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    mct_ichi

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    mct_ichi

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    本丸3周年!審神者就3周年のお話を書いてみました。
    先日の「RT達成で普段と真逆の作風で書く」のお題を兼ねてみました。
    いろんな意味で普段と逆というか、普段やらないことをやってみましたけど、たぶん本人しか気付かない。

    自己投影型夢小説?
    完全にうちの本丸の話になります。出てくる審神者がイコール私。
    完全にうちの個体の子たちです。
    朝のエピソードそのまま書きました。
    出てくるのは笹貫と長谷部です。

    本丸3周年記念日ガラッと言葉もなく開けられた襖に長谷部は視線をやる。そこには若干いつもよりも目が据わった笹貫が立っている。

    「呼ばれてる。」
    「…呼ばれ…ああ。」

    相変わらず言葉の足りていない笹貫の言葉を汲み取り、壁にかかっているカレンダーを見て長谷部は頷く。そういえば昨日近侍を命じられなかったな、と思い出したのは今。多分に主に似て記念日というものにさして興味がないのである。
    本を置いて立ち上がれば「あのさぁ、聞いてよ。」馴れ馴れしく肩に肘を置かれた。

    「気安い。」
    「同じ本丸の仲間なんだからそう言わないでよ。」

    長谷部の拒絶などどこ吹く風で男は続ける。

    「今日ってこの本丸が出来て3年の記念日なんだろ?」
    「そうだな。」

    軽く笹貫の手を払って歩き出せば、彼は後ろからついてくる。どころか、軽く肩を組むような格好で話しかけてくるではないか。

    「そう聞いてたから、オレにとって初めてのこの本丸の記念日お祝いしようって思ってこっちに戻ってくるの待ってたのにさぁ。お祝い言ったオレに、あの人なんて言ったと思う?」
    「知らん。興味がない。」
    「第一声『違う』だって。失敗したって言われるより傷ついた。」
    「…………」

    就任記念日の前に主の誕生日があったことは忘れているのか?と疑問に感じつつ横目で笹貫を見れば、明らかに不満そうだ。話を聞けば「違う。」の次には「長谷部は!?」と叫ばれたらしい。
    確かに、今まで祝い事となったら自分が一番に呼ばれて挨拶をしていたのだから、今回はイレギャラーな出来事であったのだろう。多分、主にとっても予定外のことだったのだ。長谷部が待っていると思って帰ってきた自室にこの男が待ち構えていた。それはそれは驚いたのだと想像に難くない。
    しかも彼は常にこの距離感だ。壁ドンとまではいかなくても、かなりの近距離でなにか言われた半分寝ているような頭の主がパニックに陥っただろうことも想像に難くない。

    「一番はへし切長谷部って決まってる?」
    「いや。しかし、今まではずっとそうだった。」
    「それ、この本丸のルールってやつ?」
    「違うと言っているだろうが。」
    「なら、オレが一番でなんの問題があるんだ?」

    そんなことは主に聞け、と言いたいのを飲み込む。多分ロクな会話もなく「長谷部を連れてきて」とでも命じられ文句たらたらな状態でここまできたのだろうから、下手をすると嫌味を言ったと受け取られかねない。

    「名前は呼んでくれたけど、膝から崩れ落ちてたしさぁ。よっぽどそこにいたのがあんたじゃないのがショックだったみたいだ。」
    「ほぅ?」

    最近あまりお呼びがかからないのでまた新しい沼とかいうものにどっぷり浸かっているものだとばかり思っていたのだが、まだまだ自分の地位は安泰なようだ。それはそうだ、と理解はしているが、こうして他の刀から聞くとなると実感が湧いてくる。
    心の奥から湧いてきた感情に正直に表情を緩めれば、笹貫はじとっと目を細めた。

    「…今、凄い悪い顔してるの、気付いてる?」
    「そうか?」

    自分の顔を撫でてみるが、いまいちわからない。ただ、機嫌がいいのは確かだ。

    「そんな顔、あの人の前でもするのか?」
    「…さあ。」
    「それって、内緒ってヤツ? それとも。」
    「例え俺が貴様の言う悪い顔をしたところで、主の俺に対する評価は変わらんぞ。」

