福さに「みっちゃんはいっつも格好良くて頼りになるし、実休さんは距離感近くてなに考えてるかわからないからドキドキしちゃうけど、福島さんはいつもお花の香りがするしなんか落ち着くんですよねー」
福島さんがお花を活けている隣に座って、彼の手元を眺めながら言う。
「花、好き?」
「はい。母がガーデニングが好きで、いつも花のある環境で育っていたんで」
「ははは、お母さんを思い出すってことか」
軽やかな笑い声に、気持ちが軽くなる。別にお母さん扱いしてるわけじゃないですよ、と言いながらちらっと見上げた横顔は、口元は笑んでいるけれども瞳は真剣な色を帯びていて。普段自分に向けられることのない視線にドキッとする。
「福島さんと一緒だと、落ち着くんです。懐かしいっていうか、やっぱり、お兄さんだからですかね? 安心します」
まるで魔法のようにあっという間にアレンジされていく花籠を見ていたいのに、彼の顔から目が離せない。福島さんはまた笑う。
「君の兄ではないけどね」
「わかってますよ」
「そう? なら良かった。それに花園を作っているのは、俺じゃなくて」
「それもわかってますよぉ」
「俺は、摘んで飾る専門」
できた、という声にハッとしてテーブルの上を見れば、見事な花籠が出来上がっている。色とりどりの花が、バランスよく、お互い主張しすぎずに馴染んでひと固まりになっている。
「ここの本丸みたいだろ?」
「え?」
「それぞれに美しくて個性豊かな刀剣男士が、君という器の元に顕現して、ほら、みんなそれぞれを引き立て合うように支え合いながら集っている」
「でも、一輪一輪もちゃんと存在感があって……確かに、本丸みたいですね」
「……その中でも、特にお気に入りはあるのかな」
ぼそっと呟かれた声は低くて、聞き取れなかった私は彼の顔を見る。すると、真っ直ぐに、さっき花に向けていたのと同じくらい真剣な目が私を見つめていて。
「俺と一緒だと、落ち着くだけ?」
そんなことを、聞かれた。
「落ち着き、ます、けど……?」
「それは寂しいねぇ」
ふっと眉を下げた福島さんに手を取られる。え? と小さく声が出る。彼は、私のてのひらをその胸に当てさせる。
トクトクと少し早くも感じられる鼓動。
「俺だけか、こんなになってるのは」
「福島さ……」
「な~んてな。別に困らせる気はない。じゃあ、玄関にでも飾ってくるかな」
すっと視線を逸らすと、こちらを見ることなく行ってしまった福島さんの残り香に、私の胸は彼以上に早鐘を打っていたのだった。