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    Mrs. GREEN APPLEさんのナハトムジーク聞いてたら降ってきた妄想……の、書きたいシーンをざっくり書いて、時系列順にまとめました。

    たぶん本格的に書こうとしたら結構な長さになるし、何より自分の黒研観と盛大な解釈違いを起こして病むので書けねぇやつです!スケベもないしな!!(長い話ならすけべいれたい系文字書き←←)

    なので妄想だけここで供養!!

    ナハトムジーク妄想前提設定:高校一年からの三年間(短いときで数週間~長くて三年間)をタイムリープし続けている黒尾。時が巻き戻ってしまう条件は、おそらく『研磨がバレーをやめたとき』、もしくは『黒尾の引退が決まったとき』。ここまで七回失敗して、時が巻き戻っている。研磨に拒絶された記憶を鮮明に残したまま、黒尾は八回目の朝を迎える。

    ※※※


    『待てって!!』
    手首を掴みかけた掌は弾かれた。振り払われた、と一拍置いて知覚して――向けられた、研磨の冷たい眼差しに息を飲んだ。
    『おれはもう、クロとは    ……』
    何らかの言葉を紡ぐ研磨の声が、遠退いていく。聞き取れない。ただ、明確に拒絶されたのだということは理解した。
    「研ッ……」
    がばり、と頭を起こし――引き留めようと張り上げた己の声で、目を覚ました。嫌な汗が、つぅっと喉元を伝い落ちる。呼吸は荒く、心臓もバクバクと嫌な音を立てている。

    広がっていたその光景が、単なる夢――ではないと、もうよく解っている。これは、鉄朗の記憶であると同時に、この先、鉄朗自身が迎えるかもしれない未来だ。

    「勘弁してくれっての――」
    呟きながら、頭をかきむしる。
    窓の外に広がる空は澄み渡るような快晴で、なおさら絶望に突き落とされる。幾度となく迎えた最悪な朝。その味は、何度経験しても慣れないし、慣れたくもない。

    部屋の壁に掛けられたカレンダーは○○年○月。この夏を、鉄朗はもう○度も繰り返している。

    ※※※

    [黒尾高1晩秋。研磨が進路に迷っている描写。
    『高校、音駒じゃなくていいかなって、……いま、ちょっと思ってる』と研磨が言い出す。]

    『別におれじゃなくても大丈夫じゃない?……音駒にもいいセッター、いるでしょ』
    過去にも聞いた台詞だ。過去に聞いて、そのときはなにも答えられなかった。離れていく研磨の手のひらを掴むだけの勇気がなかった。悩んでしまった、研磨にまだバレーを押し付け続けることに。そしてその後の日々のなかで思い知った。バレーを辞めてしまった研磨との間にできてしまった、大きな距離をまざまざと見せ付けられて。バレーという競技が自分達をどれ程深く繋いでいたのかを否応なしに実感させられて。死ぬほど後悔した。


    もうあんな思いは二度としたくない。

    「俺はどんなセッターより研磨のがいい。研磨のトスがいい」
    研磨の顔から感情が消える。その視線にほんの少し怯む、でもここでハイわかりましたなんて引き下がれない。
    「こんなヤル気ないやつ、どう考えてもメーワクでしょ」
    「んなこと……」
    否定したいのに、言葉が続かない。逃がしたくなくて細い手首を掴む。どうしても手離せない、ここで研磨を手離したら、先へ進めない。
    「ね、クロ、離し――」
    「ッ三年でいい!――それが無理なら、俺が音駒にいる間だけでも」
    頼むから、と声を振り絞り懇願する。解っている。酷いことをしている。研磨の未来をこんなかたちで縛るなんて。それでも、手離せない。この先の未来に進みたい。研磨とのバレーを諦められない。

    研磨はやがて諦めたように「わかった」と、ぽつりと溢した。

    「音駒いく。そんであと三年だけ、続けてあげる――でも、おれはバレーはそこでおしまいにするから」
    それでいい?と聞く声に頷く。

    もしかしたら、研磨と一緒じゃなくても未来に進む手段はあるのかもしれない。研磨にバレーを強いなくてもいい未来が存在するかもしれない。でも――どうしても手離すことが出来なかった。研磨抜きに、明日を迎えられる気がしなかった。