    それどころか、喜ぶ可能性まである。でも、そんなことを教えてやるつもりはない。自分で気付いていけばいい話だ。彼もこの本丸で長く過ごすことになるのだろうから、今よりも主について理解を深めることは可能だ。
    何せ今の主のお気に入りは明らかにこの男で、へし切長谷部の物語を綴ることは激減している。と言っても思い出したように記念日には何かしら自分と『あの主』の話を書き続けているのだから、飽きたわけではないのだと思う。
    それに、なにも今現在表に出てくるものとしての一番ではなくても、主がへし切長谷部を愛していることなど自明だ。それは変わらないだろうと思えるのだから、自分もだいぶ変わったものだと思ってそっと胸に手を当てる。

    「…そっか。」
    「ああ。」
    「何日か前に『記念日は長谷部に近侍してもらわなきゃ』とか言ってたのに、オレを近侍にしたままあっちに帰っちゃうから…なんだやっぱりオレに一番にお祝いさせてくれるんだ、って思ったの、とんだぬか喜びってやつじゃないか。」

    あの忘れっぽい主に何を期待しているんだ、と思いはするが、わざわざ助言などくれてやるいわれもない。長谷部は黙って主のいる場所へと足を進める。
    かなり大股速足で歩いているのに、隣の男はピタリと歩調を合わせてついてくる。どこまで一緒に来るのか、と思って目線だけやれば、視線の合った笹貫に薄い笑みを浮かべた顔で見返された。
    それにしても、近い。
    先ほどから耳やら首筋に喋る息を吹きかけられてゾワゾワする。
    やめろ、と何度頭を押しても肩に顎を乗せてくる。主にもこの距離で話しかけている図をしばしば見かけるが、この様子を見るにあの人だけが特別というわけでもないらしい。
    この笹貫という男がここにきてからほぼ5か月経つが、未だによくわからない。主を独占したいわけでもなければ、興味がないというわけでもない。むしろ「共有ってのは?」などと戯言を言ってくる始末だ。全く意味が分からない。今までこの本丸にその感覚で主に接していた男士はいない。どちらかといえば興味のない男士の方が多いだろう。
    なのに、いわゆる色恋のような雰囲気で共有などと言われても不愉快なだけだ。長谷部も、主のお気に入りである一文字則宗も南泉一文字も、明石国行や千代金丸、大般若長光などもこの本丸の主としての親愛の情はあれど、それだけだ。

    「呼びに来る途中、一文字のご隠居に会ってさ『おお、お前さんどうしたんだその顔は』なんて言ってくるから事情話したら馬鹿笑いされて。」

    あの男ならするだろうな、と思って頷く。

    「違うって言われたら嫌じゃないのか聞いたら『僕は主にそういう意味での興味はないからなぁ』とかニヤニヤしてたし、ホントなんなんだ。」

    なんなんだ、というセリフなら、この本丸のほぼ全刀が貴様に向けて言いたい言葉だが?と心の中で突っ込んで、長谷部は主の部屋を開ける。

    「お待たせしました。主。」

    やっと来た、という顔で見てきた主が、長谷部の肩に視線をやって複雑そうな顔をする。離れろ、ともう一度頭を押すが、例のハンドサインを見せた笹貫はその姿勢のまま離れようとしない。

    「これ、なんのサービス?私、そこは別に。」

    ああ、これ以上言ったら問題あるか、と口を閉じた主が笹貫を見て、それから長谷部を見てくる。

    「おめでとうございます。」

    用意していた言葉を口にすれば、主が笑顔になる。そして横からは、なんとも不満気に鼻を鳴らす音がした。

    「随分とオレの時と態度違わない?」
    「違いません。笹貫にも、お祝いしてくれてありがとうって思ってます。」
    「違うって言ったくせに。」
    「だって、本当に違ったから。てっきり最初にお迎えしてくれるのは長谷部だと思ってたんです。蛍背負った笹貫がいるだなんて思ってなかった。」
    「…嫌だったんだ?へぇ?」

    俺を挟んで痴話喧嘩をしないでくれ、と無表情になる長谷部の肩を顎置きにしたままの笹貫は続ける。

    「嫌だ。長谷部がいい。」
    「…ヒド…」
    「主。もう一度この男にこの本丸のことについて話してやった方が良いのではないですか?例えば――」
    「でもさ、状況ってのは刻々と変化してくもんだ。昨日まではそうであっても、今日もそうであるとは限らない。」

