俺はタイミングが悪いらしい。
俺らしか来ない筈の屋上に梓が他のクラスの男といて、入り口で思わず足を止めた。
梓が丸くなり、人当たりが良くなったせいでここ最近こう言った事が増えた。
呼び出されたら俺に言えと言ってるのに、絶対に言って来なくて苛々する。
やましい事でもあるのか。
「付き合って欲しい」
その男は梓を真っ直ぐ見てそう言った。
梓は一瞬驚いた顔をして、少し照れたように目を逸らす。
「あー、ありがと…」
ありがとうって、あいつは本当に人を誤解させる言い方をする。俺の気持ちも知らないで。そんな断り方じゃ相手は肯定されたと勘違いする。それとも肯定なのか、苛々してその場に向かおうとした。
「でも俺、大事な奴いんだ…悪いな」
男はそっかと落胆して屋上から出て行った。俺はドアのとこにいたので自然とそいつとすれ違い、顔を見られた時に優越感を感じた。
「梓」
梓の鞄を取りに行って屋上に戻ると、ボーっと空を見上げる姿に声を掛けた。
「おう」
「帰るぞ」
「あ?帰んの?」
「帰る、お前も来い」
「俺の鞄は」
「持ってきた」
「準備いいな、つーか俺腹減った」
「何食いたい?ご馳走してやるよ」
「え、マジ!ラッキー!」
「梓」
「あ?」
「お前、可愛いな」
「は?なんだよ急に…」
「いつも思ってる」
肩に腕を回して梓を引き寄せた。
「はあ?元々いかれてたけど、更にイカレタか」
「今日は特別に優しく抱いてやる」
耳元で囁くと顔を真っ赤にして睨んできた。
「なっ、何でヤル気満々なんだよ」
「可愛くて突っ込みたくなった」
「アホ、やらせねえからな!触んなって、まだ学校…っ」
「学校じゃなきゃいいのか」
「本当てめえはどうしようもねえな…」
「早く帰ろうぜ」
俺の恋人は可愛い。