    ※※※

    [高2。音駒を選ばせたことへの後悔。]

    「俺がしようとしてる事って、間違ってんのかなぁって考えたりさ。悩んじゃったり……柄にも無くして、落ち込んでんの」
    「ふーん」
    研磨は軽い調子で返す。まさかその悩みが自分のことなんて、露程も思ってないだろう。その声色は平淡で、あんまり興味もなさそうだ。
    研磨だって言ったところで多分信じないだろう。お前の未来の選択肢を俺が潰しました、なんて。

    音駒高以外を研磨が選べば、きっと研磨がバレーをしている未来はなくなる。何らかの心境の変化でもし研磨がバレーを続けたとしても、きっと、その手がトスを上げる相手は自分以外の誰かだ。そんなの絶対受け入れられないと思った。


    ※※※

    夢を見た。幼い頃の夢だ。

    『けんまと、ずっとバレーができますように!』

    家の近所にある小さな地蔵にそんな願い事をした。この地区のね、守り神なんだよ、という祖母の話を前夜に聞いて、いても立っても居られなくて、研磨を連れ立ってきた。

    『お地蔵さまに願い事って、効果あんの?』
    と研磨が後ろで訝しげな顔をしていて、
    『守り神なんだってばあちゃんが言ってた!!なんかさ、シュゴシンみたいだろ!』
    と答えると、一層ワケわかんないと言いたげな顔をしてこちらを見ていた。

    そりゃそうだよな、と今なら思う。地域の安全や安寧を願い祀られた地蔵だ。ひょっこり現れた小坊主にそんな願いを託されても荷が重いに違いない。なんなら、管轄外かもしれないのに。
    研磨の困惑顔も寧ろ当然の反応で、でも、そんなの気にもならなかった――マモリガミという響きを耳にして、安直に、願い事を捧げてみよう、と思った。

    そこだけを切り取れば、微笑ましいエピソードだ。無知で無垢で純粋な子供だった頃の、懐かしい想い出で終わるような類いの。


    「こういう形で――っていうんでもなかったんだけどな」
    ずっと、とは願ったけれど、と苦い気持ちを奥歯ですり潰して、ため息を吐く。
    ――別にその地蔵の力だとか、呪いだ、とか本気で考えている訳じゃない。でも。


    少なくとも、こんな運命は望んではいなかった。


    ※※※
    [高3秋。春高予選前。前回のタイムリープ時、予選で梟谷、戸美に敗けて敗退している。]
    「そんなに焦ってどうするの」
    冷めた声が妙に癪に障った。いつもなら気にもならない、その言葉の温度の低さにひどくイラついた。
    「は?焦ってねーし」
    「焦ってるじゃん。今のだって、別に指摘(い)う必要なかったと思うし――なにカリカリしてるのか知らないけど」
    「だから、焦ってなんか」
    「じゃあ、さっきの態度なんなの。あーゆーの、らしくないし、何がしたいのかわかん」
    「だから!焦ってねーっつってんだろ?!関係ぇねーだろーが、一々突っかかってくんな!!」
    勢いだった。つい、カッとして放った言葉だ。苛立ちのままに思い切り声をあらげ――その直後に後悔した。
    「……わかった」
    そう呟く研磨の顔から表情が消える。まるで見限るように、研磨は軽い踵を返すとさっさと立ち去ってしまった。

    「――あー…クソ」
    ひとり呟いて、頭を掻き毟る。全部研磨の言う通りだ。何一つ間違っていない。焦りがある。早くチームを強固なものにしなければ、と気持ちが逸るばかりに空回りしている。頭ではわかっていても、冷静さを保てない。このままでは、音駒は戸美に負けてしまう。前回通りの未来なら、夜久は怪我をして欠場だ。フルセットの末音駒は敗けて、冬を迎える前に全部終わってしまう。そして研磨は――。
    「……焦るっつの」
    独り言ちた声は重く、弱々しい。あまりに自身が情けなくて、でも、どうしていいかの妙案ひとつも浮かばなくて。鉄朗はただただ、その場で途方に暮れた。

