以心→→→←伝心「ハハッやられたね、恵」
家入の前に座り、押し黙る伏黒。家入の側に立った五条は愉快そうに言うと、頭に手を伸ばして四方に跳ねる黒髪をくしゃくしゃと撫でる。
ぎろりと睨みつけたところで効果があるわけもない。伏黒は大きな手を払い除けると吐息をこぼした。
一頻り師弟のやり取りを眺めていた家入が口を開く。
「この程度なら問題ないよ、すぐにでも治せる」
「待って硝子」
反転術式の使い手である家入の言葉にほっとしかけたのに、恩師兼担任教師がずいと入り込んでくる。家入と伏黒は同じような顔で五条を見た。何かまた言い始めたぞ、と。
「恵。単独任務だったとはいえ、今回の相手は格下だったはずだよ」
教師らしい、ごもっともな物言いで伏黒の精神を抉ってくる。
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