チョコレート 寝起きだか朝にビターなチョコを食べると健康やら美容やらに良いらしい。
今日も朝からベッドサイドに置いてあった小さなケースからチョコレートの包みを取り出し、そっと口に含んだ審神者のことを寝転がったまま眺めた明石は欠伸を噛み殺す。
ぼーっとしたまま枕を抱きしめるような格好で目を閉じていると、まだ寝ていると思ったのだろうか、審神者は明石を起こさないように気を付けながらベッドを抜け出そうとする。
「どこ行くんですか」
立ち上がる寸前、マットレスの上に残されている手を握って引き寄せる。
「起きてたんですか?」
驚いた顔で自分の上に覆いかぶさるような格好になっている彼女の口から、チョコの甘い香りがする。甘いものが特に好きなわけではないが、これはなんとも美味しそうだ。
「それ、誘惑してはります?」
「え?」
なに? と困惑したように彼女は自分の服を見下ろす。胸元がはだけているとでも思ったのだろうか。
「そっちじゃなくて、こっち」
ふに、とぷっくりした唇を親指でつつく。
「えらい美味しそうな香りがしてますやん」
そう言いながら、彼女の頭を己に近付けるように後頭部に触れた手に力をこめる。
「全部食べちゃいたいくらいやわ」
「え? チョコ? チョコですか?」
「じゃなくて」
わかってるくせに、と軽く笑って彼女の唇を甘噛みする。戸惑ったように薄く開いた唇を割って舌を侵入させた。彼女の口の中はほろ苦いチョコレートの味がする。舌を絡めると、それが少し甘くなったように思えた。
「ん……っ」
「それ、目覚まし効果あるんでしたっけ?」
ちゅっと唇を吸って離し、彼女と体の位置を入れ替える。
「おかげさまで、目ぇ覚めましたわ。ほら、こっちも元気や」
腰を押し付ければ、審神者の頬が赤くなる。視線がとろりと溶ける。
「主はん、そういえばこのちょこれーととかいうお菓子、昔は媚薬として使われてたとかって話、知ってますか?」
知らない、と審神者は首を横に振る。
「効果抜群やないですか。これ、このまま起きるのは無理や。落ち着かせな部屋から出られませんな」
ちゅっちゅ、と何度も彼女の甘い唇を味わう。
「責任、とって貰いまひょか」
もう一度深く口付ければ、彼女は抵抗も見せずに明石を受け入れた。