    ※※※
    「あら、鉄君。研磨なら部屋よー」
    「あんがとー。おじゃましまーす」
    出迎えてくれた研磨の母親に軽く礼をいいながら、勝手知ったるなんとやらで、研磨の部屋に続く階段を上がっていく。

    もしかしたら研磨に出禁を言い渡されているかも、と密かに思いながら研磨の家を訪れたが、どうやら研磨からはなにも訊いていないようだった。研磨の部屋の扉を軽く二度ノックする。と、すぐ、
    「入れば?」
    という返事があった。ゆっくりと扉を開ける。
    中にいた研磨は、いつも通りテレビゲームに興じている。部屋に入ってきた鉄朗に目もくれず、視線はテレビに釘付けだ。なにも言わず、その傍らに腰掛ける。

    カチャカチャと忙しく動くコントローラーの操作音と、申し訳程度のボリュームまで絞られているテレビゲームのBGMだけが部屋の中で響いている。どう切り出すのが正解か解らず、言葉を探す。
    「なに」
    しばらく、無言の時間が続いたその後で、研磨が短くそう訊いた。
    「……悪かった」
    「ん」
    手短に詫びると研磨も小さく頷いて返す。そして、また、無言の時間が戻ってくる。でも、別に変な緊張感も焦りもなかった。二人の間には、よくあることだ。

    「――焦ってた。お前の言うとーり、図星だったわ」
    「何をイマサラ」
    「デスヨネー」
    小気味良く斬りかかられて、苦笑する。躊躇いなく切り捨てられるのが、いっそ、気持ちがいい。その勢いのまま、本音を吐露する。
    「気負ってたんだろーな。春高が見えてきてさ、あとチョイじゃん?」
    研磨は今度はなにも答えず、コントローラーを繰っている。
    「手ぇ伸ばしたら届くかも、って思って……なんか、こう肩に力入ってたんだろうな、とか、多分そーゆーコトだったんだろうな、と」
    出来るだけ俯瞰して、冷静に自分を省みる。勿論それだけじゃない――未来で、もう同じ轍は踏みたくないと言う気持ちも強い。けれど、それをうまく説明しようがないし、そんな非現実的なこと、研磨は信じないだろうと思ったから、胸の裡に留めておく。

    「………」
    しばらくゲームを続けていた研磨が、ひとつ溜め息を吐いて、そのままゲームを電源から落とす。
    「…いーのか?」
    「べつに、暇潰しだし」
    無造作にコントローラーを傍らに転がし、研磨はチラリと鉄朗の方に視線を寄越す。ようやくだ。
    「焦ったって、意味なくない?」
    「だな」
    「仲間追い込んでどうするの。主将が聞いて呆れる」
    「……」
    「メーワクかけたんだから、明日、夜久くんと海くんにちゃんと謝って」
    「デスネ」
    「おれにこんなこと言わせないで。こーゆーの、おれ、きらいだし、すごい面倒」
    「……ハイ」
    嫌そうな顔でつらつらと続ける研磨の言葉が的確にメンタルを抉ってくる。でも何の反論もできない。
    「それと…」
    口を開く研磨に、次は何を言われるのか、と一瞬身構える。と、肩あたりに軽い衝撃を受けた。研磨が頭を寄せるように寄りかかって――そして言った。

    「なに心配してんのか知らないけど……べつに、だいじょうぶじゃない?」
    おれらもそれなりにレベル上げしてきんたんだし。と――溢すようにささやいた研磨の言葉には角がない。


    ※※※
    [高3、冬。年末の深夜、早朝が近い時刻。]

