Recent Search

    慣坂🍎

    😁

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 4

    慣坂🍎

    DONEミルグラムのミコトくんの小説です。二重人格説前提0909の話。カプ要素は薄すぎる。
    【mグラムのミコト】路線図の友人 景色が目まぐるしく過ぎるのを眺めていた。ガラス窓と景色の間ほどにある宙の一点を見つめ、つり革に指を引っかけたまま揺れに身を任せた。車両に押し込められた乗客達も自らと同じように揺れ、その度に窮屈さが押し寄せた。彼らはその殆どが手元のスマートフォンを見つめて暇を潰していたが、わざわざ身を捩ってまでそうする必要があるとも思えなかったので、僕は変わらず宙を見つめ続けた。
     不意に列車が大きく揺れた。拍子にバランスを崩し、隣に立っていた妙齢の女性に肘が当たった。すみません、とすかさず謝り顔を上げると、今度はつり革に額をぶつけた。痛みと共に眉を顰め、仕事さえ無ければと考える。仕事さえなければ、女性が目も合わせずに頭を下げるところだとか、額が滲むように痛むことだとか、そういった不快さを記憶の箱にし舞い込まずに済んだ。記憶の収納箱には限りがあるのだから、なるべく嫌な記憶は仕舞いたくなかった。その為に、好きな事だけを選びとって、棚に飾りつけるようにして記憶を反芻していた。いつでも見返せるようにしたかった。
    2969