ムルヒス『酒』 次の目的地近くまでバスを進めたのはいいが、肝心の案内人の準備がまだ完了出来ていないとの連絡が入ったそう。
呼び出しておいて今度は連絡があるまで待機なんて良いご身分だな、と聞いてるこちらが生きた心地のしない重々しい独り言を呟いたヴェルギリウスは、必死で視線を外していた囚人たちへ顔を向ける。
「さて、聞こえていた通り、しばらくお預けを食らうことになった」
「…連絡が来るまでバスで待機するように。と言いたいところだが、ほんの数十分で連絡が来るようにも見えなかった」
なので、とわざと言葉を切ったヴェルギリウスは少しだけ口角を持ち上げる。一部の囚人が反射的に姿勢を正した。
「今日一日はダラダラと怠けていても特別に見逃しましょう」
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