君への、一歩 先日、藤原愁に『週末、沙絵のためにテーマパークへ行こう』と誘われた山之内遼平は、待ち合わせ場所のパーク最寄駅に着いた。
改札を抜け駅の外に出ると、目の前の空間はすでにパークのキャラクター達で溢れていてとてもカラフルだった。少し浮き足立つ気持ちを抑えつつ、キャラクターの中に紛れているであろう人物を探し始めた。
右から左に向かってぐるりと目を巡らせると、何個目かのバス停の庇の端に、その姿はあった。
「愁くーん!」
「やあ」
文庫本を閉じ右手を上げた愁の姿に、遼平は目を丸くした。
「アレ⁈」
愁だけ、だったからだ。
「沙絵ちゃんは?」
丸くした目のまま聞くと
「今日は沙絵は来ないよ」
どうして?という顔をされた。
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