しくじった、そう思ったのは、会社の飲み会も佳境に入り、そろそろ次の店へ向かうかと部長が声を上げた頃だった。
会社の飲み会なんてかったるいことこの上ない。外面を貼り付けたまま、周りの人間に気を遣いながらお酌をして、勧められたものを断ることはできないから自分のペースはゆっくり。会社の王子様が酔っ払った、なんてことになったらなんとも面倒くさい。ワンナイトを狙う人間、弱みを握ろうとする人間。純粋に心配してくれる人もいるだろうが、そういった悪意をもって近づいてくる人間を躱すには、酔わないことしか方法がない。茅ヶ崎は特別酒に強いわけではないが、かといって弱いわけでもない。一人で好きに飲んでいれば少し思考がふわふわとしてくるぐらいで、ひどく酩酊したりその場で眠ってしまったりすることはない。いや、なかった。
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