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    tmkhrak96

    @kamoto96

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    tmkhrak96

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    初めてのヒロアカ、初めてのwebイベントで不備が多々あるかと思います。
    ヒロアカにハマるきっかけになった出轟を同好の方とご一緒に楽しめればと思って拙いながらも参加させて頂きました。よろしくお願いします。

    #ハピます
    tryToGetOnTheGoodSideOf
    #出轟
    fakeRoar

    初めてのプライベート海外は君と……「え?ここは一体……」

    三徹明けで疲労困憊の中、なんとか辿り着いた我が家で出迎えてくれた高校からの愛しい愛しい恋人の笑顔を視界に捉えたところ迄は記憶がある。

     厳密に言うと恋人の欲目を抜きにしても整い過ぎて冷たい印象すら与える美しいそのかんばせが自分を見て花が綻ぶ様に柔らかくなり、最早物理攻撃に等しくなったそのイケメンオーラを心身共に限界まで疲弊した己は受け止めきらず意識を手放してしまったのだ。


     意識を取り戻した自分の目の前には今、青い空、白い雲、眩しい太陽が広がっていた。

    「良かった、お前も来た事ないって言ってたから移動中はともかくフラワー・レイの時は起こさねえと、と思ってたんだ」

     そしてそんな風景よりも色鮮やかで眩しい笑顔の恋人が腕に抱えた自分を覗き込んでいた。

    「え?僕いま轟くんに横抱きにされてる??てかここ何処?暑いけどなんかカラッとしてる?え?レイって??」

     取り戻した意識で状況を把握しようとするが何分、情報量が多過ぎて処理が追いつかず慌てる緑谷出久と嬉しそうに微笑む轟焦凍の元へ、アロハ〜とムームーを着た長い黒髪の女性が花輪を掛けに来た。

    「へ?あっ、ありがとうございます。わぁ、きれいだね轟くん。コレ本当に生花なんだね!」
    「あぁ、コレをかけて貰うとハワイに来たんだって実感できるな」
    「そうだね、アロハ〜って挨拶はハワイならでは……ハワイー?!!」

     緑谷出久の声がホノルル空港、もといダニエル・k・イノウエ空港に響き渡った。


    「いきなり大きな声出してどうしたんだよ緑谷。大丈夫か?」
    「大丈夫だけど大丈夫じゃないよ!て言うかもう起きたから降ろしてくれて平気だよ轟くん。重いでしょう?」

     いつ迄でもその腕の中から見上げていたくなる恋人だがいかんせん、男として自分の足で立って並びたいし、なんなら自分が彼を抱き上げたい緑谷は恋人の腕から降りた。

    「お、そうか?お前8連勤の上に最後3日は徹夜続きだったろう。玄関でぶっ倒れてから着替えさせても飛行機に乗せても出入国手続きしててもピクリともせず寝っぱなしだったからこのままホテルまで俺が抱いて行こうと思ってたんだ」
    「えぇ!僕そんなに寝てたの?!ハワイ迄って直通便でも飛行時間って9時間位だよね?フライト前後の時間も入れたらどんだけ寝てたの僕!!」
    「それだけ疲れてたんだろ。悪いな俺がお前の誕生日一緒に過ごしたいって我儘言ったから……」
    「そんな、僕だって君と誕生日過ごしたかったんだし。それに一緒に居たいって我儘なんかじゃなくってこ、恋人からの可愛いお願い事じゃない?多少の無理しちゃってでも叶えたくなっちゃうよ。」

     成人しても多少は縮まったものの埋められなかった身長差で紅白の髪から覗く灰色と碧色を気恥ずかしく見上げると2色の宝石の様な瞳が瞬間見開かれて逸された。
    「お前はいつも不意打ちでずりぃ……」
    「ふふっ、君だってなかなかのサプライズしてくれたじゃないか。そう言えば、本人が寝こけてるのに出入国手続きとかよくできたね」
    「あぁ、ファーストクラスで来たから専用の入国レーンで済ませて貰ったんでスムーズに済んだぞ」
    「え?僕ファーストクラスに乗ってたの??て言うか本人の意識ないのに出入国審査ってパスしちゃっていいの?」
    「パスポートや書類は用意してたからな。それにお前の事知らない人間の方が少ないだろう?ヒーロー・デク」
    「ヒーロー・ショートだって世界規模で有名でしょ?世界共通認識でイケメンヒーローだし。そんな君に横抱きにされてここ迄来たのかと思うとマスコミや君のファンに何て騒がれるやら……
    特に君の熱烈なファンからはどれだけ反感買うか今から不安だな……」