    だろ?と顔を覗き込んでくる笹貫を一瞥して、長谷部は審神者に向き直る。

    「それはそれとして、主。猫の審神者殿とお約束した件はどうなっていらっしゃいますか?」

    にこ、と笑いかければ主の顔が引き攣る。

    「書いてます。ただ、そのちょっと。」
    「ちょっと?」
    「えっちなお話は得意ではないので、パターンが。」
    「ああ。それは主の努力次第ですね。どちらにしろ書かなければいけないのですから、頑張ってください。」
    「…ハイ」

    笑顔の圧で審神者が小さくなる。何の話?と聞いてくる笹貫は無視だ。どうせ、年が明けたら少しの間いつでも正月の監査官に気が行って、その後はすぐに笹貫のことで手一杯になる予定だ。今くらいは、長谷部のことでいっぱいになってもらっても罪にはならないだろう。

    「実地でお手伝いしましょうか?例えば、参考資料になるようなことですとか――俺と、してみますか?」

    思い付きで発言すれば、主は潰れた蛙のような声を上げ、隣の男が「は…?」と低い声を出した。

    「書けないとおっしゃるのなら、ここは俺が一肌脱いで――」
    「結構です!」

    明らかに動揺している主を見て長谷部は満足の笑みを浮かべるが

    「待って。興味ないって言ってたろ。」

    隣の男が煩いのが厄介だ。

    「主に興味はないが、主の書かれる物語になら興味がある。俺で役に立てるのならいくらでも使っていただいて構わないという意味だ。」

    これは恋愛感情などではない。いい加減この本丸について理解しろ、と重ねて言えば、顎を上げて嗤った笹貫は「なにがどう変わるかなんてわからないのが人生。これ、ホント」などと嘯いた。

    「俺たちは人ではないぞ。」
    「オレたちは…ね?」

    自分の中で勝手に納得したらしい笹貫が長谷部の肩から顔と腕を外して部屋に入っていく。

    「で。ど?今日はオレのことどんな風にしてくれる?」
    「誤解を与えるような言い方はやめなさい。」
    「どんな風に愛してくれる?って言えばいい?」
    「あー…」

    どうやら主は笹貫の相手をするのが面倒になったらしい。好きにして、と言って端末に向かう。その隣を陣取り、間近で顔を覗き込んでくる男にも慣れたように見える。…いや、あれは慣れたのではなくて、面倒になっているだけだ。
    そのうちに私の邪魔をするな、とキレられるのがオチだろうに。まだ距離感をわかっていないのか。それとも、わかっていてやっているのか。どちらにしろ――

    ――あまり、面白くはないな。

    そっと部屋を出た長谷部は周囲を見回しながら歩き出す。今日はお祝いの日だ。あの部屋に特に主のお気に入りの刀たちを詰め込んでも悪くはないだろう。そうしたところで、笹貫は主とふたりきりでないと嫌だ、などとも言わないのだろうと思った長谷部は、眉間に皴を刻んだ。
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    mct_ichi

    DONEここからはじまるたろさに。
    本丸軸。
    長くなったのでこっちにも載せます。
    たろさに書いた。 彼は私の本丸で初めて顕現してくれた大太刀だった。俗世が苦手だという話は知っていたから、あまりに馴れ馴れしくするのも負担になるだろうと思って少し距離を取っていたところはある。
     たぶん、傍から見れば彼の弟との方が仲良く見えていただろう。しかし、私は頼りになる彼のことが、本丸を御神刀として支えてくれている彼のことがずっと好きだった。恋愛感情を抱いていた。
     でも、俗世や現世とは違う位置にあるという発言を見聞きしていると、どこからどう見ても俗世じみているような人間の私は、彼には釣り合わない。そう思っていたから、なるべく近付かないようにしていただけ。だけど遠くから眺めているだけで満足していた、なんて可愛いことは言えない。次郎太刀と仲良くしていたのだって、馬が合ったというのもあったけど、なによりも彼を通じて太郎太刀の話を聞きたかった、なんてまた俗な意味合いが強かった。それをわかっていながら嫌な顔一つせず付き合ってくれる次郎太刀は本当にいいひとだと思う。本丸の中で、私の本当の気持ちを知っていたのは、彼の弟である次郎太刀だけだった。
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