月夜の告白ワードパレット
12降るのは沈黙ばかり
月が綺麗/ガラじゃない/ぬくもり
「好きだ」とあからさまに言うなんてガラじゃない。
「なぁ、さんぼー」
「なんだ」
「月が綺麗じゃな」
この言葉に隠された意味を、柳なら知っているかもしれない。もし知らなければ、これは単なる風景描写だ。
「おや、お前がそんなにロマンチストだとは。データを更新しておかねばな」
立ち止まって懐からノートを取り出し、何かを書き留める。
自分にしては精一杯の告白だったのに、柳からは何か焦点の合わない答えが返ってきた。なんだか決まりが悪くなって、仁王は肩をすくませ頭を掻いた。隣の背の高い男は月明かりの中で微笑み、仁王の耳元で低く囁く。
「……お前のものだ」
生温かい吐息が耳をくすぐり、仁王はギョッとした。まさかそんなストレートな返事をするとは思っていなかった。
「……な、何がじゃ」
「そういう意味ではなかったのか?違うのなら構わないさ」
クスリと笑ってノートを仕舞い、柳は再び歩き出す。
「待ちんしゃい」
歩き出した柳の手を取った。ほんの僅かに汗の滲んだ手のひらに触れ、互いの心を知る。
「したら……朝まで天体観測と洒落込もうかのう」
身体を寄せ合えばぬくもりが伝わる。
秋深まった、ある夜の告白。