     首に掛けられたレイの花輪で顔を隠すように持ち上げながら緑谷は天を仰いだ。

    「ならプライベートではお互い初海外だけどホテルの部屋に二日間篭りきっちまうか?別に俺はお前と居れるならそれでもかまわねぇぞ、……出久」

     お互い立ち並ぶと出来てしまう身長差を詰める様に屈んだ轟が緑谷の耳元で2人きりの時でしか呼ばない名前を囁いた。

    「ンガハッ!!」
    「なっ、大丈夫か?」
    「うん、大丈夫だよありがとう。すっごいすっごい魅力的なお誘いなんだけど周りに何を言われても君との初ハワイを満喫したいな!」
    口元と鼻を抑えながらも緑谷がそう告げると嬉しそうに笑った轟は幾つかに纏められた紙束をデイバッグから取り出した。
    「そうか、よかった。実はA組でハワイ来た事ある奴らからお前と俺が無理なく2泊でオアフ島を周る勧めコースを教えて貰ってんだ」
    「えぇ!ならA組の皆このサプライズ知ってるんだ?!」
    「あぁ、だからお土産沢山買って帰んなきゃだな」
    驚く緑谷に対していたずらっ子の様にほくそ笑む。
    「ふふっ、なら今度のクラス会迄に日持ちする物にしなきゃだね」
    そんな轟に対して秘密を共有してるみたいに緑谷もクスクスと鼻と鼻を触れ合わせながら笑い返した。
    「そういや爆轟に『馬鹿の一つ覚えみたいにマカダミアチョコやビーフジャーキーにすんなよ』って言われたな」
    「うえぇ!かっちゃんにもお勧め聞いたの?!」
    「おう、店の住所や電話番号、地図とかストリートビューで外観とかつけてくれてて一番わかりやすいぞ」
    「手厚い!完璧なプレゼン資料の様だよ!」
    「最初、聞いた時は知るかって一喝されたんだが一緒に呑んでた瀬呂や上鳴が爆轟ここ最近忙しかったって教えてくれてな。仕事が大変な時にプライベートな事頼んじまって悪かったゆっくり休んでくれ、つったら何かすげえ勢いで『舐めんな!完璧なワイキキデートプラン作り殺したる!!』って次の日にコレ送ってきてくれたんだ」

    「……かっちゃん……」

    (轟くんは純粋に労ったんだろうけどかっちゃん的には煽られたになったんだね)

     緑谷は心の中で日本にいる幼馴染に憐れみと感謝の混じった複雑な感情を抱いた。

    「僕ぐっすり寝れて体力全回復したし、お腹もペッコペコだから皆が教えてくれたコース周ろうよ!僕は今、何でも食べれるけど轟くんはどう?」
    「そうだな、俺はこの……わりぃ、ちょっとコレ見ててくれ」
    「へっ?うんいいけど、どうかしたの?」
     2人で持って覗き込んでいたかつてのクラスメイト達からの手作りの観光マップや資料をいきなり全て渡されて自分を通り越して後ろを見やる轟に緑谷は違和感を覚えた。

    「こっちです!走らなくても大丈夫ですよ。出久くんも起きましたから」
     
    珍しく声を張り手を振る轟の視線の先を辿ると緑谷は本日2回目の絶叫を上げた。

    「何で母さん迄ハワイに居るのーーー?!!」




     轟の視線の先には緑谷出久の母、緑谷引子がハァハァ言いながら小走りでこちらに向かって来ていた。
    「ごめんなさいね轟くん、お手洗い結構混んでてね。出久は抱っこして貰っている上に私の荷物まで見て貰っちゃって……」
     轟と緑谷の元に到着した引子は軽く汗をかきつつ笑顔で話しかけて来た。
    「確かに大きなトランク3つある!いくら海外でも僕と轟くんが2泊でこの量にはならないね!」
    「トランク一つは俺とお前のヒーロースーツとその付属品だけどな」
    「スーツやパーツ持ってきてるんだ?」
    「わりぃ、俺が我儘言ってオフ取らせたのに独断で持って来ちまって……」

