ホロウ・シェイプ「――王馬! ……居るか!?」
パタパタと足早なつっかけの音が、木材の床を通じて室内に響く。古いインクと紙の匂いが漂う中を、百田は急ぐように抜けていく。彼の周囲には幾つもの古めかしく仰々しい本棚が立ち並び、まるで迷路のようだった。その一角、光が零れる場所に出ると、百田は一度その歩みを止めた。
開けたその場所には、壁一面、二階まで突き抜けるような、ゴシック様式の大きな尖頭窓が取り付けられていた。採光の機能を十分に果たしており、同時にこの空間の印象を決定付けていた。光の先には木製の机と椅子が並べられており、推測するまでもなく用途は読み取れた。
「……。図書館、でいいんだよな、これ」
ただ、利用する人の気配は、見当たらなかった。
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