    川の水は水流も少なく、せせらぐ音もしなかった。風もほとんどない。空が明らみはじめている。でも人の気配はない。その分だけ、研磨の微かな呼吸音が耳に届く。

    「一回聞いときたかったんだけど」
    研磨が訊ねる声はどこまでも穏やかで、透き通っている。
    「クロは、なんでおれに執着するの」
    ――執着。確かに、その言い方でおおよそ間違いはないのかもしれない。選ぶことなく、率直に投げ掛けてくる研磨の言葉が、さくりと胸に突き立つ。
    「そーなぁ」
    茶化すことも適当に受け流すこともしなかった。面倒くさがりのこの男が。率直に、なんの遠回りもなく訊いてきた。誠心誠意の答えを返してやらなけらばいけないような気がして、言葉を探す。当たり前に見つからない。砂漠ほどの砂のなかから砂金の粒を探すような、そんな途方もなさだった。そもそも、簡単に言葉に出来るような、明確な理由があれば、疾うに研磨に告げることが出来ていた。

    「――おれじゃなくてよかったのに、って。おれは今も思ってる。クロとバレーするのはおれじゃない誰かでもよかったって。音駒の正セッターは多分おれじゃなくてもよかった」
    卑屈でもなんでもなく、研磨は心からそう思っているのだろう。声色からそれが解る。そもそも、そんな事を口にするようなヤツじゃない。自分の実力や能力を俯瞰して、多分、心からそう考えている。
    研磨が続ける。
    「音駒に来たことに、別に後悔してない。今のバレー部だってきらいじゃないし。でも、やっぱりわかんない」
    一度言葉を切って、そして、今一度、訊ねる。
    「なんで、おれだったの」
    「……研磨とじゃなきゃ、全部、無理だったからだよ」

    なんで研磨だったのか、説明なんてできない。ただ無理だった。幾度も試してみて、悟った。研磨とのバレーが手のひらから溢れ落ちる度に、挫折を味わって、時が巻き戻った。
    研磨のまっすぐな眼差しを見つめ返す。
    「必要だから、じゃ、ダメか?」
    研磨はしばらく無言のまま、じっとこちらを見つめていた。が、はぁ、と大きくため息を吐くと、ついと目をそらした。
    「ワケわかんない。ほんと、身勝手」
    「ソウネ」
    言われる方は確かにそう思うことだろう。意味の解らない理屈でバレーを続けさせられて。研磨からしたら苦行を強いられたも同然だ。身勝手、という言葉に何にも言い返すなんて出来るはずもない。

    「そーゆートコほんと腹立つけど元からだし、今に始まったことじゃないし」
    「……」
    容赦ない言葉に口をつぐむ。そんな事無いだろうと言いたい気持ちはある、が、昔のことを思い返せば、とてもそれを口にする勇気はない。覚えるの早い、筋がいい、とかセッターはあんまり動かなくていいポジションだ、とか――こうなる(繰り返す)前から調子のいいことをペラペラ喋っては、研磨を巻き込み、引き摺りこんで。これが自分勝手でないなら何なのか。

    呆れたような目線を向けていた研磨が、徐に立ち上がる。

    「いいよ」
    「ん?」
    「クロがおれじゃなきゃダメっていうならいいよ――最後まで付き合っても」
    しょうがない。と言いたげな口ぶりで、諦めたように研磨が言う。

    ※※※

    [ゴミ捨て場の決戦前]

    もう二度と時が巻き戻らないことを、ずっと望んでいた。

    《ずっと研磨と一緒にバレーができますように》
    幼い頃、そんな願い事をしたばっかりに、こうなってしまったと思っていた。


    「今日がさぁ――多分、人生で最良の日だわ」
    「まだ、たかだか18年じゃん」
    「いやぁ、体感五十年よ」
    「五十年って……おっさんじゃん」
    「ちょっと研磨君、情緒ー」
    軽口を言い合いながら、コートサイドに立ち、深呼吸を二度、三度と繰り返す。

    ようやく、ここに立てた。研磨と一緒に。50年、は流石に言い過ぎで、繰り返したのなんて精々数年くらいのものだ。それでも、永遠にも思えるような時間だった。出口もなく、彷徨い歩くような、暗く永い時間だった。

    いつも、研磨が道標だった。研磨と共にある未来を、導に今日まで歩いてきた。

    もし、今日のこの日がまた巻き戻って、全部無かったことになってしまったとしても。自分の目指すべきゴールが、今日、この試合じゃなかったとしても、もう構わなかった。自分の記憶のなかに、一度、研磨とこの時間を過ごせたという事実さえあれば。どうなろうと構わない。どんな過去だって、未来だって、受け入れられる。そんな気がする。