     緑谷の何気ない言葉に轟はイカ耳になった猫の様にしょんぼりしてしまった。

    「もーう、だから今回のオフは僕だって楽しみにしてたし我儘じゃないって言ってるだろ?それに正直海外でもプライベートでも何か有事になったら駆けつけたい、避難誘導でも何でもいいからしたいって思ってたから何だか君と以心伝心してるみたいで嬉しいんだよ?」
    「緑谷……」
     俯いてしまった頬を両手で優しく持ち上げ目線を合わせ諭す様に緑谷が話すと轟は感激して表情は変わらないが前髪から覗くオッドアイを潤ませた。

    「あらあら、夕方にお父さんと合流する迄と思ってたけどお邪魔になりそうだから私はここから別行動の方がいいかしらね」
     うっかり引子の前でイチャついてしまった事に気づいた2人は大慌てになった。
    「そんな、俺の提案でご一緒して頂いたのにお邪魔だなんて事全くないです!今日引子さんとお父さんに感謝の気持ちを伝えたかったんです」
    「そそそ、そうだよ!僕の誕生日って事は母さんが僕を産んでくれた日なんだから……ってそれで母さんや……え?父さんも来るの??」

     無意識で2人の世界になる位に仲睦まじい我が子と我が子のパートナーの姿に引子は微笑ましくもなりつつ目頭が熱くなった。

    (本当にこんなに大きく立派になって、成りたかったヒーローにもボロボロになりながらも成って。
    夢を叶えて……。
    一緒にヒーロー活動もプライベートも出久を思って寄り添ってくれて、親の私達の事まで大事にしてくれるパートナーまで……よかったねぇ、出久……本当によかったねぇ)

    「ほ゛と゛う゛か゛た゛〜!!」

    「母さん?!」
    「引子さん?!!」

     感極まって大泣きし出した引子に緑谷と轟は益々慌ててしまった。




     涼しく、座り心地の良い革張りのシートに緑谷出久と引子親子は緊張して縮こまって座っていた。
    「緑谷……じゃねぇ、出久は搭乗前から寝てたけど引子さんはずっと起きてたでしょう?シートにもっと深く座られた方が……」
    「確かに機内では起きてたけどファーストクラスのシートで寝っ転がって食事して映画見てただけだから全然疲れてないから大丈夫よ。それより飛行機の席も移動用ってチャーターしてくれたこのリムジンも焦凍くんこの旅に一体いくら掛けてくれてるの?お父さんの便もあなたが抑えてくれたのよね?」
     
     荷物も多い上に、サプライズ故にどの店や旧友達のコースを周るか事前に意見を擦り合わせられなかったのでどうなっても対応できる様に轟は滞在中の足として真っ白いリムジンをチャーターし飛行場前に待機させていたのだ。

    「ご無理を言って同行して頂いたんですからお気になさらないで下さい。俺も出久くんは勿論ですがお二人とご一緒できて……その、すごく嬉しいので……」
     息子と並んで座ってしきりに恐縮する引子に向かいに座って車内なのにハワイの日差しの様に眩しいイケメンオーラ溢れる笑顔を向けてきたかと思えば最後の方は照れているのか轟は視線をすいっと逸らして僅かだが頬を染めて小声になっていった。

    「「 !!」」

    (息子の恋人が……)
    (僕の恋人が……)
    ((むちゃくちゃカッコよくって可愛い!))

    「え?突然どうした??2人とも車酔いに?運転手さん、ちょっと、路肩に停まって窓を開けて下さい!」

     母子揃って口と腹に手を当てて蹲ってしまい、向かいに座っていた轟は何事かと慌てながらも何とか対処しようとした。

    「だ、大丈夫だよ轟くん。それより空港で電話予約ちゃったんだしお勧めのレストランに行こう?」
    「本当か?お前はともかく引子さんはもっと労った方が……」
    「ありがとうね焦凍くん、私も本当に大丈夫よ?ちょっと免疫がなくってあまりの眩しさに充てられちゃっただけだから」
     心配する轟に引子は笑顔で返した。
    「確かにこちらの日差しは強いですね。窓のカーテン引きますね」
    恋人と恋人の母親が眩しさを覚えたのが自分の顔面とは夢にも思っていない轟は甲斐甲斐しく緑谷親子側の窓カーテンを引いたのだった。




     
    「うーん!お料理は美味しいし景色も素敵なお店ね。合流前のお父さんに申しわけなくなっちゃう位だわ」
     爆豪がプリントアウトした資料に載っていたレストランでランチをしている引子はうっとりしながら窓からビーチやダイヤモンドヘッドを眺めていた。
    「本当、魚介だけでなくこんなステーキまでお昼からこんなご馳走食べちゃっていいのかな?」
    そう言いながらも昨晩から何も食べて居なかった現役ヒーローの緑谷は食べるのが止まらなかった。

