君のいる日常に生かされている「ナナミン、お帰り! 出張お疲れさまー」
玄関のドアから飛び出してきたのは出会った頃より二回りは大きくなった、年下のパートナー。
「ただいま。お土産の松前漬けです」
「おわー、数の子いっぱいのやつだ。半分冷凍しとこ!」
「試食はとても美味しかった。日本酒に合いそうです」
「日本酒!イイネ!」
「残念ながら、時間がなくて日本酒は買えなかった」
「えー」
声とリアクションの落差にクスクスと笑いながら、七海は悠仁の肩に手を置いた。
「後で買いに行きましょう」
悠仁は天井に向けていた顔をバッと七海に向け
「応!」
ウキウキとお土産を手にキッチンへ向かった。
そんな背中を見送りつつ、七海は着替えのために寝室へ足を向けた。スーツをハンガーにかけ、揃いで買った薄手のハーフパンツを履いたタイミングで、悠仁が部屋に入ってきた。
「ご飯あと焼くだけだけど、先に風呂にする?」
七海は一瞬考えて
「ご飯、お風呂、虎杖君の順でお願いします」
と、引き出しからTシャツを取り出し袖を通しながら言った。
「ご飯お風呂虎杖君ね! りょう――んんんッ???」
悠仁は確認のため、脳内で七海の言葉を再生した。
「え、俺、今でもいいけど 今すぐOKだけど!!」
「いいえ。久しぶりの逢瀬が腹の虫鳴らしながらなんて嫌ですよ」
「ソウダネー」
がっつきすぎた、と苦笑いで頭を掻く悠仁に、さらに七海は付け加える。
「それに、私は好きなものは最後に取っておくタイプなので」
七海は悠仁の頬に両手を添えて、短く唇を合わせた。
「それで、夕飯のメニューは?」
「……牛肉ステーキのガリバタ丼」
「ガーリックバター……」
「久しぶりだからさ、体力いるっしょ?」
得意げに笑う悠仁に、七海は思わず吹き出す。
「そうですね。仕上げ手伝います」
「オネシャス!」
久々の賑やかな日常に、七海に溜まっていた疲れはどこかに吹き飛んだ。
おわり