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    mct_ichi

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    mct_ichi

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    乱、今剣、長谷部が不穏なの苦手な人は読まないでね。
    という話。
    ちょっとアレでコレなの書いてみたかったんだけど、今だったらここはこうしてこっちはもっと……!って思ってどうしても耐えられなかったので加筆した。

    別垢からの転載 お邪魔しました、と明るい声がした。
    「大したお構いも出来ずに申し訳ない」
     頭を下げたのは近侍の長谷部だ。今日は、主の友人という娘が遊びに来ていた。彼女も審神者だと言って本丸札を見せてくれたのだが、あれはそう簡単にひとに見せるものではない。どうにも警戒心が低い少女のようだ。
     お呼ばれにはお洒落をしなきゃね、とのことでその娘は何やらふわふわとした柔らかそうな衣をまとっていた。それ故か、明るい太陽の下ではまるで春に咲き誇る花の精のようだった。いつもは巫女のような服だから見違えた、と訪問してきた彼女を見た主は目を丸くしていたのが印象的だ。

    「それにしても、あるじさんとは大違いだねえ」
     しげしげと彼女の服を眺めて乱は言った。
    「あるじさんは着ないの? ああいうの」
    「私にはあんな可愛いの似合わないから」
     無理無理、と困り顔で手を振った主に、長谷部は柔らかく微笑んだ。
    「主は、何を着ていても素敵ですよ」
    「ひゃぁっ」
     それを聞いて黄色い声が上がる。声の方向を見れば、主のご友人が真っ赤な顔をして両の手でもって口を押さえていた。
    「やぁっ、ここの長谷部くんって、そんな感じっ」
     慣れているこの本丸の面々にとっては何でもない言葉であっても、他から見れば甘ったるいものだったらしい。そういえば、彼女の本丸にはまだ長船は誰も居ないのだと文句を言っていたような気もする。それならば免疫がなくても仕方がないか、と納得する。
     先程、彼女の近侍の長谷部と話した時にも、真面目で有能そうではあるがどこかふわりと柔らかなものを感じた。顕現した男士は主の性質をどこかに備えているものだという。彼にとっては、主の纏う空気感をもらったのだろう。
    「あ、それでは!」
     帰りますね、と言った彼女の後ろであちらの長谷部が頭を下げる。
    「それじゃ、ね」
     主も笑い返して言った。
    「いってらっしゃい」
    「え? やだぁ」
     彼女は主の言葉に吹き出す。
    「私、ここの子じゃないってばぁ」
    「ん? あれ。ごめんね」
     間違っちゃったかな? と照れくさそうに耳を掻く主に対し、くすくすと愛らしい笑い声を残して娘は去っていく。客人であるのだから門まで見送ると長谷部は言ったのだが、近侍も一緒だから大丈夫、と断られてはついていかれなかった。

    「さあ、最後までちゃーんと片付けないとね」
     うーん、と伸びをして主が言う。
    「じゃあ、ボクたちがやってくるよ」
     乱が今剣と一緒に手を挙げた。
    「宜しく。乱藤四郎、今剣」
    「んふふ、任せて♪」
     軽やかな足取りで片付けに行くふたり以外の男士は、見送りを終えてそれぞれの場所に散っていく。のこりも少なくなった玄関にあちらの長谷部が駆け足で戻ってきた。
    「失礼します。主が忘れ物をしたとのことで――」
    「忘れ物?」
     そんなものがあったかな、と青江が立てた人差し指を口に当てた。
    「それ……が。どうやら女人にだけ必要なもの、だとか……」
     あちらの近侍は歯切れ悪く言う。なにをそんなに言いにくそうにしているのかと思っていると「あー、なるほどねぇ。じゃあ私が探してあげる」主は安請け合いしてあちらの近侍の長谷部をうちに上げた。
    「あの子は一緒に戻ってこなかったの?」
     その後ろに誰も居ないのを見て、主が尋ねる。
    「あんな忘れ物をしてしまっては、恥ずかしくて顔を合わせられないと言っておりまして」
    「そんなの恥ずかしいのかー。あっちこっちいったわけじゃないから、きっとさっきの部屋にあるわね」
     主は言って、彼を先導して応接室へと向かう。当然のように付いていこうとした長谷部だったが、主に止められてしまった。
    「女のコが恥ずかしいって言うようなモノを今から探すの。長谷部は来ちゃ駄目」
    「しかし」
    「仕方ないなぁ」
     自分は近侍であるのだから主をひとりにはできない、ついていかなければいけない、と主張した長谷部に主はその耳元を指先で擽って言った。
    「少し待ってて。此処で私に危険が及ぶことなんてない、でしょ? へし切長谷部」
    「……解りました」
     下がって頭を下げた長谷部には目もくれず、主はよその本丸の刀を連れて行ってしまった。足音が遠くなると長谷部は顔を上げる。そこには主に向けていたような心配げな色は浮かんでいない。
    「では、俺たちも主に言われた通りにしようか」
    「ああ」
    「そうだね」
     まだ、片付けなければいけないものはあるのだった。その場の面々は顔を見合わせて頷いた。

