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    秘みつ。

    @himi210

    @himi210 小説 / 毎日更新12:00〜21:00 / 凪茨右茨ジひジ▼感想質問お気軽に📩 http://bit.ly/3zs7fJw##ポイピクonly はpixiv未掲載ポイピク掲載のみの作品▼R18=18歳以下閲覧禁止▼##全年齢 for all ages▼連載一覧http://hi.mi210.com/ser▼連載後はpixivにまとめ掲載http://pixiv.me/mi2maru▼注意http://hi.mi210.com/guide▼フォロ限についてhttps://poipiku.com/19457/8988325.html

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    凪茨▼結婚した凪砂『神様すらも欺いて』
    リクエストありがとうございました

    ※リクエスト者限定先行公開完了:全体公開開始

    リク企画http://hi.mi210.com/text/anni32_2021

    ##凪茨
    ##全年齢

    神様すらも欺いて

     茨も結婚したら? となんの気無しに閣下は云った。泣きそうになる涙腺を殴って、こえを張る。
    「自分は一生独りでおります。血の呪いに巻き込みたくはないですからねえ」
    「茨の呪いは解けているんじゃない?」
    「そうでしょうか? 不幸しか知らなくて、もう感覚が麻痺しております」
    「茨に都合の良い人、連れてこようか」
     閣下は綺麗な顔で笑った。目を逸らした。
    「……自分、は、好きな、人がいるので」
    「いるんだ。誰?」
    「秘密です」
    「そう。教えてよ。気になるな」
    「云ってしまったら秘密じゃなくなってしまいますでしょう?」
     パーティーは続いて、喧騒が攪拌していく。美しい時間を引きずって、タキシードのかれはいつもみたいに俺のそばに立っている。
     永遠に繋がらない距離で。
    「……きっと茨なら、その人から愛をもらえるよ」
     それは無理なことだと云いたかった。
    「……その人、は、既婚者なので! 略奪愛になってしまいますな~~! アッハッハ! それに自分は独りが性に合っていますし。それから……」
     ぐい、とシャンパンのグラスを押し付けられて、くちを塞がれた。
    「私は茨の幸せを願っているよ」
     かみさまみたいに、美しく、それは、齎された。
     俺を捨てたくせに。
     いやちがう。そんなんじゃない。俺は一度だって閣下のものになったことはなかった。閣下に所有されなかった。だからそれは間違いだ。
     選ばれなかった。
     捉えられなかった。
     俺にはたった一人しかいないのに、閣下にはたくさんの一人なんだ。
     あーあ。
     どうしてこの人を好きになってしまったんだろう。
     どうして初恋は、実らないんだろう。
     努力したって、抗ったって、この人の隣にはもう、世間と契約した名前がある。
    「……ありがたきお言葉ですな! それだけで自分は天にも登る気持ちです! 閣下、新しい飲み物などはいかがでしょう? お持ちいたしますね、敬礼~~!」
     歩きながらシャンパンを飲み干す。
     うまく笑えているか、わからない。

     ***
     ***

     熱で倒れた茨を救急に運んで、茨の部屋に帰って来た。一時的な難聴になっているが、熱が下がれば問題ないらしい。スマホに文字を打って読ませて、薬を飲ませて、ベッドに寝かせた。
    「かっか、あ、だい、じょうぶ、です、から……かっか……」
     譫言。
     だめなくせに。
     知っているのに。
     知らないふりをしなくちゃいけない。
    「死ぬまで噤(つぐ)んでいようと思った」
     虚のくらやみに、こえは染渡る。
    「君は私を好きでしょう? 知ってるよ、泣いていたのも、知っていた」
     氷嚢を当てて、目を隠す。
    「君を幸せにできるのが私ならよかった。でも私は壊れているから。君の嫌う父は、私の根幹から離れていかないし、君が望む普通は何一つ持っていない。君を代替にしようとしている、それに気づいていない筈はないよね? 私はやめた方がいい、かしこい君は悟る筈なのに」
     手を触りたくなった。そんなことしたら知られてしまう気がして、握りしめる。
    「私が誰かと一緒になったら、君は誰かに愛される決心がつくでしょう、……それがいい、君には当たり前の、真っ当な、幸福が、いいんだ……君は愛されているから。愛されていいのに」
     海色は今ひかっているだろうか。わからない。たしかにちいさな呼吸を聞いて、息を吐く。
    「君の為に結婚したなんて云ったら、君は、なんて云うかな……わからないや。これが正しいかどうかわからないな……人間関係は、やっぱりまだ、難しい。私、君を傷つけたくなくて――私のわがままだけれど」
     くらやみにふたりぼっちで、本当は、もっと近づきたかった。
    「私は茨の幸せを願っているよ。……大好きだよ、愛しているよ、たった一人の、かわいいかわいい私の茨」
     シーツを撫でて、手が震えていることに気が付く。
    「本当だよ……」
     茨の呼吸が一定になっていた。きっと、もう、大丈夫。
    「おやすみ、私のかみさま」
     指先にキスをして、それを頬に触れさす。これが、永遠の証になればいいと、願ってやまない。
     君の隣から、私は離れた。

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    『神様すらも欺いて』


    (210409)
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