緑黒医師の場合 十四時
「……何をしているのだよ」
いつの間にか寝ていたらしい。モヤのかかった頭が覚醒に近づくにつれ、意識もはっきりとする。同時に、ゆっくりと目を開ければ、目の前には何を考えているのかわからない目がこちらを見ているのがぼんやりと見えた。
そして、何度か瞬きをして、視界が少しクリアになるにつれて、その姿に一瞬これは夢なのかと思った。
「あ、起こしてしまいましたか。すみません」
「いや、ちょうど今目が覚めた。お前のせいではないのだよ。それより、オレのメガネで何をしている」
今度ははっきりと指摘してやれば、二、三度瞬きをして、首を傾げる。そして、今更気がついたように、あぁ、と言ってメガネを押し上げた。
1960