    「やっぱりないねぇ」
     ひとしきり部屋中を見て回り、最後に机の下を這いつくばるようにして見ていた主の上に影が落ちる。
    「そうですか……困りましたね」
    「どの辺りに置いていたか覚えてない?」
     起こそうとした身体がそのまま壁に押し付けられる。驚いて目を丸くし言葉もない主に、他所の長谷部がなんとも切なげな顔で身を寄せてくる。
    「無礼をお許しください。……実は、先日お見かけした時に、貴方に一目惚れしてしまいました」
    「え……何……」
    「離れていればいるほど、勝手に想いは募るばかりで」
     長谷部の手が、主の床に置かれた手に絡む。
    「ずっとお噂は聞いていたのです。その時から素敵な審神者様だと尊敬の念を抱いていたのですが」
     ――お会いした途端に、それは恋心に変わりました。
     そんな告白を受けた主は目を限界まで見開いて。
    「ええ、俺の『主』は、あの方で、もちろん主として慕ってはいます。しかし、今俺の胸の中にあるこれは、あの方へ向けっているものとは全く異なるんです。――お会いしたかった。お話したかった。こうして、貴方とふたりきりで、貴方に、触れたかった」
     そう言って、他所の近侍に迫られた主は、少しでも距離を取ろうと小さく丸まる。しかし、抵抗空しく頬を両手で包んで上を向かせられ、薄く開いた主の唇に男はそのまま顔を寄せようとした。
    「どうか、俺の想いを受け入れてください」
     そのまま、影が重なる――