    「おれは、今日が最良だと困るんだけど」
    「んぁ?」
    「べつに今日でジンセイ終わんないでしょ。まだまだ先は永いんだし」
    ただ、と、言って言葉を切った研磨の横顔が、ちょっと綻ぶ。何となく、人の悪い笑みをしている。
    「まあ、愉しいとイイよね、とは思うけど」
    きらりと瞳が光る。まるで獲物を見据えるように。その視線の先にはトーナメント表がある。烏野、という校名を見つめ、小さく下を舐めずる研磨。その横顔を眺める。

    冷静で、分析力が高くて、時々敵味方関係なしに容赦なくて、そういうところに底意地の悪さが見えて、それがおかしかったりして――何だかんだ 付き合いがよくて、不器用なりに優しかったりもして、その優しさが時に胸に沁みたりして。
    判りにくくも深い愛情を惜しみ無く注ぐものだから、気づけなくて、気づくのはずっと後になってからだったりして。


    『あと三年だけ、続けてあげる――』
    『いいよ――最後まで付き合っても。』

    クロのために。研磨の言葉の先にあったものが、そっと一片、胸におちる。そこに集約する。


    何て判りづらくも、分かりやすい愛情だろうか。と――込み上げる、形容しがたい感情を噛み締める。

    コイツが、こういう奴だったから、こういう相棒だったから、ずっと傍に置いておきたいと思ったのだ。研磨のこういうところが、狂おしく愛しい。

    報いたいし、返したいし――でも何より、最後の時間を噛み締めたい。丁寧に、大事に、深く刻み付けるように。


    その肩をそっと叩く。

    「時間だな」
    「ん」
    「行くか」
    ゆっくりとコートへと向かう。高揚と切なさと、ずっと研磨から与えられてきた愛情とで、胸中は犇めいていて。


    いまなら、何だってできる気がした。

    ※※※

    [断片的な試合の描写]

    研磨とのバレーが終わった。研磨が『楽しい』と呟いた、それを聞いた瞬間頭が真っ白になった。

    ようやく、この場所に立てた。研磨とこの瞬間に辿り着くために、生きてきたのだ、と根拠もなく思った。
    ――人生最高の瞬間。この瞬間をきっと一生忘れない。文字通り、研磨とのバレーの集大成だった。嬉しくて、切なくて、愛おしくて仕方ない。


    『おれに、バレーボール教えてくれてありがとう』

    あの日以来、時が巻き戻ることは二度となかった。

    ※※※
    [エピローグ。現在時間軸。]

    タイムリープ、という言葉を知ったのは、随分後になってのコトだった。あの日々が、――長く苦しく、間違いだらけで。でも愛おしかったあの日々が脳裡に甦る。もう、二度と戻ることのできない。戻りたくない、でもきっと無くてはここまで来られなかった。


    「俺、昔さぁ……何回もタイムリープしたんだわ」
    「へぇ。世界救ったとか?」
    ふっ、と笑みを溢して、揶揄い口調で研磨が訊く。
    「んにゃ?ずっとバレーしてた」
    「ふふ、どんだけ好きなの」
    「好きですケドぉ?悪い?」
    「んーん、わるくない」

    「好きだよ」
    何度も繰り返してしまう位。何度も恋い焦がれてしまう位。研磨とのバレーを愛していた。

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    ※※※


    『待てって!!』
    手首を掴みかけた掌は弾かれた。振り払われた、と一拍置いて知覚して――向けられた、研磨の冷たい眼差しに息を飲んだ。
    『おれはもう、クロとは    ……』
    何らかの言葉を紡ぐ研磨の声が、遠退いていく。聞き取れない。ただ、明確に拒絶されたのだということは理解した。
    「研ッ……」
    がばり、と頭を起こし――引き留めようと張り上げた己の声で、目を覚ました。嫌な汗が、つぅっと喉元を伝い落ちる。呼吸は荒く、心臓もバクバクと嫌な音を立てている。
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