のせい「俺さ、普通のΩに比べてヒートの周期が不安定であんま来ねぇ上にかなり軽めなんだよな〜。ヒートだからってなんかしようとかしなくてもいいから、今まで通り普通に過ごそうぜ」

    Ωである坂田銀時のヒートは他のΩに比べて軽い。彼はそう言った。

    俺はそう聞かされていた。
    たしかに、体調次第でホルモンバランスが崩れ周期が乱れたりするだなんて話は今までに聞いたことがある。体質的な問題でヒートの軽さや周期の乱れがあるのは別段おかしなことではない。それに、本人は嘘を言ってる風にも見えず。万事屋に住む子供達の態度を見る限り本当なのだと思っていた。


    俺達は事故的に番になった。

    初めて目を合わせた瞬間に、身体に走った衝撃がお互いを運命の番なのだと教えてくれた。屋根の上で斬り合いで己の血が沸騰する、その延長線上だけの事じゃない。荒くなる息と、温度を上げる身体に従ってそいつの腕を引っ張る。後ろで足をもつれさせながらも必死に俺の後ろを歩き、時々右だ左だなど言って来るのに従いどこかの玄関を跨いだ。

    そうして気付いた時には見慣れない部屋の畳に敷かれた少し薄い布団の上で、目の前には噛み跡だらけの血が滲む項が一つ。
    確か最後の記憶は夜だったはず。今は僅かに太陽が上り外に面した窓から漏れた光が、その綺麗な銀髪をキラキラと輝かせる。

    「ひ、じか・・・た」

    それは、いつものような人を煽るような物言いじゃない。
    歯型が強く残る血塗れで痛いはずの首を僅かに捻り、向けてきた顔は涙でぐちゃぐちゃで。弱々しく枯れた喉が俺の名前を呼んでいた。

    その後ヒートの事を説明されたとしてもやっぱり己の番が気になってしまうのは当たり前の事で。街中で会えば口喧嘩を交えるのはいつも通りに、その都度体調の事を伺ったりしたした。それ以外にも手土産片手に万事屋に訪ねたりもするようになったりもしていた。そうしていくうちに一緒になって外で呑むようになり、いつしか万事屋の手料理を食べさせてもらうようになり。お互いがバース性を抜きにしても好き合ってる事実を打ち解け合い俺達はヒート関係なく身体を繋げるまでの関係になっていた。

    そんなある日だった。
    見廻り途中に少しだけ顔が見れたらと思い立ち寄った万事屋。いつもなら、玄関を跨げば面倒くさそうな体を装いながらも必ず出迎えてくれていたあいつがなかなか姿を見せない。
    奥の部屋でまだ寝こけてんのか?
    自分の家のようにズカズカと廊下を進んで奥の部屋へと向かう。

    「万事屋、お前・・・っ!」

    遠慮なく開けた襖の先。噎せ返るほどのフェロモンを充満させたその部屋の真ん中には、万年敷きっぱなしの煎餅布団の上で顔を真っ赤にさせながら必死にヒートを耐えようとしている万事屋がいた。
    ヒートの間隔は不定期だが来ないわけではない。来たとしてもかなり軽いもので、なんだか熱っぽい気がしないこともない程度。それが二日程で治まるのだと万事屋は最初に言っていたはずだ。なのに、目の前の万事屋はどう見たって軽いヒートを起こしてるなんてもんじゃねぇ。

    「んっ、ひじか、たぁ・・・ごめっ、ぁ」

    右手には白い布を大切そうに握りしめ、ドロドロに溶けたその赤い瞳が俺の名前を呼んだ。

    その後、ありとあらゆる液体でぐしゃぐしゃになった布団の上で万事屋は掠れた声で話し始めた。

    ヒートが軽く間隔は不定期なのは本当のことで、体質が変わったのは俺と番になってかららしい。いつもなら熱っぽいなぁくらいのヒートが、身動きが取れないほど酷くなるし間隔はふた月に一度。二日程度で終わっていたはずなのに、なかなか熱が引かずに一週間も続いた。そんなことが二度、三度と続けばさすがに「あれ?これおかしくね?俺の身体おかしくね?!どうなってんのォ?!」と焦って病院に駆け込んだらしい。
    一通り検査を終え医者からは「番契約を結んだ後、Ωとしての体質の変化は良くあることですよ〜」だなんて軽く言われた。しかしここまでヒートが重くなるのほど体質が変わるのは大変珍しく「巣作りが満足にできい事へのストレスの可能性もあるねぇ〜。あ、巣作りってのは一種の求愛行動みたいだよ〜」とまで言われ恥ずかしさのあまり診察料を投げ捨てるように置いて走って帰ったらしい。
    自分からヒート関係なく今まで通りに過ごそうと言った手前、このことを自ら俺に切り出す事も出来ず。その時万事屋の手元にあったのは、たまたま俺が忘れて帰った隊服のスカーフのみ。たったそれだけでこれほどまでのヒートに今まで耐えてきたのだ。

    「ヒートが来そうだとか自分でわかるのか?」
    「わかるわかる。女の生理みたいにヒートが近いと俺、眠たくなっちゃうんだよなぁ」
    「そうなったらすぐ連絡しろ」

    そう約束を取り付けて二ヶ月後。緊急時も考慮してという言い訳を貼り付けながら万事屋に無理矢理持たせた携帯からそろそろヒートが来るとの連絡があった。携帯の向こうから聞こえて来る眠そうな声で「ひじかた、ひーときそう・・・」だなんて言われたもんだ。仕事を巻きで終わらせ洗濯をせずに自室に置きっぱなしにしておいた隊服と着流しを袋に詰め、万事屋へ向かった。

    「おら。これで巣作りできんだろ」
    「え、まじか・・・」

    出迎えてくれた万事屋はやっぱりどこか眠そうに、いつもより重たい目で俺の持ってきた服たちを凝視した。
    ヒート前のΩは、ヒートに備えて数日前から大量の睡眠時間を確保し体力を温存しようとする。らしい。その際に番のαのフェロモンが染み付いた衣服や私物で巣作りをすることで安心感が増し、質の良い睡眠が取れる。
    番になり、万事屋の体質が変わってしまった一件以降、読み漁ったΩの資料にそう書いてあった。
    こいつがヒートになっても俺は、仕事柄すぐに駆けつけてやれる約束はできねぇ。それはもちろん万事屋だって承知してくれてる。だからせめて少しでもヒートを和らげれたり、俺が駆けつけれるまでの時間稼ぎにでもなればという気持ちもあるが、一番は自分のフェロモンを纏った服たちで巣作りをする万事屋が見たかったという気持ちも少しだけあった。


    ​───────


    『ヒート来たっぽい』

    そう連絡があったのが午後二時半。どうしても外せない会議のせいで万事屋に向かうために屯所を出たのが午後六時。山崎の運転で万事屋前に降ろしてもらった瞬間からあいつの甘いフェロモンが外にまで漏れていた。

    「・・・チッ。おい山崎」
    「分かってます。長くても二日は戻れなくても良いように、副長のスケジュールは調節してますから」
    「電話してくんなよ」
    「しませんよ」

    つくずく仕事のできるやつだ。地味だけど。
    屯所に戻っていく山崎の車を背に階段を登っていく。ここまでフェロモンの香りがダダ漏れなのはどうしてだ。少しでもΩの性質が満足するように、巣作りの準備は万全に整えたはずだ。もしや万事屋自身に何かあったのか?急ぐ気持ちを隠しもせずに古びた階段を駆け登り、玄関の戸に手をかけた。
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