     とんとん、と軽く肩口を叩かれ振り返った目が、揺らめく光の瞳を見つけて動けなくなる。しゃがみこんでいた客人を、乱と今剣が不思議そうに見下ろしていた。
    「何でここでしゃがんでるの?」
    「あ、ごめんなさいっ、あの……っ」
     彼女は焦った様子で立ち上がろうとして、広がったスカートを踏みつけて尻もちをつきかける。
    「おっと」
     間一髪、伸ばされた乱の手が腕を掴んで引き止めた。
    「どうしたの? 具合悪くなっちゃった?」
     可愛らしく微笑んだ乱が、腕を優しく掴んで立ち上がらせながら言う。
    「忘れ物を長谷部に取りに行ってもらってる間、暇だなぁって思って、え、と……ちょっと疲れたから、しゃがんじゃって」
     お行儀の悪いところ見られちゃって恥ずかしい、と彼女は頬を染めた。それから、手を後ろに組んだ可愛らしいポーズで上半身を傾げる。
    「そっかぁ」
     乱は、笑顔のまま彼女の両腕をもう一度掴んで挙げさせた。そして、その指先に顔を近付ける。
    「ここ、なにかついてるよ?」
     綺麗に爪紅の塗られている彼女の指先は、黒く染まっている。そして、そこから漂うのは湿った土の匂いだ。
    「あれー? ほんとうですね」
     表情こそ笑ってはいるが、彼らの視線は彼女の手元に固定されていた。その、土まみれの手に。
    「どろあそびですか?」
    「そんなのは、自分のうちでやって欲しいなあ」
    「ご、ごめんなさ……あの、恥ずかしいから離してもらっても?」
    「ダ・メ♡」
     頭上に固定された手が逃れようと藻掻く。しかし、可愛らしく見えても男士の手で押さえ込まれては解けない。そんなのは、抵抗する前から分かっていることだろうに。
    「ねえ、お嬢さん。そんなに暇ならボクたちと乱れよ?」
    「ひっ……!」
     耳元に囁かれた彼女の顔色が悪くなる。
    「こわがらなくてもだいじょうぶですよ」
     ニコニコと笑う今剣の手に、何かが握られていた。
    「ただし、おねえさんの長谷部さんは、よんでもきませんけどね」
     ゆらり、と紅い目が愉しそうに嗤って、小さな土人形を彼女の目の前に突きつけた。
    「嗅ぎ慣れた臭いがしてるね、それ」
     ボロっと今剣の指先で崩れた人形から、長い髪の毛がつまみ出された。
    「それ、うちの主の髪の毛――だよね」
     今、乱に拘束されている彼女の髪は栗色の緩く波打った肩口までの長さで、そこから出てきた長い真っ直ぐな黒髪とは異なっている。彼女のものであるはずがない。まだうっすらと残る霊気で、その持ち主もすぐに知れた。
    「いつ手に入れたの? こんなもの」
     乱から笑みが消える。
    「ねえ、こんなことして、タダで済むとは思ってないよね?」
     土人形。中に他人の髪の毛。門の下に埋めようとしていた。もう何をしていたかを誤魔化すことはできない。
    「のろいはいけませんよ。だれにもいいことはないですからね」
     今剣は真面目な顔で言う。人を呪わば穴二つというではないか。こんなことは、してはいけない。言い含めるような声に、少女は顔を引き攣らせる。
    「でも、だって!」 
     羨ましかった憎かった、なんであの人ばっかり、どうしてわたしばっかり! 私は悪くない、悪いことなんてしてない、私は幸せになりたかっただけで――
     何やら彼女の口から言い訳じみた呪詛が吐き続けられている。しかし、興味のない短刀たちの耳には入らない。
    「もうお喋りは良いよ。ボク、そういうのに興味ないし。何を思おうと勝手だけど、うちの主と、刀剣を巻き込むのは止めてくれない?」
     乱の手に白刃が光り、少女の顔が映り込む。
    「あるじさまが、かなしみますからね」
     今剣が高く跳んだ。彼女の視線は上に。首元ががら空きになる。
    「あなたには、なにいろがみえますか?」
     しかし、娘はもう応えることが出来ず、その耳には、もう何も聞こえなかった。



    「……ん、っふ……ぁ、ぁ……っ!」
    「そんなに可愛い声で鳴かれると」
     彼は、ふっ、と息を抜いて嘲笑う。
    「同じ顔とはいえ、なかなかクるなぁ?」
    「あ、ヤ……っ、あぁっ」
     ぐちゅ、と挿し込まれた箇所が水音を立てる。くちゅくちゅと淫らにも聞こえる音に、男は身を捩る。
    「。ッッ!」
    「もっとイイ声で鳴けるだろうに。俺ならばもっと主にお悦びいただかねばならん」
     まだまだだな、と言いながら長谷部は身体の下の男の耳元で笑い声を漏らす。
    「やめ――んぁ、っ、ヒ……っ」
     腹に刺さった刀が拗じられる度に、喘ぎのような悲鳴が響く。そこから、黒く粘度の高いヘドロのような何かが溢れ出している。呻き続けるそれに跨った長谷部は、右目を眇めてまた嗤う。
    「貴様、ドレだけ喰った?」
    「長谷部」
     顔を寄せて問い詰めようとする長谷部の肩を主が掴む。それ以上痛めつけるな、という訴えの主を冷たい目で見返し、長谷部は言った。
    「主はこれ以上見なくて良いですよ」
     外へ、と言われても彼女は動かない。
    「私にも責任のある話だから」
    「はっ、何を言ってるんですか」
     長谷部は主を見上げて笑い、しかしその手は下に組敷いたモノをグリグリと抉り続けている。
    「貴方は、アレから勝手に嫉妬されただけだ。何も悪くはない」
    「でも」
    「貴方の存在を疎む輩は、俺が斬って差し上げましょう」
    「長谷部!」
     そうじゃない、ともどかしそうな顔の主に、理解出来ないと顔に貼り付けた長谷部は返すのだ。
    「取り敢えず、気分が悪くて寝られなくなったのなら添い寝でも何でもしてあげますから。こんなの気持ちの良いものじゃないでしょう。なるべく見ないでくださいね、主」
     長谷部は、ヒューヒューと喉を鳴らすそれを無感情に眺める。
    「汚れ仕事は俺に任せてください。それに、コイツはまだ吐き出しきってません。まだなにをやるか――ああもう、面倒だな」
     吐き捨てるように言うと、刃を肉から抜いて、穴に手を無造作に突っ込んだ。口を押さえて何かに耐える主を横目で見て、長谷部は横たわるソレに話し掛ける。
    「なあ。どれだけ仲間を喰えばこんなに澱む? どれだけの数、そんな事はしたくない・厭だ、と拒絶したのも喰ったんだ。……ふ、それがお前の果たしたかった主命か。ご立派なことだ」
     面倒臭そうに黒い塊を腹から掻き出しては投げ捨てる。濡れて黒く光る其れは、ビチビチと跳ねては長谷部に踏み潰されていった。暫くそんな作業を続けた長谷部の動きが止まる。
    「ああ」
     一つ、長谷部は喘ぐように息を吐いた。立ち上がった彼の足元には動かなくなった身体が転がっている。
    「それで、どうしましょうか?」
     にこり、と綺麗に笑った長谷部に主は小さく溜息を吐く。
    「……その子はもう大丈夫。澱みは棄てられたから。だから、手入れ部屋に」
     連れて行ってあげて、と言われた長谷部は目を伏せて頭を下げると、空っぽに近いそれを担いで部屋を出た。