     クラッシュアイスが沢山入った2段の銀製のボウルには魚介がふんだんに乗っており、その横に並べられた白いお皿には牛フィレ肉のステーキが色鮮やかなグリル野菜と共に鎮座している。
     白を基調としたインテリアやテーブルセッティングの店内で大きなガラス窓から差し込む南国の日差しを受ける、色んな意味で眩しく輝いている愛しの恋人を見て食べる豪華なランチに緑谷は箸、ではなくナイフとフォークが進んで仕方ないのだ。

    「2人にそんな喜んで貰えたのならお店ここにしてよかった。あっ、そう言えば実際行った店をA組のグループトークに上げるように言われてたな」
     満面の笑みで舌鼓を打つ緑谷親子を見て嬉しくなりながら轟が思い出した様に呟いた。

    「そっか、みんな忙しい中色々教えてくれたお礼も伝えなきゃだね」
    「あぁ後、何かいつものノリで誰のデートプランが選ばれるか選手権になってんだ」
    「あはは、懐かしいね部屋王ならぬデート王かな?」
    「あらあらなぁに?寮で選手権があったの?」
     2人の思い出話に興味を示した引子に緑谷が説明をし始めた。

     親子の語らいを見守りながら轟が今回のサプライズに協力してくれたクラスメイト達に言われていた通り、実際訪れたレストランから見える風景の写真と店名をA組のグループトークに上げると時差などないかの様に既読数が上がっていく。
     
    サプライズの成功と今回の協力の感謝のコメントを打ち込んでいると通話の着信音が掛かってきた。
    「悪りぃ、音消してなかった」
    「通話なんだ?遠慮せず電話出てきて」
    「爆轟からだから自分の手柄に対しての自慢だろうな」
    「えぇ!かっちゃんから?!て言うかこのお店かっちゃんセレクトなの?」
    「あらぁ〜勝己くんお洒落なお店知ってるのねえ」
    緑谷親子を席に残し、レストランのエントランスまで出ると未だに鳴る着信音を止めるべく轟は通話ボタンを押した。
     
    押したと同時に怒号が響いてきた。

    「この舐めプ野郎!いい加減にしろよ?!てめぇが協力しろっつうから俺が最高のシチュエーションの店を教えてやったって言うのに何すっとぼけて昼間に母親まで連れて行ってやがんだこのカス!!その店はダイヤモンドヘッドとワイキキビーチを臨む景観でレストラン上がウェディング施設なんだよ!早めのディナーでサンセット見ながら2人で行ってプロポーズすんのが鉄板だろうがこのタコ!!」
    「え?俺、誕生日のお祝いしたいとは言ったけど別「プロポーズするなんて一言も言ってねえぞ?」
     てっきり自分のプランを選ばれた事に対して上機嫌になっているだろうと思っていたら思わぬお叱りを受けて驚いた轟はついポロッと本音を溢してしまった。

    「はああぁ〜〜?!!てめぇなに寝言抜かしてんだ!飛行機ファーストクラスで移動リムジンでホテルハレクラで毎食時良いレストラン巡ってんのにプロポーズでも婚前旅行でもねえとかほざくんか!!」
    「あぁ、緑谷の誕生日に連日でオフ取れるなんて次いつあるか分かんねえからちょっとはっちゃけちまったとは思ってるが流石に俺でもあいつのご両親と居んのにプロポーズなんてできねえよ」
    「はあ?てめぇ母親だけでなく父親まで招待しとんのか!」
    「あぁ、お忙しいのに時間の都合つけてくれたらしくってな。お父さんには初めて会うから正直言って緊張してる。引子さんと違って今すぐ息子と別れろって言われても大丈夫な様に急遽近くのホテルに部屋取ったりとかしてたらお前から貰った資料ちゃんと全部読めてなかったみてえだ。悪りぃな」
    「てめぇ、それ本気で言っとんのか?」

    「別に緑谷やご両親を信じてねぇわけじゃねえぞ?ただ、やっぱあいつ一人っ子だし命の危険と隣り合わせのヒーロー業だろ?子供が欲しい、孫の顔を両親に見せたいって思ってもあいつ優しいから向こうから俺に言ってこれないだろうから俺がご両親と面識あったらご両親から俺に引導渡して易いかなって……
    「ゴメン、かっちゃん僕今すぐ轟くんと話し合わなきゃいけないから電話切るね」
    「おぉ、今すぐそこのすっとぼけ野郎にてめぇの考え叩き込んで来いや。誕生日にとんだプレゼントお見舞いされてクソナードとは言え流石に同情するわ」
    「あはは、本当にね」
     
