極秘資料:蘆屋道満の取扱説明書極秘資料
蘆屋道満の取扱説明書
作:蘆屋道満
拙僧からマイマスターへ。拙僧の取り扱いについて気を付けてほしいこと10条
このたび、これを記すことにいたしました。まず1つ目……(以下延々と注意事項が続く)
『1. 拙僧の言うことをすべて鵜呑みにしない』
2. 拙僧を信用しすぎない
3. 拙僧にすべてを任せようとしない
4.拙僧の行動を疑わない
5. 拙僧が何かしようとすると邪魔しない
6. 拙僧の行動に疑問を持たない
7. 拙僧に対して嘘や隠し事をしない
8. 拙僧のことを常に第一に考える
9. 拙僧を裏切らない
10. 上記9項目をすべて守ること 1〜5までは理解できるでしょうが6〜8は少々難しいかもしれませんな?しかし、これを守らねば拙僧の身に危険が及ぶ可能性がございますゆえご了承くださいませ。
さて、本題に入りましょうか。
まず、最初に断っておきますが拙僧がマイマスターのお側を離れることはありえませぬ故、拙僧の身を案じる必要など微塵もありませんぞ!……失礼いたしました。話を戻しましょう。
ではまず、初めに我が怨敵安倍晴明についてお話しいたします。
そもそも、拙僧は平安の時代よりずっとあの男を追っておりました。それはなぜか?答えは単純明快。あの男が拙僧にとって最も憎むべき存在だからでございます。
しかし、なぜそう思うのか疑問に思われたでしょう。そこで次は拙僧と安倍晴明の関係について語らせていただきたく思います。安倍晴明とはどのような人物だったかご存知でしょうか?その知名度の高さゆえに、マスターは「陰陽師」としてのイメージをお持ちになると思います。しかし、実際のところ彼は陰陽師という役職には就いておりませんでした。
陰陽寮なる組織を作り、そこに所属していたものの陰陽師を名乗ることはなく、ただひたすら呪符の研究に没頭していたのです。そして、その研究の成果こそが後世まで残る数々の術式を生みだしたわけですな。
それならば、陰陽師ではなく呪術者として名を残したほうがよかったのではないかと、拙僧は常々思っておりました。
しかし、奴はそのように名を残そうとせず、あくまで呪術者であることを否定してきました。それがどうにも気に食わなくて仕方がないのです。……話が逸れてしまいましたな。申し訳ありませぬ。
とにかく、拙僧はあの男のことが大嫌いなのです。
次に蘆屋道満について説明させていただきます。拙僧はかつて蘆屋道満と名乗り、とある寺にて法師をしておりました。その時、安倍晴明と邂逅を果たしました。最初は互いに無視しておりましたが、ある時を境に拙僧らはよく話すようになりました。その理由は実に簡単。拙僧らの目的は同じだったからに他なりませぬ。拙僧らは呪いを用いて人々を不幸にする輩を探しておりました。つまり、悪鬼悪霊の類を滅することこそ我らの目的であり、それ以外のことには興味がなかったのです。
そのため、拙僧らは意気投合し共に行動するようになりました。
その後、拙僧らは(中略)
(ここから先は筆跡が乱れていて読めなくなっている)
……拙僧はもう我慢できませぬ。マスターの側にいる限り必ずや安倍晴明との再会を果たすことになるでしょう。そのとき、拙僧が冷静さを保てる自信がありませぬ。今のうちにこの手紙を残しておかねばならぬと思い至った次第でございます。
以上が拙僧と安倍晴明の関係にござりまする。何か質問等あれば遠慮なく申してくだされば幸いでございます。
最後に一言だけ言わせていただきます。拙僧はいついかなる時でもマスターの味方でございますれば。たとえ、マスターが拙僧を裏切ったとしても、それは変わりませぬ。……ああ、言い忘れるところでした。拙僧はしばらく姿を消すことになりましょうが心配はいりませぬ。すぐにまた会えるでしょう。それまでどうかお元気でいてくださいませ。
追伸:マスターのことは決して裏切りませぬ。
蘆屋道満