     残された主は、畳に染み込んだ黒い染みを指で撫でた。
    「君は、あの子の期待に応えたかっただけだね。可哀想に、その愛が自分に向いていなくても、それでも役に立ちたかったんだね」
     染みがグニャリと形を変える。
    「ああ駄目だよ。ここで浄化されてくれないと、ほら、厄介なモノに成られたら、困るから」
     そう成る前に、と主の指先が何かを描く。ふぅと息を吹きかけられれば、パチン、と小さな破裂音と共に染みは消えた。
    「痛かったよね、怖かったよね。苦しかったよね。……誰だろうねぇ、最初に君たちで蠱なんてやろうと思った戯けは」
     主は憂鬱そうに眉を寄せて小さく頭を振る。
    「そろそろ、あちらの尻尾が見えると良いのだけど」
     ふ、と、視線を上げた主と視線が合う。
    「ずっと見ていて、何か気付いたことはないの?」
     真っ直ぐに、黒曜石のような目が見詰めてくる。
    「何でも、識っていたら教えて欲しいのだけど」
     答えずにいると、主はにやぁっと唇を歪めて嗤った。
    「まさかお前、あちら側ではないよね?」
    「勿論だ、主」
     俺は、主の味方だ。
     そう言う俺に、主はすっと目を細めて微笑むのだった。
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    mct_ichi

    DONEここからはじまるたろさに。
    本丸軸。
    長くなったのでこっちにも載せます。
    たろさに書いた。 彼は私の本丸で初めて顕現してくれた大太刀だった。俗世が苦手だという話は知っていたから、あまりに馴れ馴れしくするのも負担になるだろうと思って少し距離を取っていたところはある。
     たぶん、傍から見れば彼の弟との方が仲良く見えていただろう。しかし、私は頼りになる彼のことが、本丸を御神刀として支えてくれている彼のことがずっと好きだった。恋愛感情を抱いていた。
     でも、俗世や現世とは違う位置にあるという発言を見聞きしていると、どこからどう見ても俗世じみているような人間の私は、彼には釣り合わない。そう思っていたから、なるべく近付かないようにしていただけ。だけど遠くから眺めているだけで満足していた、なんて可愛いことは言えない。次郎太刀と仲良くしていたのだって、馬が合ったというのもあったけど、なによりも彼を通じて太郎太刀の話を聞きたかった、なんてまた俗な意味合いが強かった。それをわかっていながら嫌な顔一つせず付き合ってくれる次郎太刀は本当にいいひとだと思う。本丸の中で、私の本当の気持ちを知っていたのは、彼の弟である次郎太刀だけだった。
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