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    秘みつ。

    @himi210

    @himi210 小説 / 毎日更新12:00〜21:00 / 凪茨右茨ジひジ▼感想質問お気軽に📩 http://bit.ly/3zs7fJw##ポイピクonly はpixiv未掲載ポイピク掲載のみの作品▼R18=18歳以下閲覧禁止▼##全年齢 for all ages▼連載一覧http://hi.mi210.com/ser▼連載後はpixivにまとめ掲載http://pixiv.me/mi2maru▼注意http://hi.mi210.com/guide▼フォロ限についてhttps://poipiku.com/19457/8988325.html

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    凪茨▼凪砂くんが弓弦くんにばちばちするやつ、茨が泣く(泣かない)(矛盾)

    ##凪茨

    凪茨VS弓茨4「げ、弓弦」
    「おや、どこぞの駄犬が紛れ込んでいますね」
     エレベーターで弓弦と鉢合わせしてしまった。最悪。俺はわざとらしくため息を吐く。
    「一日が終わるのに、よりによって……」
    「おや奇遇ですね。わたくしも最悪を浄化するために屋上庭園にでも行こうかと思いました」
    「やめろ俺の思考を読むな」
     弓弦を蹴ろうと思ったら交わされて逆に蹴られる。ムカつく。バシバシしていたら、ガクンっ、と、エレベーターが停止した。
    「は?」
     停電。暗闇に残される。
    「これはこれは。坊っちゃまと同じ体験をしてしまいましたね」
    「……故障が多すぎないかこのエレベーター……」
     外と連絡をとり、復旧まで時間がかかることを知る。面倒なことになった。
     二人して隅に立って、はあとため息をつく。よりによってどうして弓弦なんかと……。
    「そういえば乱さまはお変わりなくいらっしゃいますか」
    「閣下? 相変わらず好調でありますよ。それが?」
     弓弦は少し考えて、言葉を選んだ。
    「茨はちゃんと自分の気持ちを伝えていますか」
    「きもち?」
    「愛してる、など」
    「なっ……!」
     体が熱くなる。そんなことばを弓弦がいうなんて思ってもみなかった。それ以前に、俺たちの関係を知られていたことに、変な汗が出る。隠してはいなかったけれど、直接いわれると、むずがゆい。
    「大切なものなんでしょう?」
    「……まあね」
     閣下は、俺の大切なもの。ずっとずっと欲しかった、生きる希望だった。やっと手に入れた。離したくはなかった。
    「乱さまは自覚しておられないと思いますが、不安に思ってらっしゃるんだと思いますよ」
    「……なんで?」
     弓弦は諭すようにいった。
    「あなた方は人間ではないので仕方のないことですが、大切なものを失ってしまうかもしれないという不安は、人を萎縮させます。ですから、ただの人間らしく、心情を吐露する習慣を作るといいですよ」
    「……ふうん……」
     好きっていって。
     閣下の濡れた太陽を思い出す。
     閣下も、不安なんていう感情を飼うことがあるんだろうか。俺のことを思って、不安になる――? そんな大それた感情を抱かせているなんて、そんなこと。
     閣下に対する感情。
     好きだっていう、不相応な感情。
     そう自覚させられて、許されていいものなのか、不安になる。
     暗澹たる孤独と喪失からのび縋る手は、もしかしたら、誰でもいいのかもしれない。
     そうならば、閣下も。
     俺でなくても。

     ***

     茨がエレベーターに閉じ込められたと聞いて、救出の階にトレーニング前の私たちEdenは向かった。道理で遅いわけだ。管理の人が来て、基盤を操作している。しばらくして、電子音と共に扉が開いた。
    「茨」
     出てきた茨と目が合う。海は濡れていて、それを隠すように、茨は走り出してしまった。
    「茨? どうしたんだろうね」
    「どっかいっちまいましたねぇ」
     私は何も考えられず、後から出てきた弓弦くんに――。
    「茨になにしたの」
    「凪砂くんっ、まって」
     気がついたら弓弦くんの胸ぐらを掴んでいた。かれはなにもいわないでいる。
    「なにもしておりません。ただ、ちゃんと自覚させただけです。大切なもののことについて」
     焦りと苛立ち。こんなもの知らなかったのに。
    「……茨を少しだって、君に、あげない」
     私は茨の後を追いかけた。

     ***

    「茨」
     トイレの奥の個室から、茨の気配がした。私はドアーの前に立って、こえをかける。
    「……かっか」
    「茨、開けて……、泣いてるの?」
     きっと今、綺麗な雫を茨ははらっている。
    「すぐ、……泣き止み、ますので」
    「いいよ、泣いていて、……開けて」
     少しの躊躇いの後、かちゃりとドアーが開いた。弱った茨を隠すように、個室の中に入る。
    「……大丈夫? どうして……」
    「じ、ぶんでも、混乱しています、」
    「……うん」
     抱きしめて、自分の匂いを擦り付ける。自分のものにする。本能が、茨をとって食う。
    「……閣下は、俺で、いいんですか……」
    「……茨がいい。……それは、愛する対象が、ということ?」
     こくりと、茨は頷いた。
    「俺のせいで、不安にさせていたら……、好きだって、……うまく、いえないです、俺」
    「……茨がへたくそなのは、しってる」
     茨の薔薇色を撫でる。艶やかな温度が香り立つ。
    「閣下に捨てられたら、って、閣下を見たら、そればかりが膨らんで、それで……」
     孤独と喪失が育っている。
    「……私も、茨の全てが欲しくて、閉じ込めて飼いたいって思うよ。茨が誰かの元に走っていってしまうんじゃないかって。二人して不安になっていたんだね。私は茨が好きで、茨は私が好き。シンプルな答え。ただ、それだけでいいよね」
     私の中の体温が上がって、沁みていく。人間を知らないけれど、人間の真似事をしていれば、いつかきっと、人間らしいふれあいに、至るのだろう。

    (220530)
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