     突然後ろから来て通話中の轟のスマホを奪い勝手に話し始めた緑谷は終始笑顔だが凄まじい怒気をはらんでいる。
    奪った時と同じ様に轟の了承を得ずにスマホを切ると呆然として動けない轟の腕を掴んで有無を言わさずリムジンが待つレストランの駐車場へ歩き出した。
    「ちょっと待て緑谷!まだレストランに引子さんが!それに支払いだって!!」
    「父さんが一つ早い便に乗れたみたいでもう空港に到着したんだ。今からこちらに来るから母さんは大丈夫だよ。僕らの分の食事代は僕がもう支払ったし」
    「そんな、この旅の費用は全部俺が……」
    「最初で最後の旅の思い出だから奮発してくれたの?両親の分も?なら飛行機代だって耳を揃えて全額返すよ!!」
    ようやくこちらに振り向いた緑谷は目に涙を浮かべて普段滅多に見ない位に激昂していた。
    「……っ!!すまねぇ…お前の誕生日なのに俺、お前にそんな顔させちまって……」

     自分の浅はかな行いの所為で緑谷を悲しませ、せっかく久しぶりに揃う家族3人の対面まで駄目にしてしまったと言う事実に轟は足元が崩れる様な感覚に襲われた。
     パッと見表情は大きく変わらないが明らかに顔面蒼白になった轟を見て緑谷は頭に昇ってい血がいくらか引いていく感じがした。

     強く握りしめいた轟の手を放すと、緑谷はその場で大きな深呼吸を繰り返した。
    「み、みどり……や?」
     叱られた幼子の様におそるおそる声を掛ける轟を見ると緑谷は一瞬であれ程怒りを覚えたのが嘘の様に仕方ないなぁと思えてしまう。

    「取り敢えず君が取ってくれたホテルに行こう。皆には悪いけど今日も明日も部屋から君を出すつもりは無いからね?皆から貰ったデートプランはまた今度ハワイに来た時に使わせて貰おうか」
    「え?ちょっと待ってくれ。それじゃ俺に都合良いばっかじゃねえか!」
    「ねえ、君なりに僕や僕の親のことを大切にしてくれようとするのはすごく嬉しいよ?でもね、僕の君に対する気持ちももう少し大切にしてくれないかな?」
    「お、おれ……」
    「君が僕に対して心配してくれる事、僕が君に対して考えた事ないと思ってた?」
    「だって、俺は緑谷以外の人間こんな好きになる事なんて絶対ねぇし。お前には沢山のモノ貰ったのに俺からはお前にはやれるもん何も無くって……寧ろお前やお前の家族が得られるかも知れない未来を奪ってるばっかで……」
    「君は?君には僕と過ごす時間には何にも価値が無いものなの?」
    「そんな事ねぇ!お前と過ごす時間は何ものにも代えられねぇ大事なもんだ!!」
    「僕だってそうだよ!何で自分だけなんて思うのさ!!」
    「……わ、わりぃ……本当に……俺……」
    「君にそんな風に思わせちゃうなんて僕の気持ちが足りなかったんだね。これから帰国までじっくり伝えるから覚悟してね?取り敢えずホテル迄のリムジンは僕の膝から下ろすつもりは無いからね!」
     そう言って笑うと緑谷は轟の背に手を添えながら駐車場のアスファルトに突然屈み込んだ。
    「緑谷?……うわっ!!」
     突然屈み込んだかと思えば緑谷は轟の膝裏に腕を差し込んで勢いよく立ち上がり、轟を横抱きにすると駐車場で待機しているリムジンに向かって歩き出した。
    「ちょっ!緑谷、降ろしてくれ。重てぇだろ?」
    「君より大きくて重い要救護者をどれだけ運んだと思ってるの?でも君に暴れられたら流石に重心が取れなくなっちゃうな。……大人しくいい子にしててね、焦凍?」

     突然のお姫様抱っこに慌てる轟を更に自分の方に抱き込めると緑谷は近くなった耳元で低く甘く響く様に名前を囁いた。

    「…ふあぁっ……」
     怒涛の展開と秘め事の時にしか目にも耳にもしない恋人の顔と甘い声に轟はキャパオーバーになり両手で顔を抑えながらもされるがまま自分が手配したリムジンに運ばれて行った。
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